国際

ワイド!スクランブル

2025年12月4日 18:00

北朝鮮 後継者選び急ぐ背景に…金正恩総書記の「健康不安説」 後継者として有力視、ジュエ氏の名前に込めた意味

北朝鮮 後継者選び急ぐ背景に…金正恩総書記の「健康不安説」 後継者として有力視、ジュエ氏の名前に込めた意味
広告
1

 北朝鮮メディアは、空軍の式典に金正恩総書記と娘のジュエ氏が出席したと報じました。ジュエ氏が公の場に姿を見せるのは約3カ月ぶりで、後継をめぐり地位が格上げされたとの見方が出ています。

後継者選びを急ぐ理由は?

 先月30日、朝鮮中央テレビは、この2日前に行われた北朝鮮の空軍創設80周年式典に金総書記と尊敬するお子様が視察したと報じました。式典では飛行機の故障で住宅地を避けて墜落し死亡した空軍の英雄に赤いバラを捧げた場面もあり、その後ろでジュエ氏が見守っていました。

 韓国の独立系メディア「サンド・タイムズ(1日)」によると、映像の中には初めてジュエ氏が一人で将校らの敬礼を受ける異例の場面があり、ジュエ氏の政治的地位が一層格上げされた象徴的な場面だと指摘しています。

 また、金総書記は後継者の時代に「砲術の天才」と宣伝されたとし、ジュエ氏の場合は空軍関連の業績を強調する可能性が高いとしています。

これまで、金総書記の健康不安説が報じられてきた
これまで、金総書記の健康不安説が報じられてきた

 仮に後継者選びを急いでいるとして、その理由は何なのでしょうか。

 現在、41歳とみられている金総書記は、健康不安説が報じられてきました。

 「ソウル新聞(7月26日)」によると、金総書記の身長は170センチと推定されています。「東亜日報(2024年7月30日)」は2024年の国家情報院の報告として、2012年に90キロだった体重が2019年に140キロに増え、2021年に120キロ、2023年140キロと増減を繰り返してきたといい、「超高度肥満状態で心臓疾患リスク群に該当する」と指摘しています。

 ただ「連合ニュース(11月4日)」によると、先月4日に国家情報院は「金正恩氏の健康に大きな異常がないと把握している」と報告しています。

 「朝日新聞(8月3日)」によると、金総書記が公式メディアに登場したのは父の金正日総書記が死去するわずか1年3カ月前でした。

 こういったこともあり、権力継承の時間が短かった自分と同じ苦労を後継者にはさせたくないという配慮かとみられています。

第1書記が務まるのは金総書記の妹・与正党副部長しかいない
第1書記が務まるのは金総書記の妹・与正党副部長しかいない

 また「ソウル新聞(2021年6月2日)」によると、北朝鮮は2021年1月に「第1書記」のポストを新設。このポストは「総書記の代理人」と規定されていて、後継を念頭に作ったのではないかという観測もあると報じています。

 「朝日新聞(8月3日)」は、日本政府で長く北朝鮮を担当した元高官の話として「ジュエ氏が公職に就く前に金正恩氏が倒れた場合、摂政役としてジュエ氏を補佐するためのポストだろう」と話し、第1書記が務まるのは金総書記の妹・与正党副部長しかいないと指摘していました。

ジュエ氏の名前に込められた意味
ジュエ氏の名前に込められた意味

 後継が有力とされているジュエ氏に関して、新たな情報も出てきています。

 韓国に亡命した北朝鮮の元駐クウェート代理大使のリュ・ヒョヌ氏が韓国で発刊した「金正恩の隠された秘密金庫」で、ジュエ氏の名前の漢字表記が「主愛」だと明かしています。

 リュ氏の妻の父は金氏一族の資金を管理する「朝鮮労働党39号室」の室長を務めていたといい、名前の意味について「元帥様が『万人の愛を独り占めするきれいな娘になれ』という意味を込めて主愛と名付けたとおっしゃった」といいます。

ロシアと緊密化…米朝関係への影響は?

橋は、来年完成予定
橋は、来年完成予定

 そして、北朝鮮はロシアとの関係をより緊密化させています。

 北朝鮮は中国、ロシアと国境を接していますが、ロシアとの国境には鉄道橋しかありませんでしたが、自動車用の橋の建設が進められています。「タス通信(11月27日)」によると、建設は4月に始まり、来年完成予定だといいます。

 「タス通信(4月30日)」によると、ロシアのミシュスチン首相は「様々な製品を安定供給でき、貿易と経済協力の拡大に貢献する」と述べました。

北朝鮮が保有する核弾頭の数
北朝鮮が保有する核弾頭の数

 さらに、軍事面でもロシアとの協力を着々と進めています。

 北朝鮮に対する国連の制裁を監視する国間制裁監視チームの報告書によると、ウクライナ侵攻に対する北朝鮮の支援の見返りとして、去年11月以降、ロシアは北朝鮮に短距離防空システムや電波妨害機器を含む電子戦システムなどを提供したとみられています。

 さらにロシアは弾道ミサイルのデータを提供することにより、北朝鮮の弾道ミサイルの誘導性能を向上させたと指摘しています。

 こうした中、北朝鮮が保有する核弾頭の数について、ストックホルム国際平和研究所の今年1月時点の推計では50発でした。しかし11月26日に韓国の国防研究院が発表した分析によると、北朝鮮は最大150発の核弾頭を保有しているといいます。すでにインドやパキスタンに匹敵する規模となり、2040年には約430発に増加するとの見通しも示されました。

来年3月の米韓合同軍事演習後に、米朝首脳会談の可能性
来年3月の米韓合同軍事演習後に、米朝首脳会談の可能性

 こうした状況は、今後の米朝関係にも影響する可能性があります。

 アメリカのトランプ大統領は、10月の韓国訪問の際に米朝首脳会談に意欲を示しました。実現はしませんでしたが、トランプ大統領は「金正恩総書記はよく知っている。関係はとても良いが、今回はタイミングが合わなかった」と述べていて、来年3月の米韓合同軍事演習後に開かれる可能性も指摘されています。

 一方、金総書記は、9月の最高人民会議で「トランプ大統領に良い思い出がある」としたうえで「アメリカが非核化の妄想を捨て真の平和共存を望むなら、対話を拒む理由はない」と話すなど、あくまで「核保有国」としての立場を強調しています。

 北朝鮮は、2021年の党大会で策定した「経済・国防の5カ年計画」が今年で終了するため、「亜州日報(1日)」によると、来年1月にも開かれる予定の党大会で、今後の対外戦略を提示するとみられていて、トランプ政権に向けたメッセージを出す可能性があるということです。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年12月4日放送分より)

広告