国際

ABEMA TIMES

2026年3月1日 19:45

「外交交渉はカモフラージュ」ハメネイ師死亡 トランプ大統領の思惑は「中間選挙に勝つため」 …国際政治学者が緊迫の情勢を解説

「外交交渉はカモフラージュ」ハメネイ師死亡 トランプ大統領の思惑は「中間選挙に勝つため」 …国際政治学者が緊迫の情勢を解説
広告
1

 イランとアメリカおよびイスラエルの緊迫した状態が続いている。              

【映像】イラン先制攻撃の様子(実際の映像)

 22日、国際政治学者の舛添要一氏は「核兵器の開発をアメリカが疑っている、全部やめろと。トランプ氏は10日ぐらい待つ、でもトランプ氏が望むような、バンザイしますということをイランは言わない。イスラエルはとにかくアメリカと一緒に攻撃する。イスラエルはミサイル開発を止めたい。イスラエルまで届くミサイルがあるのでそれを潰したい。でもテヘランも『参りました』と言わない。非常に緊迫した状況」と語っていた。

 26日、アメリカとイランは核問題について協議を続けていた。仲介国のオマーンのバドル外相はXで「大きな進展があった」としたが合意には至らなかった。それでも27日、バドル外相は「合意は手の届くところにある」とし、イランが高濃縮ウランの貯蔵を放棄する意向を示したと述べた。イランはアメリカが要求した核施設の解体などについては拒否した。

 ただ、今月2日には技術的な協議をすることが決まっていた。しかし、トランプ大統領は「イランの交渉のやり方には満足していない」と表明した。それでもイラン攻撃については「最終的な判断はしていない。戦争にはあらゆるリスクがある。軍事力は使わずに済むのが望ましいが時に使わねばならないこともある」と、協議の行方を見極める考えを示していた。

 しかし事態は舛添氏が懸念した展開になった。28日、ついにイスラエルとアメリカがイランに対し先制攻撃を開始したと発表。

 イラン国営メディアは、ホルムズ海峡にほど近い南部のミナブの女子小学校にミサイル攻撃があり、これまでに女子児童ら80人以上が死亡したと伝えている。対するイスラエルも「特別非常事態宣言」を発令し、警戒レベルを引き上げた。

 イスラエルの当局者によると、この攻撃はアメリカと連携していると明かした上で、作戦は何カ月も前から計画されたもので発射日は数週間前に決まったと語った。

 トランプ大統領はSNS動画で「米軍はイランへの大規模な戦闘を開始した。イランは核の野望を放棄するあらゆる機会を退けてきた。もう限界だ。イランは1番のテロ支援国家だ。数万人もの自国民のデモ参加者を路上で殺害した。アメリカのこれまでの妥協しない方針はこうだ。特に私の政権の方針は、このテロ政権に核兵器を持たせない方針。我々はイランのミサイルを破壊し、ミサイル産業を地上から消し去る」と語った。

 また、イスラエルのネタニヤフ首相も「つい先ほどイスラエルと米国は共同作戦『ライオンの咆哮』を開始した」とした。作戦名は「エピック・フューリー」、つまり『壮絶な怒り』だ。

 イスラエルは2024年に続いて2025年6月にイランに直接攻撃し、アメリカも核施設爆撃で参戦。「12日間戦争」と呼ばれる戦争でイスラエルはイランの防空網やミサイル発射施設などを破壊し、イランはイスラエルに500〜600発程度の弾道ミサイルを発射したとされる。

 舛添氏は「今回の攻撃目的はイランの核開発断念と現政権の転覆だ」と指摘する。

 今回の軍事作戦でアメリカ軍はイラン各地の核施設への攻撃も展開。再び核開発ができないよう徹底的に攻撃するとしている。CNNが入手し精査した映像によると、イランの諜報機関にあたる情報省の方角から煙が上がっているのが確認されたという。また、爆発は最高指導者ハメネイ師の事務所付近だったとの報道もある。

「ただ、イランも大国だからただやられっぱなしというわけにはいかないはずだ」(舛添氏)

 イランも報復を開始した。イラン革命防衛隊はイスラエルに向けてミサイル攻撃を行い、ペルシャ湾対岸に位置するバーレーンに駐留するアメリカ第5艦隊にもミサイル攻撃をした。さらにUAE、カタール、クウェートにあるアメリカ軍基地を攻撃した。

 これに対し世界の反応は、EUのフォン・デア・ライエン委員長が「すべての当事者に最大限の自制を求め、民間人を保護し、国際法を全面的に尊重するように呼び掛ける」、ノルウェーのアイデ外相が「中東で新たな大規模な戦争が起こるのではないかと深く懸念している」と語った。

「海軍を壊滅させ、地域内の代理テロ集団が同地域や世界全体に不安をもたらせないようにする。繰り返すが、イランは決して核兵器を持つことができない」(トランプ大統領)

 この戦火の煽りを受け日本国内にも影響が出ている。成田空港をドーハに向け飛び立ったカタール航空機が引き返す事態になり、日本政府もイランに滞在する日本人の国外退避を支援する方針を固めた。

 イランの国営メディアは、日本時間の1日午前10時半ごろ、アメリカとイスラエルの攻撃によって最高指導者ハメネイ師が死亡したと報じた。ハメネイ師をめぐっては、28日の攻撃後、イランのアラグチ外相が「私の知る限り無事」だと語っていた。ハメネイ師の娘や孫も死亡したという。

 ハメネイ師は86歳で、1979年のイスラム革命を率いたホメイニ師を継いだ2代目の最高指導者だ。1989年にホメイニ師が死亡し、当時大統領だったハメネイ師が専門家会議によって最高指導者に選出された。イランの革命防衛隊は「非常に大きな存在の指導者を失った」とコメントしている。

 舛添氏が緊迫するイラン情勢について解説する。「(イランの)体制を転覆させるのがトランプ氏の目的だが、すぐそれが可能かどうかはまだ不透明だと思う」。

「(アメリカは)昨年の暮れ辺りから細かくこの攻撃の準備をしてきたみたいだ。外交交渉をやっているが、カモフラージュで相手を安心させた上でやっている。まさか外交交渉をしている時にやらないだろうと。昨年の6月も同じやり方でやった。断言はできなかったが、先週の時点で『ほぼやるだろう、時間の問題だ』と申し上げた次第だ」

 トランプ大統領の攻撃の目的は何なのか。「1つは、何度もトランプ氏が演説で言っているように、『核兵器を絶対にイランには持たせないよ』ということ。そしてミサイルも持たせない。それからもうテロを支援してきている。イランのイスラム革命から47年経っているが、あの時にはアメリカ大使館で人質を取られたりして、全アメリカ人がイランを嫌いになっている。だから、この体制をひっくり返すことを、絶好のチャンスが来たと。昨年の暮れに、イランの市民が街頭に出て『飯が食えない』『経済をなんとかしてくれ』と立ち上がって、何千人も殺されたわけだ。チャンスが来たというのは、これで方針転換したのだと思う」。

 イスラエルが先制攻撃したが、舛添氏は「これは周到に準備して、エイブラハム・リンカーンに加えて、2隻目の空母ジェラルド・フォードも地中海まで来ているし、軍事力をあそこに集中させているのも公表して圧力をかけているので、時間の問題だった。そして、とにかく外交交渉をやりながら、騙しながらやったということだ」との見方を示した。

 攻撃された場所については「核やミサイルの開発施設がある場所だ。テヘランが北の方にある。そして、コム、イスファハーン、ケルマーンシャーなど、全部これらは素晴らしい絨毯の生産地だが、同時に核施設がある。こういうところを一斉に攻撃したと。だから、目的は核を絶対に持たせないということだ」と説明した。

 ハメネイ師が殺害されたことについては「体制転換に繋げたいということで、ハメネイ師だけでなく国防大臣も軍の司令官も殺した。その他、要人が相当死んでいる。ピンポイントで彼らのいるところを目がけて殺しているので、体制転換を進めるということに尽きる。ハメネイ師を殺したことはシンボリックなことだと思う。しかし、今後新しい体制をどう作るのかは、そんなに簡単ではないと思う」と語った。

 なぜこのタイミングでの攻撃なのか。「これは秋の中間選挙が念頭にあるわけだ。ここのところ支持率がどんどん下がっていて、支持が4割、支持しないが6割に上がってきている。そして、いろいろな問題が起こってきているので、戦争ということになるとそっちにみんなの注意がいくし、『よくやった』と、これでうまく成功すればノーベル賞ものだみたいな話になるわけだ。一方で、ウクライナは自分が政権を取ったら24時間以内に片付けると言って片付けていないわけだ。だから、とにかく得点を積み上げていって中間選挙で勝ちたいという」

「それとともに、エプスタイン文書が出てきて、クリントン夫妻を召喚して議会で証言させた。それならトランプ氏だって付き合っていたじゃないの?と、なんであなたは証言しないんだということが出てきている。このエプスタイン問題は、世界中で大きな問題になっているけれども、今回のイラン攻撃でそっちの方が大きなニュースになると、相対的に消える可能性があるわけだ。全ては中間選挙に勝ちたいと。だから、イランの方でうまくいってノーベル賞候補になったぞというと選挙に負けないで済む。アメリカも日本も同じだが、選挙に勝つためにどうするかを政治家は常に考えて、全部そういう中でうまくスケジューリングを組み込んでいる。さすがだなという感じ」

 この戦いはいつまで続くのか。「ここまで来れば体制をひっくり返すところまでいくと思う。例えば、アフガニスタンを見たらわかるけれども、失敗してアメリカが手を引いた。そうしたらまたタリバンになってきた。こういうことは絶対に避けないといけないけれど、ハメネイ体制でない体制、例えば野党とかいろいろな運動組織があって、体制を転換させて自分たちが政権を取る準備をしているような組織があるかというとない。だから、これを作るのは時間かかるので、どう転んでもしばらくは混沌とした状況が続く。したがって、ホルムズ海峡の閉鎖とかも実質閉鎖されていると思うが、日本に来る原油はここを通るから、値段が上がるとかいろいろな影響が出てくるので、長期化しないことを祈っているけれども、やっぱり長期化せざるを得ない。そういう危惧の念を持って眺めている」と解説した。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

広告