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2026年2月24日 01:36

【報ステ解説】“違憲判決”も脅威は今後も…“トランプ新関税”「世界一律15%」

【報ステ解説】“違憲判決”も脅威は今後も…“トランプ新関税”「世界一律15%」
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連邦最高裁から“違憲”との判断を突き付けられた、トランプ大統領。しかし、そのトランプ大統領は、世界各国に新たに一律15%の関税を課すと表明しました。混迷する関税の行方は…。

連邦最高裁から「違憲」判決

貿易収支の巨額赤字を理由に世界を振り回してきた、トランプ政権の相互関税。10カ月前、この言葉から始まりました。

アメリカ トランプ大統領(去年4月)
「今日こそ待ちに待った“解放の日”だ。2025年4月2日は産業再生の日。わが国が自らの命運と国家の豊かさを取り戻す日として永久に記憶される」

しかし、相互関税を使って各国から譲歩を引き出す交渉術に、司法からはノーが突き付けられました。

米連邦最高裁
米連邦最高裁
「大統領には、この法律を根拠として関税を課す権限は与えられていない」
アメリカの連邦最高裁

アメリカの連邦最高裁は20日、トランプ政権が日本などの貿易相手国に相互関税などを課してきたことについて違憲と判断しました。

アメリカのシンクタンクによると

アメリカのシンクタンクによると、今月20日までに少なくとも1600億ドルが違法に徴収された計算です。全額返金されれば、トランプ政権が見込んだ税収のほぼ4分の3が消滅すると指摘しています。

アメリカ トランプ大統領
(Q.申し立てた企業に還付する予定は)
「もう答えたはずだ。最高裁では議論されていない。5年間は法廷で争う話だ」
アメリカ ベッセント財務長官
アメリカ ベッセント財務長官
「最高裁は還付を審理しておらず、下級審に差し戻している。そこでの判断には従うが、数週間、数カ月間かかるはず」

すでにワシントンにある貿易を専門とする法律事務所には、世界各国のクライアントから問い合わせが殺到しています。

クラーク・ヒル法律事務所 ルドウィコウスキー弁護士
クラーク・ヒル法律事務所 ルドウィコウスキー弁護士
「政府は還付したくない。大金だからです。返金を嫌がるのは当然です」
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「一律15%」撤廃求める中国

ただ、トランプ政権は早くも次の手を打っています。

ホワイトハウスのX
ホワイトハウスのX
「落ち着け。関税は続く」
アメリカ トランプ大統領
「関税は絶対的な権利だ。巨額の資金が舞い込んでくる。そして5カ月の間、公正な関税や単に関税を課すための調査を行う。最後には税収が増えているだろう」
トランプ大統領

また、この調査の期間は、別の法律を根拠に、150日間にわたり一律15%の関税をかけると明らかにしました。

一方、最大の貿易相手国である中国。

中国商務省
中国商務省
「米国が貿易調査などの代替措置を準備し、貿易相手国に対する追加関税を維持しようとしていることも認識している。中国側はこれを注視している。中国側は米国に対し、貿易相手国に対する追加関税措置を撤廃するよう強く促す」

「85兆円投資」日米合意の今後は

関税交渉を担い、10回以上アメリカにわたった赤沢大臣は…。

赤沢亮正経産大臣
(Q.トランプ大統領が追加関税を課すと発表した)
「…」
トランプ大統領と赤沢亮正経産大臣

対米投資85兆円の見返りに自動車関税を15%に引き下げ、相互関税は15%にとどめることで妥結した経緯があります。高市総理の訪米を来月後半に控える中、政府内からは…。

日本政府関係者
日本政府関係者
「日米合意は双方の利益になるという考え方なので、関税が違法だから合意は無効という話にはならない」
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“トランプ新関税”どうなる?

上智大学 川瀬剛志教授

看板政策だった「相互関税」が「違憲」と判断され、トランプ大統領は新たな関税をかけると表明。どんな影響をもたらすのか。アメリカの関税法など通商政策に詳しい、上智大学の川瀬剛志教授に聞きます。

IEEPA(国際緊急経済権限法)

まず、トランプ関税のどの部分が違憲だったのでしょうか。トランプ大統領が高い関税をかける根拠としてきたのが『IEEPA(国際緊急経済権限法)』という法律です。これは大統領が緊急事態を宣言すれば“輸入規制”ができるというものです。ただ今回、最高裁は「大統領に関税を課す権限はない」と判断しました。

(Q.この司法判断をどう評価しますか)

上智大学 川瀬剛志教授
「最高裁は、基本的に関税を含めた税金をかける権利は憲法上、議会にあると。これが大前提です。トランプ大統領としては、IEEPAの中に“輸入を規制する”という言葉が入っているから規制していいじゃないかという発想だったのだと思いますが、判決の通り、範囲や期間、税率を制約なく引き上げるような権限を、IEEPAのもとで議会が与えたとは言えないと。もしそうなのであれば、明確にその旨を書いたはずだというのが、最高裁の判断の大筋です。私は大変妥当な判断だと思います」

(Q.トランプ大統領は“世界一律で15%”という新たな関税措置を出してきました。これはどうみますか)

通商法122条
上智大学 川瀬剛志教授
「これはある程度、予想していました。大統領の裁量で相互関税を世界に一律にかける手段は通商法122条しかないです。これまで、2国間合意を色んな国とやってきましたが、その税率をだいたい15%を中心にしてやってきました。今回の最高裁の判断のもとになった、去年の地方裁判所の判断ですでに負けているので、私がもしUSTR(米通商代表部)やホワイトハウスの法律顧問だったら次の手を考えると思います。その時点で、最高裁でも負けるかもしれない。負けた時に次の手がないのもまずい。その時に通商法122条が使えるのではと考える。恐らくそこに寄せて、2国間合意の税率を決めていったようにみえます」

【通商法122条】
国際収支に巨額の赤字が生じた場合、大統領の権限で最大15%関税をかけられる(原則150日)。

(Q.通商法122条による関税は一律で最大15%、期間は原則150日となっています。ここはどう考えればいいですか)

通商法301条と通商拡大法232条
上智大学 川瀬剛志教授
「USTRのグリア代表が直後に明言していますが、通商法301条との組み合わせでやっていくと思います。150日間は通商法122条でつないで、その間に通商法301条の調査。10カ月〜1年かかると思いますが、なるべく急いで、国別に関税を引き上げる。今の相互関税みたいなやり方をしていくのだと思います」

【通商法301条】
不公正な貿易相手国に報復的に関税をかけられる。適用に時間がかかる。

【通商拡大法232条】
安全保障上の調査を経て品目別に関税をかけられる。適用に時間がかかる。特定の国を狙い撃ちにできない。

(Q.トランプ氏は、これらの手札をどのように使ってくると考えられますか)

上智大学 川瀬剛志教授
「まず150日間を一律15%の122条でつなぎながら、それまでに301条や232条の調査が思うように進まなかった場合、議会に150日を延長してもらわないといけない。ところが下院で、カナダに対する関税をやめるようにという法案が、共和党議員も寝返って通っています。この間、ニューヨーク連銀が、関税の9割は米国民が負担していると発表したりしていて、中間選挙を控えると、なかなか議会も協力しにくいと思います」

(Q.色々な法律を組み合わせても旗色が悪いということは、トランプ関税の脅威は段々小さくなると考えていいですか)

上智大学 川瀬剛志教授
「ところが、今回のIEEPAの判決で言わなかったことが大事になります。1つは、トランプ大統領は不法移民の問題や貿易赤字の問題が緊急時代だと言っていますが、その判断の是非について最高裁は何も言っていません。もう1つは『IEEPAは関税をかける権限はない』とはっきり言っていたが、文言を見ると『輸入を規制する』と書いてあります。すると、関税をかけるのがだめなら、例えば『日本から輸入する車の上限は何台まで』『EUから輸入する農産物の上限はここまで』とか、いわゆる輸入制限、数量制限によって同じことをやる権限が残っています。IEEPAは歴史的にみても、そういう使い方をされているものですので」

(Q.日本はどう対応すべきですか)

上智大学 川瀬剛志教授
「なかなか難しい。ルールに基づく多国間の枠組みからすれば、日米合意にサインしてはいけなかったと思いますが、日米関係の現実からすると難しいと思います。だとすれば、5500億ドル投資については、例えば日本の利益になる案件を慎重に選んで、高市・トランプ関係だと前のめりになることなく、トランプ関税の状況も読めなくなってきているので突っ込まない。あとはカナダのカーニー首相がダボス会議で言っていた通り“ミドルパワー”EUやカナダといった国と連携して、TPP、WTOといった多国間通商関係を日本がしっかり支えていくといったことに尽きると思います」
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