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報道ステーション

2026年1月6日 02:23

【報ステ解説】急襲作戦の舞台裏“国際法違反”になる?米国がベネズエラ大統領拘束

【報ステ解説】急襲作戦の舞台裏“国際法違反”になる?米国がベネズエラ大統領拘束
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アメリカのトランプ大統領は、ベネズエラを攻撃し、マドゥロ大統領を拘束しました。一国の元首でありながら収容されたのは、麻薬やテロ関連の容疑者用の連邦拘置所でした。マドゥロ大統領は、連邦裁判所に出廷する見通しです。

アメリカは、トルコへの亡命を持ち掛けたそうですが、マドゥロ大統領は拒否しました。

アメリカ トランプ大統領
「(Q.最後にマドゥロ氏と会話は)詳細には触れないが、彼には『投降するしかない』と伝えた。彼はその気だったと思うが、いまは、後悔しているだろう」

今後のベネスエラは、アメリカが運営するそうです。

アメリカ ルビオ国務長官
アメリカ ルビオ国務長官
「私たちが主導していくのは、この先、進むべき方向性です。ベネズエラが国民やアメリカの国益に沿う体制に変わるまで、この状態が続きます」
断固たる決意

『断固たる決意』と名付けられていた今回の作戦。トランプ大統領が命令を下したのは、東部時間2日午後10時46分のことでした。

防空システムなどを破壊

150機の爆撃機や戦闘機が、ベネスエラの防空システムなどを破壊。

攻撃を受けた施設

攻撃は7カ所。民間施設も含まれていて、一部で停電が起き、インターネットのダウンもあったそうです。

デルタフォース

陸軍の特殊部隊、デルタフォースが、大統領のいる軍事基地を襲撃しました。マドゥロ大統領と、その妻を拘束するのに要した時間は、わずか5分だったそうです。

ニューヨーク・タイムズ(3日付)
ニューヨーク・タイムズ(3日付)
「CIAの秘密工作班が、ベネズエラに潜入したのは、2025年8月だった。マドゥロ氏がどこを移動し、何を食べ、どんなペットを飼っているかまで知っていたデルタフォースの隊員たちは、ケンタッキー州に建設したマドゥロ邸の実物大模型で訓練を重ねた」
マドゥロ大統領
移送

拘束されたマドゥロ大統領は、まずはカリブ海上で待機していた揚陸艦に移送され、グアンタナモ基地に。その後、専用機で空軍基地へ。そして、車移動も混ぜながら、ニューヨークの拘置所に移送されました。ここまで約13時間の出来事でした。

アメリカ トランプ大統領
「こんな攻撃は、第2次世界大戦以来、初めてだ。史上最も強大で圧倒的かつ、効果的な軍事力を示すことになった」

アメリカは、去年11月、マドゥロ政権を「外国テロ組織」に指定していました。今回、罪に問われているのは「何十年にもわたって、麻薬取引に関わってきた」というものです。

しかし、会見で麻薬の話は、ほとんど触れていません。

アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「我々は、取り戻すべき石油を取り戻すだけ。地下から湧く石油のもうけで、我々の負担は、全額、返ってくる。石油を買いたい国があれば、売るつもりだ。ベネズエラは、インフラがガタガタで、生産量が低い。我々なら大量に他国に売れる」

「麻薬を建前に石油を捕りに行った」といった批判が出ています。
また、旧宗主国のスペイン、南米諸国などは連名で声明を出しました。

中南米5カ国とスペインの共同声明
中南米5カ国とスペインの共同声明
「天然資源や戦略的資源の外部からの管理・収奪の試みについては、国際法に反し、地域の政治・経済・社会的安定を脅かすものであり、我々は、これに懸念を表明する」

つながりの強かった中国。

中国外務省 林剣副報道局長
中国外務省 林剣副報道局長
「中国は、アメリカ側が主権国家に対して公然と武力を行使し、一国の大統領を強制的に拘束したことに、深い衝撃と強い非難を表明する」

西側の反応も手放しに称賛ではありません。

フランス ブレジョン報道官
フランス ブレジョン報道官
「フランスは、国際法と自由を擁護し、今回の手段を支持も承認もしません。独裁者であることを踏まえ、マクロン大統領は、マドゥロ氏が去ったことは、ベネズエラ国民に“朗報”としています」
ロドリゲス氏

ベネズエラの暫定大統領に指名されたロドリゲス氏は「共通の発展に向けて、共に取り組むようアメリカ政府に呼び掛ける」としています。ただ、ベネスエラ国内には、根強いマドゥロ支持者も多く、汚職もはびこっているため、すぐに国が一枚岩になる可能性は高くありません。

アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「いまのところ、ベネズエラ軍はおとなしい。第2波攻撃の準備も整えていたが、必要ないだろう。従わないなら第2波攻撃をかける。(Q.アメリカ軍が現地で平和維持活動を)それは、新政権の出方次第だ」
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◆トランプ大統領の行動をどのように理解すればいいのでしょうか。アメリカ政治・安全保障が専門の拓殖大学の佐藤丙午教授に聞きます。

佐藤丙午教授

(Q.トランプ大統領は、この作戦を自画自賛していますが、トランプ氏にとっては大成功ということなのでしょうか)

佐藤丙午教授
「作戦自体は成功だと思いますし、トランプ大統領が自画自賛するのもすごく理解できます。この特殊作戦、ここまで上手くいった例は少ないのではないかと思います。また、今回、特徴的なのは、アメリカと敵対するロシア製ミサイルや中国製レーダーなど、防空システムをピンポイントで破壊して、そのうえで街をブラックアウトさせて、特殊部隊を突入させる。合計で2時間の作戦だということですので、これは、アメリカにとって、非常に効果的・効率的だったと思います。また、作戦の背後には、CIAの協力も含めた法執行機関との密接な連携があったと思います。ルビオ国務長官が、細かく実は説明されていますが、マドゥロ氏の護衛や周囲の監視体制は、アメリカの敵対国であるキューバ人が担っていたと。また、邸宅内部の情報も、きちっと把握したうえで攻撃していますので、これは内通者がいて、それとの連携が非常に上手くいったと言えるのではないかと思います」

(Q.なぜ、トランプ氏は、国際秩序を揺るがすような行動に出たと思いますか)

佐藤丙午教授
佐藤丙午教授
「この攻撃は、国際法的には、正当化できない攻撃だと思いますけれども、マドゥロ氏は、アメリカの国内で、麻薬やテロ行動で起訴されていますので、アメリカ側の論理としては『司法手続きの一環で、マドゥロ氏の身柄を拘束した。その一環で、軍の支援を受けた』と言うのではないかと思います。また、トランプ政権自体、外交交渉をひんぱんに繰り返していましたし、最後の手段として、これを行ったと判断してもいいかなと思います。また、国際法に違反というのは、確かにその通りで、諸外国の反応もすごく理解できるのですけれども、これを違反と、誰が、どういうふうに認定して、現状、どう回復するのかというのは非常に難しい問題ですので、非常にありふれた言葉ですけれども、これが国際政治の現実だということなのかもしれません」

(Q.ベネズエラの国内情勢を不安視する声も上がっています。今後、トランプ氏は、ベネズエラを親米国として引き寄せながら、上手な国づくりができると思いますか)

佐藤丙午教授
佐藤丙午教授
「国づくりができるかどうかは、今後のアメリカの対応に関わってくると思いますけれども、攻撃する時点で“拘束後”の統治のマスタープランは、おそらくなかったと思いますし、800万人が亡命したとも言われていますが、しかし、支持者が残っているわけですから、そんな簡単に統治が上手くいくとは思えないかなと思います」

(Q.統治するのは、現地の指導者を想定しているということでしょうか)

佐藤丙午教授
「アメリカの報道を見ていると、ベネズエラの統治については、かつての第二次世界大戦後の日本の統治をモデルにすべきだと。現地に任せて、アメリカが後ろから指導するというような声も出ていますので。日本としては、そういうところで引用されるのは、あまり心地良い話ではないですけれども、しかしながら、現実的に、統治することを優先した体制を取っていくのではないかと思います」

(Q.トランプ氏の念頭にあるのは、暫定大統領となったロドリゲス氏なのでしょうか)

佐藤丙午教授
「これは、ルビオ国務長官も言及しているのですけれども、マチャド氏をいまからベネズエラ国内に戻して、統治を代行させるというのは、現実的ではないので、そうすると、直近の混乱を抑えるためには、いまの体制が最善だと判断しているのだと思います」
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