アメリカ中西部ミネアポリスで、ICE=移民・税関捜査局の職員に、市民が射殺された事件。抗議デモが続く中、事件の報告書の内容が当初の説明と異なることが、さらなる批判を呼んでいる。
政権は予算・人員を倍増
ICEとは「Immigration and Customs Enforcement」の略で、2001年の9.11同時多発テロを受けて2003年に創設された。国土安全保障省が所管する機関で、主に移民の取り締まりを行う。
英紙「ガーディアン」によると、2025年5月、ミラー大統領次席補佐官はICEに一日3000人、年間100万人以上の移民逮捕を要求した。そのためには、スタッフの増員と予算の確保が必要となるが、2025年7月にトランプ政権が「1つの大きくて美しい法案」と呼ぶ、“One Big Beautiful Bill”法案、いわゆるBBB法案が可決された。
大型減税を盛り込んだ法案だが、英ニュースサイト「インディペンデント」によると、ICEには巨額の予算が割り当てられている。年間予算は87億ドル(約1兆3000億円)から277億ドル(4兆2500億円)に増えた。
これはトルコ軍の年間予算より多く、カナダ軍の予算に迫る。先進国の軍隊並みの予算規模と言える。
この巨額の予算を使い、人員も大幅に増員している。ICEは1月3日、職員とエージェント(捜査官)を1万2000人増員したと発表。2万2000人にまで増えた。
第1次世界大戦の兵士募集ポスターと似た、ICEの職員募集のポスターは、どちらも「アンクル・サム」というアメリカを擬人化したキャラクターが描かれ、愛国心に訴えるデザインとなっている。
1億ドルの採用戦術
また、AP通信などによると、募集要件を以下のように緩和した。
・軍歴も不問
・学歴条件も緩和
研修も非常に簡素化された。
・スペイン語研修や銃器訓練もカット
さらに年収は、40歳以上の国外退去強制担当官で約970万円〜1500万円。採用時には760万円ほどのボーナスがあり、学生ローンも免除される。さらには多額の残業手当なども用意した。
トランプ政権はICEの増員のため、1億ドルの採用戦術をとっているとされる。それが「ジオフェンシング」だ。これは「指定された場所を通過する携帯電話に広告を表示する戦術」だ。例えば、軍事基地、銃器の見本市、カーレース、大学のキャンパスなどで募集広告を通知する。
専門家によると、「より攻撃的で戦闘欲にあふれた応募者を引き付ける可能性がある」という。
不法移民の取り締まりに力を注ぐトランプ政権だが、実際に大統領就任後、ICEによる一日の逮捕件数は非常に増えている。
“取り締まり”アプリ開発か
テック業界はトランプ大統領の支持基盤でもある。2025年1月に行われたトランプ大統領就任式の様子では、以下の顔ぶれが見られた。
「アマゾン」の創業者・ベゾス氏
グーグルの「アルファベット」ピチャイCEO
「テスラ」のイーロン・マスク氏
「アップル」のクックCEO
このように第2期トランプ政権は、テック業界と良好な関係だった。
しかし、米ニュースサイト「アクシオス」によると、今年1月24日にミネアポリスで市民が死亡した事件を受けて、多くの経営者が沈黙を守る中、グーグル、アマゾン、メタなどの従業員450人以上が政府への圧力を連名で要求した。
そうした中、社内向けに懸念を表明する経営者も表れた。
オープンAIのアルトマンCEOは27日に「ICEの現状は行き過ぎだ。暴力的な犯罪者の国外退去と、今起きていることには大きな違いがある」と述べた。
アップルのクックCEOも27日「心を痛めている」と表明した。
ただ、テック業界に巨額の資金が流れていることから、同志社大学大学院・三牧聖子教授は「国民は冷ややかな目で見ている」と指摘する。これはどういうことなのか?
米ニュースサイト「ポリティコ」によると、ICEは監視技術への支出を増やしていて、その額は3億ドル以上に上る。具体的には、SNSの監視技術、顔認識ソフトウェアなどへの支出が増えている。
独立系メディアによると、大手テック企業の「ICE用捜査支援アプリ」まであるという。地図上に送還対象者などを表示し、各人物の身元情報を表示。政府の情報源などから住所を取得できる。「ICEが不法移民摘発に使用している」という。
(2026年1月30日放送分より)





