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2026年1月21日 18:00

中国“メガ大使館”に揺れるイギリス スパイ活動拠点か 地下室や地下トンネルの報道

中国“メガ大使館”に揺れるイギリス スパイ活動拠点か 地下室や地下トンネルの報道
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 中国大使館の建設計画を巡り、イギリス国内が揺れている。現地の報道では、ロンドンの新たな大使館の設計図には地下室や地下トンネルなどがあるといい、スパイ活動の拠点となる懸念が指摘されている。

中国“メガ大使館”建設へ

 まずは、中国大使館の移設先から見ていく。

 今回イギリス政府に承認された計画では、新たな中国大使館はイギリスの金融街「シティ」の近く、「王立造幣局」の跡地に建設する予定だという。

 イギリスメディア「テレグラフ」などによると、2010年にイギリス王室が不動産開発業者に売却し、2018年にその業者が、日本円にしておよそ375億円で中国政府に売却している。

 敷地面積はおよそ2万平方メートルでサッカーコート3面分に相当し、完成すればヨーロッパ最大級の巨大な中国大使館になるという。

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亡命者弾圧の懸念も

中国新大使館の図面に“秘密の地下室”
中国新大使館の図面に“秘密の地下室”

 その大使館について現地メディアがこう報じている。

 「テレグラフ」が入手したとする中国の新しい大使館の建設図面には、中国側が公開していない208の“秘密の地下室”や大使館と別棟を結ぶ地下トンネルなどが記載されているという。

 また“秘密の地下室”には、熱排出システムなどを備える計画で、これについては「諜報(ちょうほう)用の最新鋭コンピューターを設置し、その熱を逃がすためのものではないか」との指摘も出ている。

英政府20日承認も…スパイ活動の拠点に?
英政府20日承認も…スパイ活動の拠点に?

 この大使館について、中国のスパイ活動の拠点になるのではないか?との懸念も広がっている。

 まず指摘されているのが「情報が抜き取られるのでは」という懸念だ。

 「テレグラフ」によると、建設予定地の周辺には、高速通信に必要な光ファイバーケーブルが埋められていて、そのケーブルのすぐそばにも部屋をつくる計画だという。

 大使館に近いシティにはロンドン証券取引所やイングランド銀行などがあり、近くを通る光ファイバーケーブルには、機密性の高い金融データのほか、給与の振り込みやオンラインでの支払いなど市民の決済情報などもあるという。

 「テレグラフ」によると、光ファイバーケーブルは折り曲げることで情報の入った光が漏れ、専用機器で情報を読み取れるという。

 こうしたことからアメリカの「CSIS(=戦略国際問題研究所)」はイギリスも参加する、機密情報を共有する国家間の枠組み「ファイブアイズ」との情報共有も危険にさらされると警告している。

2つ目の懸念 民主活動家への監視強化
2つ目の懸念 民主活動家への監視強化

 そしてもう1つ懸念されているのが「民主活動家への監視強化」だ。

 オーストラリアの「ABCニュース」によると、大使館建設に反対するデモにはチベット自治区や新疆ウイグル自治区、香港などからイギリスに亡命した人も参加しているといい、これは中国当局による国境を越えた弾圧を懸念した動きだという。

 イギリス「インディペンデント」は、この“秘密の地下室”が中国からイギリスに亡命した反体制派の拘留に使われる可能性があると報じている。

スパイ疑惑に対し中国側は…
スパイ疑惑に対し中国側は…

 こうした批判に中国側はどう答えているのか?中国大使館は「必要な手続きは踏まえている」と主張している。

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決断に英経済が影響か

中国大使館建設の承認は“手土産”?
中国大使館建設の承認は“手土産”?

 なぜイギリス政府は巨大な中国大使館の建設を認めたのか。イギリスの経済事情が関係しているという。

 イギリスのスターマー首相は、今月末、中国・北京を訪問予定で、実現すればイギリス首相の訪問としては8年ぶりのこととなる。

 「ロイター通信」によると、野党らはスターマー政権が安全保障や人権問題よりも中国との関係改善を優先していると批判しており、今回の中国大使館の建設も習主席への“手土産”として承認した可能性も指摘されている。

中国への接近の背景にイギリス経済の停滞?
中国への接近の背景にイギリス経済の停滞?

 イギリスが中国に融和姿勢を示す背景に、停滞するイギリス経済の状況があるという。

 「IMF(=国際通貨基金)」が公表した世界経済の見通しでは、今年のアメリカのGDP成長率が2.4%と予測されているのに対しイギリスは1.3%と主要国の中でも低い水準となっている。

 またイギリスの去年11月時点のインフレ率は、前の年の同じ月と比べて3.2%で、政府が目標とする2%までは下がっていない状況だ。

 スターマー首相は2024年の選挙で「経済成長の促進」と「インフレの抑制」などを公約に掲げて政権交代を果たしたが、「ガーディアン」は「中国から安い物がたくさん入るとイギリスの物価高が落ち着く可能性がある」という見方を伝えていて、インフレを抑制するためにも中国との関係を深めている可能性もある。

中国の狙いはロンドンの金融市場?
中国の狙いはロンドンの金融市場?

 一方で中国がイギリスに接近する経済的な理由とはどういったものか。それがロンドンの金融市場にあるのではないかという。

 ロンドンの金融市場は「世界最大級の金融センター」と呼ばれていて、世界の為替取引総額のおよそ4割のシェアを誇り、ニューヨーク市場に比べてアメリカ政府の関与が少ない。

 中国「新華網」は、ロンドンの金融市場について「ロンドンは世界有数のオフショア人民元の取引センターで、中国の人民元国際化における重要な役割を果たしている」と報じている。「オフショア人民元」とは中国本土以外の金融市場で取引される人民元のことだ。

 両国が接近する動きが加速したのは、習主席がイギリスに国賓として訪問した2015年までさかのぼるといい、この時イギリスと中国が発表した「共同声明」に「両国はロンドンの人民元オフショア市場の発展に貢献していく」と明記されている。

(2026年1月21日放送分より)

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