日本では、介護や工事現場などで深刻な人手不足が続く中、アメリカでは、肉体労働者の給与が高騰する『ブルーカラービリオネア』と呼ばれる現象が起きています。
経理から配管工に転職して給与が3倍になったケースもあります。
日本でも将来、同じような現象が起きるのでしょうか。
■新たなアメリカンドリーム?“ブルーカラービリオネア現象”
アメリカでは、今、『ブルーカラービリオネア』という現象が起きています。
ブルーカラーとは、スキルを必要とする肉体労働です。
例えば、建設、エネルギー、運輸、製造などの業種です。
ブルーカラービリオネアとは、人手不足による高い需要で高収入を得るブルーカラー労働者のことで、この言葉がアメリカメディアで取り上げられて、脚光を浴びています。
高収入のブルーカラー(肉体労働)の例です。
エレベーターやエスカレーターの技術者の年収の中央値は、約1660万円です。
送電線の設置や修理を担う人の年収の中央値は、約1440万円です。
全職種の平均と比べて、約2倍です。
■米国「肉体労働の時代」経理から配管工へ 給与3倍に
実際にブルーカラー(肉体労働)である、配管工に転身した、カリフォルニア在住のチョン・マイさんです。
マイさんは、名門・カリフォルニア大学バークレー校で学び、会社の経理担当として働いていましたが、当時、上司とうまくいっていませんでした。
こうした状況で、友人から、「あなた数学が得意よね」と、知識を生かせる仕事として配管工を紹介されました。
試しに、トレーニングセンターに行ってみると、何も知らない新人でも、経理担当より稼げることに驚きました。
マイさんの給与です。
経理担当だったときは時給約4千円でしたが、配管工になってからは時給約1万2千円になりました。
月収にすると、約190万円ほどで、経理担当時代の約3倍になりました。
「人生でほとんどネジも使ったことがない」と、うまくできるか懸念していたそうです。
働き始めると、肉体労働が大変で、初めの3カ月は毎日、足にマメができたといいます。
現在は、新しい建物が建てられるときのパイプの設置を担当しています。
「配管工の仕事が大好きで、すごく楽しい」と話しています。
経理時代に培った『交渉力』や『数字の知識』が生きていて、自分の頭を使い、手で何かをつくることに大きなやりがいを感じているということです。
そして、プライベート面では、配管工の勤務は午前6時〜午後2時半までで、午後の残りの時間は、妻との散歩や友人との食事、めいと遊ぶ時間にあてているといいます。
経理担当のときは、午前9時〜午後7時あたりまで働いていました。
「肉体労働の時代が戻ってきた。みんな『AIは人のために考えてくれるけど、人の代わりに働いてくれるわけではない』と考えている。この仕事・キャリアを手にしてとても幸運」と話しています。
■“肉体労働”伸びる給与“頭脳労働”を逆転 背景にAI?
肉体労働への回帰が加速している背景に、AIです。
肉体労働と頭脳労働の給与の『伸び率』では、ブルーカラー(肉体労働)が、ホワイトカラー(頭脳労働)を逆転しています。
この逆転の理由です。
データ分析、情報処理などは、人からAIに置き換わり可能なので、ホワイトカラー(頭脳労働)の人たちは、人員が余ります。
一方、建設・修理など物理作業は、AIで代わることが難しいので、ブルーカラー(肉体労働)では人手不足が続き、需給の関係で給与はアップします。
アメリカ企業の人員の削減状況です。
大手コンサルタントのマッキンゼーは、AIの急速な進展を背景に数千人を削減することが、12月に報道されました。
アマゾンは、AI導入を見据え、1万4000人の削減を、10月に発表しました。
マイクロソフトは、AI投資拡大に伴う再編で全従業員の4%、約9000人の削減を、7月に明らかにしています。
アメリカの10月の人員削減は、AI要因が2割を占めるということです。
「AIは、アメリカのホワイトカラー労働者の半分を置き換えることになるだろう」としています。
アメリカでは、採用にも影響が出ています。
「努力してコンピューターサイエンスの学位を取得すれば、就職初年度から6桁(1500万円以上)の年収を得られるという話だった」ということで、小学生のときウェブサイトをプログラミング、大学ではコンピューターサイエンスを専攻しました。
この女性は、学位取得後、1年間にわたりITやAIなどのテック関連の就職先を探しましたが、内定は得られず、面接に呼ばれたのはメキシコ料理のファストフードチェーンのみでした。
22〜27歳の大卒者の失業率は、
●コンピューターサイエンスを専攻している人で6. 1%、
●コンピューター工学を専攻している人で7. 5%となり、
生物学や美術史専攻の学生の2倍以上です。
(※生物学・美術史専攻の失業率はともに3.0%)
■生活に“必須の職業”日本では低賃金&人手不足の現状
日本でもアメリカのような、ブルーカラー(肉体労働者)の給与が高騰する現象が起きるのでしょうか。
年間所得の差です。
厚労省によると、
●医療・介護・運輸・建設業などの社会インフラを支える職種の平均年間所得は、約436万円、
●その他の職種は、約541万円で、
約100万円以上の差があります。
年齢別に見た年間所得では、社会インフラを支える職種は、そのほかの職種に比べ、年齢の上昇に伴う賃金の上昇が小さく、50代後半では200万円の差があります。
介護の現場です。
東京・三鷹市のデイサービスでは、利用者10人に対して、職員は3〜4人で対応しています。
泊まりの希望者がいる時は、夜中も職員が在中していますが、職員が足りない場合には、泊まりを断ることもあるということです。
「介護は、“ひと対ひと”の要素が大きい仕事で、機械化だけではどうにもならないことも多い。高齢化で需要が高まる中、人手不足で支援ができないことが深刻になっている」と話しています。
電気設備にかかわる現場です。
首都圏で電気設備の保守・点検などを行っている事業所では、マンションやビル、工場などの高圧電気設備の保守・点検を行う技術者が不足しています。
現状では、基本的に毎月点検を行い、1人あたり50〜60件の設備を担当していますが、近年、ビルやマンションの建設ラッシュで需要が増え、人手が足りない場合は、資格を持った管理職が現場に向かうこともあるということです。
各業界の人手不足の現状です。
求職者に対して求人がどのぐらいあるかを表す、有効求人倍率です。
1人の求職者に対して、何件の求人があるかを示しています。
全職業は、1. 18倍なのに対し、警察官・消防士などの保安職は、6. 66倍、建設・採掘職は5. 18倍、介護サービス職は3. 93倍です。
介護サービス職は、1人の求職者に対し、3. 93件の求人があるということです。
経産省の試算では、このまま人手不足が進行した場合、2040年には、生活に不可欠なサービスの労働力不足により、実質GDPが見通し額の750兆円から、最大約76兆円押し下げられる可能性があるとしています。
日本でも、アメリカと同じことが起きるのでしょうか?
「数年以内には、日本でもアメリカのような状況が起きてくるだろう。ホワイトカラー(頭脳労働)の賃金は伸び悩む。ただし、解雇については、正社員の解雇規制が厳しいので、アメリカのようにAIが浸透して仕事がなくなっても解雇の理由にできない。代わりに社内で人事の配置転換なども起こると想定される」
「パソコンの前で座って資料や文書を作っている人。AIはもうIQが140を超えてきていて、普通の人間よりも頭がいい。逆に人と会って交渉する営業などの仕事は、AIではできないので、代替されない」ということです。
■“必須の職業”人手不足解消へ 対策に着手
政府の対策です。
6月に閣議決定された基本方針では、生活に必要不可欠なサービスを支える人材の処遇改善の必要性が明記されました。
AIなどの技術を使いこなせる現場労働者の育成を進め、高い生産性を実現し、高賃金を得られるようにするといいます。
また、政府は、2026年度に、介護職員・障害福祉事業所の職員の給与を月最大1万9000円引き上げる方針です。
賃金が、全産業平均より低水準なため、格差を縮めて人手不足の解消につなげる考えだということです。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年12月24日放送分より)














