台湾周辺で近年、海底ケーブルが切断される事件が相次いでいる。インターネットなど私たちの生活に欠かせない通信インフラの危機に、国会でも議論が行われている。
台湾が国際社会へ「民主主義諸国が一丸となって」と呼びかけ
海底ケーブルとは、インターネットなどの通信データをやりとりするため海底に設置された光ファイバーの束のことだ。世界中の海底に約500本張り巡らされている。国際通信の99%以上がこうした海底ケーブルを使用している。
アメリカとアジア各国の中間に位置する日本は、海底ケーブルのハブ(中継地点)となっていて世界的に重要な場所だ。
ただ、その海底ケーブルの管理には課題がある。
海底ケーブルの業界団体である国際ケーブル保護委員会によると、去年の海底ケーブルの修理件数は204件だった。その原因は、底引き網の使用など漁業活動によるものが4割と最も多い。船舶の錨(いかり)の使用や、海賊など第三者による切断など、人為的な活動によるものでくくると6割ほどを占めている。
また総務省によると、東シナ海・南シナ海地域にケーブルが多く、損壊事案が集中している。世界的にみても修理の発生頻度が著しく高いという。
こうした中、海底ケーブルが集中している台湾近海で、船によってケーブルが切断される事件が相次いでいる。
米国インド太平洋軍の季刊誌によると、台湾には14本の国際海底ケーブルがある。今年1月、台湾南部の海域で香港の企業が運行する船舶が、追跡システムを停止したうえで錨をケーブルに引っ掛け、台湾とアジア、アメリカを結ぶ重要な回線を切断する事件が発生した。
2月には、中国人乗組員を乗せた船が台湾と離島を結ぶケーブルを切断する事件も発生した。船長は6月、地方裁判所にあたる台南地方法院で懲役3年の判決を言い渡された。また、この船は中国の「影の船団」の一部とみなされており、所有者を隠すため頻繁に船名や船籍を変更していたという。
こうした事件を受けて、台湾は海底ケーブル損壊の罰則強化に乗り出している。
台湾メディアによると、台湾の内閣に相当する行政院は9月、海底ケーブル関連法の改正案を決定した。この改正案で、故意に海底ケーブルを損壊した場合、1年以上7年以下の懲役に加え、約4900万円以下の罰金を併科することを可能にした。
さらに、犯罪に使用した船舶や機械設備は、所有者を問わずに没収処分する規定を追加した。船舶の位置や動きを知らせる船舶識別装置を正常に作動させ、正確な情報の公開を義務付ける内容なども加えられた。
そして、国際社会への呼びかけも行っている。
台湾の行政院が開設したメディアによると、10月28日に開催された「台湾欧州海底ケーブル安全協力フォーラム」で、台湾の外交トップの林佳竜部長は「国際海底ケーブルのリスクマネジメント・イニシアチブ」を提起し、「民主主義諸国が一丸となって重要インフラの安全を守るべき」と呼び掛けたという。
中国、海底ケーブル市場に参入の一方で
海底ケーブルを守るため各国がAIを活用した水中ドローンの開発を進めているが、中国はこのようなものを開発した。
香港のサウスチャイナモーニングポストによると、今年3月、中国船舶科学研究センターなどの研究機関が小型の海底ケーブル切断装置を開発したと公表した。水深最大4000メートルでも作業可能で、中国の最新鋭の有人・無人潜水艦に搭載できるように設計されているという。ダイヤモンドでコーティングされた毎分1600回転する直径15センチの刃が鋼鉄などで覆われたケーブルを切断することができる。
開発者らは装置の目的について、「海洋資源の開発」に役立つとしているが、アメリカの戦略国際問題研究所は、中国は海底ケーブル切断を目的とする新たな装置を公開したことで、ケーブルの破壊などを戦略的手段とみなしていると指摘している。
こうした中、日本にも動きがある。先月に行われた高市政権初の経済安全保障推進会議では、海底ケーブルの設置工事や保守にも財政援助を可能にするよう法改正の検討を指示した。
また、中国は海底ケーブル市場に参入し、受注競争が激化している。
総務省が発表した、2011年から去年まで、各国の企業がどのぐらいの距離の海底ケーブルを製造したのかを示した割合をみると、フランス、アメリカ、日本の企業が9割以上を占める。その中で新興勢力として参入してきたのが中国企業だ。これにより海底ケーブルの受注競争が激化しているという。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年12月11日放送分より)








