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ABEMA TIMES

2025年12月13日 07:00

“進撃のNetflix”はどこまで拡大するのか ワーナー買収&スポーツ中継 業界の重鎮が詳細に分析「利益を重要視していない」狙いはハリウッド級の作品力と世界規模の契約者数

“進撃のNetflix”はどこまで拡大するのか ワーナー買収&スポーツ中継 業界の重鎮が詳細に分析「利益を重要視していない」狙いはハリウッド級の作品力と世界規模の契約者数
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 サブスク配信の大手Netflix(ネットフリックス)が、ドラマ配信で知られるワーナーブラザース・ディスカバリー(WBD)のスタジオ事業や動画配信サービスなどを約11兆円で買収すると発表し、エンタメ業界を揺るがしている。ワーナーに対しては、メディア大手のパラマウント・スカイダンスも敵対的買収を仕掛け、トランプ大統領が介入を示唆した。

【映像】強烈な右肩上がり Netflixの業績

 Netflixは、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日本での独占放送権取得など、スポーツ中継にも力を入れている。今後どこまで進撃を続けるのか。『ABEMA Prime』ではアメリカ在住歴33年で業界の重鎮である、金沢工業大学 虎ノ門大学院教授・北谷賢司氏に、Netflixの現在と未来を聞いた。

■超大手映画会社の買収に乗り出したNetflixの狙い

Netflix

 Netflixは創業当初、レンタルビデオ配送サービスだった。そこからストリーミングサービスに業態転換し、業界の先駆者となった。日本には2015年に参入し、2025年現在で190カ国以上に展開、有料会員数は世界3億人以上にのぼる。主な事業内容は、動画配信やオリジナル作品制作、スポーツ中継だ。

 DAZN Japanのチェアマン(会長)、ワーナーミュージック・ジャパンの会長を務めた経験を持つ北谷氏によると、「Netflixにはハリウッドのメジャースタジオ級の自社制作作品が少なく、それが弱みだった。“ブロックバスター”と呼ばれる超大作を自社で作る機能もない」という。また、WBO傘下にあるHBOも「捨てがたい存在」で、「日本でいうWOWOWのような有料放送の中で、最も歴史が長い。優秀な作品も多く、エミー賞も多く取っている。グローバルな存在でもある」と解説する。

 これらを手に入れることで、「ストリーミング中心だったNetflixが、HBOのコンテンツや客層をキャッチできる」「世界的に配給されるハリウッド最上級映画も、自社コンテンツとして利用できる」といったメリットが得られるそうだ。

 現状の映画業界については、「ハリウッドメジャーの作品は、クランクインまで3〜5年かかる。プロデューサーが企画をスタジオに持ち込み、5000万〜2億円ほどの“開発費”をもらう。そのお金で優秀な監督やキャストと交渉し、プロに脚本を書かせて、ようやくクランクインになるため、実際に100億円規模の作品が制作されるまでは時間がかかる」と説明する。

 一方でNetflixなどの手法は「いろいろなプロデューサーに『巨額の投資はしないかもしれないが、気に入ったら即、全権利を買うから、とにかく作品を持ってきて』と声をかける」のだそうだ。「若手や中堅は金欠のため、将来的にメジャーで大ヒットする可能性があっても、背に腹は代えられず、Netflixからの前払いで制作する。事後の利益は分配されないかもしれないが、とりあえず作れて名前を売れる。自分の作品が売れないと大作は作れない」。

 プロデューサーや監督としては、「従来は低予算の映画を作り、独立映画の映画祭で賞を獲得し、段階的に大きな存在になった。しかしNetflixで当たると、一気に業界から注目されて、ハリウッドメジャーのスタジオから声がかかるかもしれない」といったメリットがある。

 資金調達の面でも、「GAFAが圧倒的に資金力を持っている。映画の世界では、ファンドが作品に投資するケースも多く、出資する以上は衰退していく企業ではなく、成長する企業にお金をかけたい。その点でもNetflixは有利だ」とした。

■スポーツにも進出 NetflixのライバルはYouTube

アメリカの動画市場

 Netflixはスポーツの世界にも手を広げつつある。その理由として「これまでの配信では、数秒の遅延が起き、即時性が重要なスポーツ中継も遅れてしまっていた。日本では合法化されていないが、欧米ではスポーツベッティングが大きなビジネスだ。次のプレーが遅れると商売にならないため、ストリーミングで見るのはリスクがあった」と語る。

 しかしながら、「ここに来て、それが解消されてきた。日本国内の通信状態も改善され、スポーツに着手できるタイミングが来たため、Netflixも参入した。ディズニーのHulu(フールー)やAmazonはスポーツに先手を打っている。彼らにはスポーツが欠かせない」とした。

 たとえ買収できたとして、Netflixとしては成功するのか。「そもそもNetflixは利益をさほど重要視していない。世界市場を先に取った方が、圧倒的に勝つとわかっているため、契約者数さえ増えていれば企業価値は下がらない。赤字でも企業価値があると、ウォール街は判断している」。

 新たな試みとして、「“バーティカル”と呼ばれる、縦型のショート動画を来年から始めるはずだ」といい、「Netflixもトレンドを追っていて、できるだけ若い世代かつグローバルに契約者を取りに行くと発表すれば、お金がついてくる」とする。「Netflixの一番の強敵はYouTubeだ。YouTubeには有料の広告スキップ機能がある。そのためNetflixは、差別化を図るためにM&Aが重要だ」。

 加えて、WBCの国内独占放映について、「今年のマスターズで、たまたまMLBのコミッショナーと、Netflixの共同CEOの1人が同席して、『WBCが日本で人気だ』と話した。ある広告代理店がオファーしていたが、『Netflixなら3倍でも4倍でも払うから』とコミッショナーに頼んだ」と裏話を明かす。

 「これを即できるのが、アメリカの企業文化だ。企業がCEOみずから株を持ち、発言権がある。メディア・モーグル(メディア王)が即決できるアメリカメディアと、サラリーマン社長が経営する日本メディアの違いがここに出ている」 (『ABEMA Prime』より)

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