国際

報道ステーション

2026年1月6日 02:36

「モンロー主義を超越」ベネズエラ大統領を拘束…トランプ政権の“西半球戦略”とは

「モンロー主義を超越」ベネズエラ大統領を拘束…トランプ政権の“西半球戦略”とは
広告
2

緻密に練られたアメリカによるベネゼエラの大統領拘束。そこには西半球での優位を確保したいという、トランプ政権の野心が見え隠れしています。

モンロー主義と中南米介入の歴史

トランプ大統領は触手を伸ばそうとしている場所が他にもあることを隠しません。

アメリカ トランプ大統領
「コロンビアもコカインをアメリカに売るような病んだ人間が“運営”する国だ。長くは続かないだろう」
(Q.コロンビアでも作戦を?)
「それも悪くない。やつは大勢を殺しているし。グリーンランドについては20日後に話そう。ただ、安全保障にはグリーンランドが必要だと言っておく。キューバは全資金をベネズエラの石油から得ていたが、もう手に入らない。文字通り、崩壊寸前だ」
西半球

グリーンランドに、キューバに、コロンビア。共通するのは南北アメリカ大陸を中心とする西半球にあることです。アメリカが中南米諸国に介入するのは今に始まったことではありません。冷戦時代「共産主義の脅威」を口実に、CIAがグアテマラやチリのクーデターを支援。今回のベネズエラと同様、麻薬密輸を理由に直接的な軍事行動に出たケースもみられます。

こうした中南米への介入の源流となる言葉があります。

アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「我々は非常に重要な“モンロー主義”を忘れていた。もう忘れることはない。新たな国家安全保障戦略のもと、西半球におけるアメリカの優位性は二度と揺るがない」
モンロー主義

1823年にジェームズ・モンロー第5代大統領が提唱した『モンロー主義』。「ヨーロッパは中南米で植民地を拡大するな。その代わり、アメリカはヨーロッパの争いには介入しない」という外交方針です。それがいつしか、ヨーロッパの介入を防ぐためなら、アメリカが中南米に介入してもよいと解釈されるようになりました。その象徴の1つがコロンビア領だったパナマの独立を支援し、運河を建設したことです。

アメリカ トランプ大統領
「モンロー主義は重要なものだが、我々はそれをはるかに超越した。今や“ドンロー主義”と呼ばれる」
ドンロー主義

ドナルド・トランプとモンロー主義をかけあわせた“ドンロー主義”。先月発表された外交・安保政策の指針『国家安全保障戦略』でも西半球での覇権回復が強調されています。

国家安全保障戦略
国家安全保障戦略
「我々は西半球において、西半球外の競争相手が軍隊を配置したり、戦略的に重要な資産を所有・支配したりする能力を認めない」

中ロ・欧州には介入せず?

世界最大の原油埋蔵量を誇るベネズエラ。その最大の輸出先が中国です。今回のベネズエラへの攻撃には、中国の影響力を削ぎ、アメリカの支配力を強める狙いが見て取れます。ただ、西半球を縄張りとするトランプ版モンロー主義は、アジアやヨーロッパ、ロシアなど他の地域には介入しない姿勢と表裏一体となりかねません。実際、ウクライナ侵攻をめぐってはロシアに融和的な姿勢が目立ちます。国家安全保障戦略では、中国の軍事的脅威について言及が抑えられているとの評価が少なくありません。トランプ大統領自身、米中を「G2」と表現し、両国が勢力圏を分け合う発想が透けて見えます。

CNN安全保障アナリスト ジム・シュート氏
CNN安全保障アナリスト ジム・シュート氏
「ロシアは現在もウクライナ全土を飲み込もうとしています。中国も南シナ海での土地獲得や、台湾への脅威などの事例があります。確実にプロパガンダの観点から、彼らはこれを利用するでしょう。『我々がやろうとしていることと、米国がやったことの何が違うのか』と」
広告

トランプ氏が“中南米”にこだわる理由

佐藤丙午教授

アメリカ政治、安全保障などが専門の拓殖大学国際学部佐藤丙午教授に聞きます。

(Q.今回の軍事作戦はモンロー主義にのっとった形になりますか)

佐藤丙午教授
「200年前のアメリカには、ヨーロッパ諸国を排除する力がなかったので、それほど実効的ではありませんでした。ただ、いまやヨーロッパ諸国や外国の勢力を排除する力を持っています。歴史を振り返ると、ヨーロッパの植民地から共に独立し、自治権の行使に基づく同志であるという認識は極めて強く、それに対する干渉を排除する気持ちは今でもアメリカの根底には存在すると思います。同時に、アメリカは当時、植民地統治に非常に大きな抵抗を示しているので、直接統治をするというよりは、自分たちでこの地域を導いていくという感情があると思います。その反面、外国勢力の介入・影響力が入ってきた時にはトリガーとなって、攻撃的な政策に出ることがあります。それが今回、ベネズエラで表れたと解釈していいと思います」

(Q.モンロー主義とドンロー主義の違いは何ですか)

佐藤丙午教授
「トランプ大統領は自分の名前を冠することが非常に好きです。モンロー主義とドンロー主義が何が違うかはなかなか言えませんが、外国勢力が西半球に影響を排除することについては共通していると思います。マドゥロ政権はイランとも近く、ロシアや中国とも非常に近かったので、敵対国との近さ、介入させる余地をベネズエラが与えてしまったことに警戒感があったと考えられます」

(Q.トランプ大統領は、コロンビアなど他の周辺国にも軍事行動を示唆しています。こうした大国の力の論理は、今後も広がっていきますか)

佐藤丙午教授
佐藤丙午教授
「力の論理をどう解釈するかだと思います。正規軍による地上部隊を派遣した侵略・攻撃は非常に難しいですし、トランプ大統領自身もそれをずっと非難してきた歴史があります。また、国際法上の正当性も疑われます。表現は難しいですが、国際社会が『仕方ない』という範囲の中で、アメリカが何がしかの行動を取る可能性はあります。ただ、今直近で中南米諸国に軍事的な侵攻を計画している訳ではないと思います」
広告