オーストラリアが、世界で初めて16歳未満のSNSの利用を禁止する法律を施行してから、1週間が経ちました。
若者の生活に変化が起きている一方で、“抜け道”を利用して、SNSを再開している人もいます。
そして、日本でのSNSの規制についても、見ていきます。
■「子どもの人生変える」SNS禁止法 どう変化?“抜け道”も
オーストラリアの“SNS禁止法”は、12月10日に施行されました。
利用が禁止されたのは16歳未満で、対象は、『フェイスブック』『インスタグラム』『ユーチューブ』など10のサービスです。
事業者側は、16歳未満の既存のアカウントを凍結するなどの措置が必要で、違反すれば罰金約50億円です。
利用者側の、親や子どもには罰則はありません。
「この改革が、オーストラリアの子どもたちの人生を変える」と発言しました。
オーストラリア国民の声です。
「国外から危害が及ぶこともあるから、規制したほうがいい」
「私のような子どもたちが、より健康的に、より安全に、より優しく現実世界とつながって成長できる」
「SNSでつながっている人の電話番号をほとんど知らない。これからどう連絡をとればいいのか」
「SNSを“命綱”として必要としている人もいる」
SNS禁止法の施行から1週間で、どんなことが起きたのでしょうか。
14歳、ルーシーさんの場合です。
禁止法施行直後、日常的に使用していたSNSで、一時、友人と音信不通になりました。
しかし、24時間以内に連絡が再開できました。
なぜ、再開できたのでしょうか。
友人たちの多くは、年齢をごまかした、新しいアカウント作成していました。
中には、親や年上の友人の顔を借りている人もいた、ということです。
さらに、AIが生成した人物写真や動画を使い、サイトにアクセスし、禁止措置を回避した人もいました。
こんな異変も起きています。
“禁止法”の対象外のSNSアプリが人気になり、11月末から2週間で、オーストラリア人ユーザーが10万人増えたアプリもあります。
オーストラリア放送協会(ABC・12月2日)によると、オーストラリア政府により、子どもが代替先とみなしうるSNSに対し警告が発令されました。これは、現在対象外のSNSが、追加で、16歳未満の利用禁止措置の対象となる可能性が高いことを示しています。
「この法律は、子どもがSNSを利用しにくくする『障壁』を作るイメージ。そのため、年齢確認の方法など、完璧ではなく、抜け道もある。待っていても、抜け道をなくすことはほぼ不可能なので、それよりも、一刻も早く事態に対応しようとしたのではないか」ということです。
■施工後1週間「宿題はかどる」思わぬ変化あった若者も
日常生活に変化があった若者もいます。
15歳のブルックさんの場合です。
これまで、起床後は寝ぼけながらSNSを開き、頭がはっきりするまでスクロールしていましたが、SNSが禁止されて以降、音楽を聞いたり、片づけをして時間を埋める生活になりました。
さらに、放課後は、早めに宿題を済ませられるようになりました。
「SNSをスクロールせずに朝食を食べたら、キッチンの音がより大きくなったように感じた。SNSでどれだけの騒音をかき消していたのか、今まで気付かなかった」と話しています。
「子どもたちは、SNSを見ているとき、周りの音も聞こえないくらいに、のめりこみ集中している。そこから一時でも解放され、周りが見えるようになるというのは、“SNS禁止法”のメリットの一つと言える」
■日本にも規制必要?スマホ条例の街に見る効果とリスク
SNSの規制、日本では、どうしたら良いのでしょうか。
慶応義塾大学の水谷准教授によると、現状、日本では年齢による一律規制はありません。
ただ、自治体独自の条例があります。
愛知県・豊明市では、10月1日、スマホ条例が施行され、市民のスマホの利用時間は“1日2時間以内”に、18歳未満の場合、中学生以上は午後10時まで、小学生以下は午後9時までに規制されました。
この条例の目的は、睡眠や家庭内のコミュニケーションの時間確保で、罰則はありません。
全国初の条例です。
条例施行後のアンケートです。
スマホの使用時間について、
●変化があったと答えたのは、7. 1%、
●変化がなかったが、65. 4%、
睡眠時間について、
●変化があったと答えたのは2. 7%、
●変化がなかったが、84. 6%でした。
さらに、『家族との会話が増えたり、生活を見直すきっかけになったか?』というアンケートでは、「はい」と答えたのは39%、「いいえ」は、61%でした。
「10年前はここまでスマホに依存していなかった。これから先、何か弊害が出てくると思うと賛成」
施行から約2カ月半が過ぎ、市長と中学生の意見交換が行われました。
「(規制について)7割ぐらいが考えていないと思う。実現不可能だし、条例違反だからといって何かされるわけでもないので、特に意識もしない人もいると思う」という意見が出ました。
「考え直すきっかにはなったが、行動変容までいっていない」と話しています。
子どものスマホトラブルについて、これまでのリスクと対策です。
水谷准教授によると、主なリスクは2つです。
●誹謗中傷や、わいせつな画像など有害な情報にさらされるコンテンツリスク、
●他者との接触を通じ、性被害や闇バイト、犯罪事件等にあうコンタクトリスクです。
対策として、青少年インターネット利用環境整備法では、携帯電話会社に、未成年の利用を制限するフィルタリングサービスを義務付けています。
出会い系サイト規制法では、事業者に利用者の成人確認を義務付けています。
そして、今後のSNSの新しいリスクについてです。
SNSの事業者は、広告収益のため、興味を引く情報や動画を次から次へと優先的に表示するため、子どもが時間を忘れ熱中し、サービスに『依存』してしまうリスクがあり、新たな問題となっています。
メンタルヘルスが悪化する懸念が指摘されています。
■世界で広がるSNS規制 各国の選択 首相辞任も!?
海外の子どものSNSを規制する動きです。
EUでは、11月、欧州議会で、SNSを利用できる最低年齢を16歳とする決議案を採択しました。
イギリスは、『オンライン安全法』で、13歳未満にはアカウントを持たせないことを業者に義務付けています。
マレーシアは、2026年から16歳未満のSNS登録を禁止。
中国は、SNSを含めスマホ利用は、18歳未満は1日最長2時間までに制限。
インドネシアはは、SNSの利用に最低年齢の設定を検討。
ニュージーランドは、16歳未満のSNS利用の禁止を検討しています。
アメリカです。
子どものSNS利用を規制する関連法が、全米50州のうち少なくとも16州で可決されています。
アメリカ疾病対策センターの調査では、高校生の77%が頻繁にSNSを利用し、依存度が高いほどいじめや抑うつ、自殺願望が増える傾向があるということです。
一方で、SNS事業者からは、
「SNSの利用を制限することは、言論や表現の自由を侵害する」という差し止め訴訟が相次いでいて、アメリカで、少なくとも6州で施行が差し止められました。
また、ネパールでは、9月4日に、政府が、ニセ情報対策が不十分だとして、『ユーチューブ』や『インスタグラム』など、26のSNSへのアクセスを遮断しました。
その後、9月8日に、10代〜20代の『Z世代』が抗議デモを行い、19人が死亡、400人以上がけがをしました。
翌9日、政府はSNS利用禁止の措置を撤回して、首相が辞任しました。
「重要なのは、子どもをSNSから追い出して無菌室に閉じ込めてしまうのではなく、うまく子どもたちがSNSを活用できるよう、安全に配慮した仕組みが必要」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年12月18日放送分より)













