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ABEMA TIMES

2026年1月24日 10:00

トランプ大統領が軽視?「国際法」って意味ある?国際政治学者「魔法の杖ではない」「なくなれば無秩序の世界。万民が闘争する」

トランプ大統領が軽視?「国際法」って意味ある?国際政治学者「魔法の杖ではない」「なくなれば無秩序の世界。万民が闘争する」
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 アメリカのトランプ大統領が、ベネズエラ攻撃に続き、デンマーク領グリーンランドの領有を目指す動きを見せている。欧州各国はデンマークの要請を受けて、グリーンランドに部隊を派遣。国際社会における法の重要性を強調するも、トランプ氏は各国への追加関税を課し、「私に国際法は必要ない」などと発言した。

【映像】トランプ大統領、最近の動き

 国際法は、条約や国際慣習法などからなる、国家間の関係や国際秩序を守るための共通ルールだ。しかし大国が「力による現状変更」を行う現状において、国同士の合意で成り立つ「国際法」は意味をなすのだろうか。『ABEMA Prime』では、国際事情に詳しい専門家と考えた。

■国際法、機能してる?

グリーンランドがアメリカ領?

 軍事ライターで、国際法の研究もしている稲葉義泰氏によると、「国際法は“国と国との間のルール”。国家間の合意に基づいて結ばれる条約や慣習法で、『もし権利が保障されなければ、こういう措置を取る』というルールだ。国連も国連憲章という条約に基づいて設立された国際機関。条約により、機関設立や権利保障、経済活動の規制を定めている」という。

 国連憲章第2条第4項では、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」と定めている。

 もし、破った場合はどうなるのか。「まずは、国連安保理が“強制措置”として経済制裁をかける方法がある。北朝鮮への入港や輸出入の禁止は、それに基づいている。ウクライナ侵攻をめぐっては(安保理の常任理事国である)ロシアが拒否権を発動するため、安保理による経済制裁はかけられないが、国連総会で違法性を認めて、各国が措置を取っている。もう1つは、国家間の紛争を解決するために、国際司法裁判所に持ち込む手段がある」。

 また、最近の情勢をなぞりつつ、「国際法があるからといって、必ずしも権利が保障されるとは限らない。基本的に国際法は、合意に基づいて拘束されるため、トランプ氏のように『合意に縛られない』と言い出す国を止める手だてはないとの認識が必要だ。直近事例を考えて、もう一度正面から国際法に向き合う必要がある」とした。

 ヨーロッパ政治に詳しい国際政治学者で、筑波大学教授の東野篤子氏は、「国際法には過信以上に、誤解があった」と指摘する。「そもそも国際法は魔法の杖ではなく、判断材料だ。やめさせるためには、軍事力や制裁などを組み合わせる必要があり、『国際法で解決できないから不要』とするのは極論だ。国内法と一緒に論じるわけにはいかないが、『殺人がなくならないから、刑法は要らない』とはならない」。

 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「国際法や国際組織である程度は止められても『超大国に対して国際法は意味がない』となる背景には、『国際法に意味がある』との誤解があり、それが『国際法は要らない』につながる。ロシアやアメリカのように、“やらかさない”と思われていた国々が、時とともに“やってしまう国”に戻ってしまっている」と話す。

 ロシアやアメリカは常任理事国であるが、それ以外の国がブレーキをかけられるのか。東野氏は「止めにくいのは事実だ。ただ、例えば日本や中小国が『アメリカも守っていないから』と国際法違反をした時に、経済制裁に耐えられる国はそんなにないのではないか」と返す。

 そして、「ベネズエラやグリーンランドへの事例は、国連憲章第2条第4項に違反している。条文では武力による威嚇も行使も禁じており、『使うかもしれない』とチラつかせること自体がダメだ。そこでEUは『アメリカが今やっていることは経済的威圧だ。本来私たちは、中国に向けて“反経済的威圧行動”をしようと考えていたが、それをアメリカに向けるかもしれない』と言っている」と解説する。

■国際法は今後も必要か

国際法とは

 近畿大学 情報学研究所 所長の夏野剛氏は、「この状況がいつまで続くのかを考えないといけない」と説く。「トランプ以前のアメリカは、どこかでブレーキがかかっていた。アメリカには良心があり、世界秩序の警察官を果たしてきたのは、アメリカの国益だけでなく、『平和な経済発展が、アメリカの国益になる』という考え方に基づいていたからだ。パナマやアフガニスタン侵攻も、『国際秩序を守るため』と主張していたが、トランプ政権は明らかに自国の利益を求めている」。

 国際社会においては「『アメリカ大統領は変なことをしない』が最後の砦(とりで)だった。ロシアも中国もめちゃくちゃな中で、『アメリカもやっていい』とトランプ氏が選ばれたが、3年後にどうなるかはわからない」と語る。

 その上で、「この状態が続くのであれば、国際連盟のように、国際連合も破滅し、もっとひどい状態になる可能性もある。とはいえ、『核戦力を各国が持つ中で、世界大戦になればすべてが終わる』と、プーチン大統領も、習近平国家主席も、トランプ大統領も思っているだろう」と考える。

 こうした背景から、「強大国が圧倒的に弱いところを取りに行く局地戦が、3年間は続くのだろう。その中に台湾などが入ると、東アジアは大変なことになる」と予想した。「アメリカの良心は、ある時代も、ない時代もある。大統領や軍のトップによってもブレがある。強硬手段を執って失敗する場合もあるが、良心を持ってやっていた人がいたことも事実だ」。

 大国が国際法を守らない現状で、日本は国際協調を守った方がいいのか。稲葉氏は「守った方がメリットはある。大国に守る気がなかった時代は、過去にもあった。イラク戦争では国際法上の根拠があいまいな中で、イラクという国が崩壊に至った。当時は中東・アラブ諸国だけでなく、同盟国からもアメリカへの反発があり、国際法の基軸の中で声を上げたことで、イラクに対する法的説明を行うなど、アメリカ政府が折れた」と振り返る。

 同様の事態が起きている現在では、「ここで『国際法は要らない』となれば、無秩序の世界になる。“禁を破る国”が出るのではなく、“何も禁止されていない自由な世界”になると、万民が闘争する。そうならないための規制が国際法だと認識することが重要だ」と考える。「ないよりはある方がいい。アメリカもロシアも、中国も破ってきたが、破っていない国もある。そこをどう評価するかだ」。 (『ABEMA Prime』より)

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