イラン情勢の緊迫度が増している。現地では反政府デモに伴う混乱が続くなか、日本人ジャーナリストが拘束されるという事態も発生している。「ABEMA Prime」では、イラン出身のアリ氏と、一橋大教授でイラン情勢に詳しい秋山信将氏を迎え、混迷する現地の内情とアメリカによる軍事介入の可能性について議論が交わされた。
◆報道の自由を奪う「人質外交」の懸念

先日、NHKのテヘラン支局長が現地当局に拘束されたというニュースが飛び込んできた。イランの報道自由度は世界180カ国中176位と極めて低い水準にある。秋山氏は、この拘束の背景について次のように分析する。
「当局にとってみると不都合なものを報道しようとしたか、報道してしまったか。他のジャーナリストも拘束されていて収容所に送られている。人質外交という可能性もなきにしもあらずだ」。
昨年12月28日のデモ開始以来、少なくとも7人のジャーナリストが拘束されたとも言われている。さらに秋山氏は、自身の知人の経験を交え、現地の収容所の過酷な実態についても言及した。
「収容所で拷問を受けることもある。話を聞くと非常に大変な目に遭ったという。今回、さらに緊迫した状況の中で、イランとすれば、いろいろな手段を使ってアメリカとの間でなんとかまとめたいと思っているかもしれない」。
最も衝撃を持って受け止められたのは、イランにおける司法制度の崩壊である。アリ氏は、逮捕された際に身を守るはずの弁護士すらも標的になる異常事態を語った。中には、法の手続きは完全に無視され、わずか2日で死刑が確定するケースもあるという。
「普通は逮捕されると、弁護士について、その後に検察官、それで裁判という流れだが、実際には弁護士まで捕まってしまう。こんな国が世の中にあるのか。今までもう何十人という弁護士が『容疑者をかばった』という容疑で捕まっている」。
◆トランプ政権が検討する「2段階攻撃」のシナリオ

外交面では、アメリカのトランプ政権がイランに対し「2段階攻撃」を検討していると報じられている。これは、まず核関連施設を空爆し、それでも譲歩しない場合は最高指導者ハメネイ師の体制打倒を目指す大規模攻撃を行うというものである。秋山氏は、この作戦の軍事的な意図と、イランが隠し持つ核能力について解説する。
「アメリカがもし攻撃するとするなら、新たに(核に関する)情報を掴んでいるか。もう1つは、(前回の)爆撃の後に400キロぐらい60%濃縮ウランがあったが、この400キロのウランがどこに行ったか実はわかっていないと言われている。モサド(イスラエル諜報特務庁)などのインテリジェンスで場所をつかんでいて、そこを攻撃してしまおうということなのかもしれない。今、濃縮施設は前回の爆撃でおそらく稼働できないので、虎の子の400キロの濃縮ウランを使えないようにしてしまえば、その後の工程がどうであろうと核兵器の製造には至らない」。
しかし、空爆による核施設の破壊は可能でも、9000万人の人口を抱えるイランの体制転換は容易ではない。秋山氏は「イランは9000万人いて、イラクよりもっと難しい。だから、普通に考えれば見通しがない」と、軍事介入が泥沼化するリスクを警告した。
◆「自国を攻撃してくれ」当事者が抱く断腸の思い

こうした緊迫した情勢のなかで、アリ氏が本音を吐露する。本来、自国が他国から攻撃されることを望む国民はいないはずだが、イランの現状はそれ以上に絶望的だという。
「本当に皮肉で悲しい話かもしれないが、自国を攻撃してくれと望んでいる。国民が自由になるために、トランプ氏が約束したことを守ってほしい。トランプ氏はデモが起きればサポートすると約束した。それを信じて約40日前にデモが起きたが、3000人とも3万人ともいわれる人が殺されている。でも私は、直接イランにいる人から話を聞くと、その倍くらい殺されていると思う。前回のイスラエルとイランの戦争と同じく、トップさえやられれば、あとは庶民に任せればいい。(市民には)武器がないので、武器を持っている革命防衛隊をなんとかしてほしいし(イラン人を)本当に守ってほしい」。
アリ氏によれば、国民の9割はすでに反政府の思いを抱いており、40年以上にわたる「残酷さ」や「圧政」が爆発寸前まで積もり積もっている。現在のイランでは、選挙ですら「投票をする前にもう選ばれている」という形骸化した状態にある。
イランとアメリカによる3回目の高官級協議が26日に予定されている。しかし、トランプ大統領は「合意に至らなければ、彼らにとって不幸なことになるだろう」と最後通牒とも取れる発言をしている。この先に待つのは武力による解決か、それともさらなる衝突か。 (『ABEMA Prime』より)