アメリカのトランプ大統領が、この1年の内政や外交の方針を示す「一般教書演説」で、約1時間40分にわたり、成果を自画自賛した。しかし市民からは冷めた反応もあり、「トランプ離れ」がささやかれている。
止まらない物価高や、著名人や政財界関係者が関与したとされる少女への性的虐待疑惑「エプスタイン事件」の処理などにより、支持層からも不満の声が出て、支持率も芳しくない。『ABEMA Prime』では、トランプ支持者から話を聞きつつ、ニューヨーク支局にいるテレビ朝日・小松靖特派員に状況を聞いた。
■トランプ離れは進んでいる?支持者の見解は

CNNによると、トランプ氏の支持率は2025年2月7日の48%から、2026年2月24日には38%に下落した。一方で不支持率は、49%から60%へと上昇している。
ICE(移民・税関捜査局)と市民の衝突も話題だ。1月7日にミネソタ州ミネアポリスで、ICE職員が女性(37)を射殺し、市民による抗議デモへ発展。ICEは催涙弾を使用し、逮捕者も出た。1月24日には連邦職員も米国籍の男性(37)を射殺し、30日に全米でのデモに発展。政権がミネソタ州での移民摘発作戦終了を発表した。
“トランプ関税”への風当たりもある。連邦最高裁は2月20日、相互関税などを違法判決とした(自動車や鉄鋼など分野別関税は対象外)。トランプ氏は「無能な最高裁は間違った人々のために偉大な仕事をした。恥ずべきだ」と批判し、別法律を根拠に一律10%の追加関税を発動(150日間)。税率を15%に引き上げる方針を示している。
ラスベガス在住12年の観光ガイド、岡田将光さんは「歴代大統領も支持率は下がっていた。バイデン政権も支持率40%、不支持率55%と、トランプ政権より低かった。アメリカの住民からすると、一番の懸念は治安だ。その点で『不法移民の強制送還』に取り組むトランプ氏は心強い」と語る。
身近でも不法移民の摘発があったという。「不法移民がドラッグをして、パトカー4〜5台で逮捕した。近所の人が現場を目撃し、周囲は『こんなところで、めったに起こらない』と心配していた。学校区もそこそこ良いため、子どもたちへの影響も心配されていた」。
ICEの行動については、「一見やりすぎに思えるが、犠牲者は妨害行為をしていた人物だ。自分の意思で現場に行き、ICEの取り締まりを妨害していなければ、そもそも射殺は起きていない。治安を良くする捜査を、なぜ妨害するのか、意図が分からない。ICEの政策には賛成だ」と評価する。
関税政策には、「その影響ですべてが悪くなっているとは思わない。IT関係は悪影響を受けている人もいるが、僕が住むラスベガスは飲食業者が多い。『チップや残業に税金がかからない』というトランプ氏の政策で、飲食従事者の給料は上がっている。物価はバイデン政権で上がったまま停滞しているが、人によって給料も上がっているため、騒ぐほどではない」との見解を示す。
早稲田大学デモクラシー創造研究所の渡瀬裕哉氏は、「一番望まれているのは治安対策だ。不法移民に関しても『全部入れろ』と言う人は一部で、『ちゃんとやらないと』という話は、民主党ともある程度共通している。ただ、ICEのやり方は、以前から不人気だ」と説明する。
政権基盤については、「経済のよしあしが、どこまで中間選挙に影響を与えるか。第1次トランプ政権の中間選挙当時も経済は良かったため、選挙結果との関連性は崩れている。接戦地域の世論が最重要になっている状況だ」と見る。
また、「治安の改善は場所による。やはりイメージの問題で、民主党左派の支持者は『治安が悪くなっている』と答えるだろう。『ICEの強行が治安を悪くしている』と思う人もいる。ただ共和党支持者は『ちゃんとやっている』といい、現状認識が分かれている」と分析した。
■ニューヨークでは左派の市長も誕生 現地の反応は

小松特派員は、「ニューヨークはトランプ氏の出身地ではあるが、民主党の地盤だ。物価高がトランプ政権によるものなのかの議論には複合的要因があるが、不満は基本的に現政権に向く」と解説する。
現地での体感として、「卵が1パック1000円近いけれど、買わないといけない」としつつ、「“トランプ離れ”の数値化は難しく、支持率も政権発足1年で、大体下がるものだ。ただ最新のCNNの調査では、第1次政権と比べると、落ち込みは10ポイント程度大きい」と話す。
“MAGA”と呼ばれるトランプ氏の岩盤支持層も、分裂しつつあるのではと言われている。「CNNなどのリベラルメディアは『MAGAが離反を始めたぞ』と際立てて報じているが、物価高とエプスタイン問題では、共和党支持・民主党支持に関係なく、トランプ氏に等しくNOを突きつけている」。
ニューヨークの状況は「マムダニ市長の誕生が一番大きい。急進左派と言われ、本人も“民主社会主義者”を自認している人物だ。トランプ政権が発足して1年たっても生活が良くならない、物価も世界最高水準の地域で、とくに影響を受ける若年層が旋風を起こし、初めて左派の市長が誕生した。これはトランプ離反が形として現れているのかもしれない」と語る。
反対に、トランプ氏の長所はどこなのか。「支持者は『強いリーダーシップの象徴だ』と言う。一般教書演説も、メダリストを連れてきて『オリンピックの政治利用』と言われた一方で、強い言葉によって『停滞した国のアンチテーゼとして出てきた指導者』に映った」。
昨今のアメリカ政治は「『ウソをつく、法律を破る』といった価値観の外で展開されている。有権者もトランプ氏が破りまくることに、まひしている。術中にはまり、よほどのことでは驚かない。よしあしを超えたところで、どのように政策を推し進めるか、食い止めるかの力学が働いている」と推測する。「批判するメディアと、応援するメディアが二極化し、国家の分断につながっている状況は変わらない」。 (『ABEMA Prime』より)