アメリカによるイランへの攻撃は、最初の24時間でイラク戦争(2003年)開始時の約2倍の規模となり、作戦開始から100時間以内に2000カ所近い標的を破壊したと、アメリカ中央軍の司令官が発表した。最高指導者のハメネイ師殺害も、イスラエル軍によると、攻撃開始後わずか1分で殺害したという。
アメリカ側は、AIを駆使して大きな成果を上げたとしている。しかし一方で、世界各国からは、今回の攻撃に否定的な声もあがる。『ABEMA Prime』では専門家が、今後の展望と、日本への影響について、見解をぶつけた。
■アメリカによるイランへの攻撃は成功だった?

アメリカの戦略的背景に詳しい、保守系シンクタンク「ハドソン研究所」研究員で、東京国際大学准教授の長尾賢氏は「作戦はうまく行っている。アメリカは昨年の段階で、イランへの攻撃を決めていたと見ている」として、そこには「北朝鮮の事例がある」と説明する。
「北朝鮮の核開発を阻止すべく、軍事作戦を行うか迷ったが、最終的に外交で解決した。しかし北朝鮮は、こっそり核開発していた。これをイランで繰り返すわけにはいかない。能力を破壊しても、意思がしっかりしていると、いつか核を持ってしまう。根本的に解決するには、核開発しない政権にするしかないと、準備を進めてきたのだろう」
タイミングは「1月の反政府デモには間に合わず、準備が整ったため現在に至った」とする。「最初に指導部を排除するなど、作戦が迅速に進んだ。相手へ正確に当てられるのは、正確な位置情報がわかっているからだ。それを把握する人員をAIで代替したことで、従来の2倍の規模になった。AIを使うことで、効率だけでなく、規模も大きくできる」。
ペルシャ湾岸地域の安全保障に詳しい「中東戦略研究所」代表の村上拓哉氏は、「トランプ政権になってから、イランとアメリカはオマーンを介した交渉を6回やってきた。トランプ氏は交渉で、イランの核保有を止められると信じていたのではないか」と考えている。「しかしイランが弱体化し、いま軍事攻撃を仕掛ければ、よりよい核合意ができると動いた。イランの核保有が、本当に『切迫した脅威』だと信じている人は、トランプ政権内にいないだろう」。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「アメリカ国防省も『イランがどこかを攻撃する予定があったのか』との問いに、『そんなものはない』と答えている。今やる必要がなく、戦略ミサイル開発なども聞かないため、選挙対策が大きいのでは」と考える。
これにカリフォルニア大学バークレー校教授の野村泰紀氏は、「アメリカでは、みんなエプスタイン文書の方を気にしている。またコアな支持層の“MAGA”も『中東に関わっている場合じゃない』と離れている。MAGAが離れるのはわかっていたはずで、おそらくイスラエルからの説得が大きかったのだろう」と返す。
一方で長尾氏は、「選挙やエプスタイン文書が理由とは見ていない」と反論し、その理由として「イランは2024年12月の段階で、ウラン濃縮を60%まで行っていると、IAEA(国際原子力機関)が伝えている。民生用では3〜5%でよい。核弾頭は90%以上に濃縮して作られるが、20%以上でも核兵器はできる」と語る。
そして、「準備していたのは間違いない。ミサイルは7〜8年かかるとも報じられているが、国家が本気になって隠すと、進行していても表に出ないこともある。『時間があるのに早く攻撃しすぎだ』との指摘はあたらない」とした。
これに村上氏は「高濃縮ウラン保有の事実は、公表されていた。イランはオバマ政権と結んだ核合意を復活させたかった。しかしトランプ政権で、アメリカが一方的に制裁を再開してしまったために、交渉カードとしてウラン濃縮を続けてきた経緯がある。IAEAも『イランに核兵器開発の兆候はない』と声明を出している」と補足を加えた。
■最高指導者も死亡、その先は

ハメネイ師亡き後、アメリカはどのように交渉するのか。長尾氏は「政権交代を“乗っ取り型”で行う場合、引き継ぐ人物が必要だ。『行政府の長でしかないペゼシュキアン大統領では、格が低すぎるのではないか』という指摘もあるが、上を排除した後に残る後継者としては、可能性がある」と推測する。
村上氏は「イランでは最高指導者が全権を掌握し、大統領が上がるシステムではない。後継者候補の1人がハメネイ師の次男、モジタバ師で、仮に彼にならなくても、イスラム法学者の中からトップを選ぶ。イスラム体制が転換しない限り、大統領が実権を持つことはない」と否定する。「『あえて生かしている』というより、たまたま生きているに過ぎないのではないか」。
長尾氏は「イランはミサイルやドローンを1000発以上撃っているが、このペースでは生産能力を上回ってしまう。『ストックがある』と言える段階で休戦交渉しないと、各国から一斉に袋だたきにあうため、それを見越してアメリカは『我々には4〜5週間後もミサイルや爆弾がある』とメッセージを送っている」と分析する。「イランの兵器が尽きた時、決断する能力があれば、交渉を挑んでくるのではないか。そこで譲歩できれば、早く終わることもあるだろう」。
村上氏は「最初に最高指導者を狙ったということは、体制転換や政治的混乱に期待していたのではないか。しかし、思ったよりも混乱は起きていない」と話す。「攻撃の頻度を下げつつ、ずるずる続ける方向にシフトするのではないか。イスラエルはハマスを2年間攻撃しても、ミサイル能力を奪えなかった。アメリカもイエメンのフーシ派を約1カ月空爆したが、いまなおフーシ派は健在だ」。
■今回の攻撃、日本にはどんな影響が

日本はどのような立場を取ればいいのか。長尾氏は「はっきり支持すべきだ」と主張する。「これは戦争で、『敵か、味方か』が最重要だ。『アメリカの味方だ』と言わなければ、我々の味方になってくれない。中途半端な言い方では、今のアメリカは聞かずに、逆ギレするだけ。戦後処理で戦勝国は利権を取れる。戦いに行かなくていいが、タネはまいておくべきだ」。
湾岸戦争を振り返り、「結局損した。中途半端にお金しか出さなかったから、日本は敗戦国として扱われた」とし、「派兵はしなくていいが、支持だけ表明すればいい」との考えを示す。「泥沼で長期化する見方もあるが、短期で終わった場合を想定して、種をまいておくべきだ。日本が支持を表明しても、やらなければならないことは何もない」。
村上氏は「日米同盟を無視して、アメリカに盾突くことは考えられない」と考えつつ、「今回アメリカとイスラエルがやったことは、国際法に反していて、そもそもアメリカの国益にとって正しいかも分からない。日本としては『中東で損耗する必要はない』と働きかけることが大事ではないか」とした。「『国際秩序が守られることが、日本にもアメリカにも利益になる』と説得して、元の位置に戻す努力が重要だ」。
歴史を振り返り、野村氏は「アメリカはこれに近いことをずっとやってきた。イランも一度、民主化に近づいたが、CIAがひっくり返した。しかし、それらは水面下でやっていた。表立って攻撃する際には、決議を取っていたが、今はその手続も無視している。イランの政権も悪かったが、かといって射殺してはダメだ」と述べる。
ひろゆき氏は「第3次世界大戦の可能性は結構あった」とみている。「イランからの支援要請を、ロシアが断っていなかったら、ロシア・イラン連合とアメリカが戦争になっていた可能性がある。中国が加担すれば世界戦争になるが、中国は経済問題があり、トランプ支持でもある。世界がどんどん分断していくなら、戦争を長引かせた方が良いと、中国は結論づけるだろう」。
また、「ホルムズ海峡では、保険会社の補償停止でタンカーが止まったが、アメリカ政府が保険をかける話がある。これが動き出した状態で、イランの攻撃が活発化すれば、タンカーの膨大な損失をアメリカが払わなくてはならない。アメリカ政府はそこまで経済的に豊かでないため、それをかぶった時に経済が持つのか」との論点も示した。 (『ABEMA Prime』より)