3月3日、「ABEMA Prime」に前総理で衆議院議員の石破茂氏が生出演。緊迫化するイラン情勢とアメリカの軍事行動について、総理経験者としての知見を交えた洞察を語った。アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃が長期化の様相を呈する中、日本が直面する情報の重圧と、問われる国際法上の判断について議論が交わされた。
◆長期化する軍事作戦と変容する現代戦

2月28日に開始されたアメリカとイスラエルによるイランへの攻撃に対し、トランプ大統領は軍事作戦が5週間以上にわたり長期化する可能性を示唆している。 この現状については「これは長引くかもしれない。相手がイランだし、そう簡単には終わらない。トランプ大統領が地上戦も辞さないと言っている」と、戦況の激化に警鐘を鳴らした。
さらに、米国内の世論についても言及し、「アメリカにも長期戦になれば被害が出る。今でもアメリカの中で、このイラン攻撃を支持している人は決して多くはない。そこで(アメリカ人の)死傷者が出始めると、アメリカ国内は本当に持つのか。イランとアメリカが正面から戦火を交えるのは極めて珍しいこと。何が起こるかはわからない」と、予測困難な事態への懸念を示した。
今回のような事態が発生した場合、国のトップである総理には何が求められているのか。一般市民には計り知れない重圧についても質問が及んだ。まず総理はどのような場所で、誰から情報を得ているのか。石破氏は自身の経験を踏まえると「外務省、防衛省、あとはNSC(国家安全保障会議)。そういうところから情報は入る。また当然、同盟国であるアメリカからも入ってくる。情報がみんな整理できて一致していればいいが、それが違う場合もある。全くピタッと一致するはずがない」と、錯綜する情報網の難しさを語る。
また、初動におけるマニュアルの有無を問われると、「マニュアルがあるわけではない。当然、一報が入った時に何を話してよいわけでもなく、話してはいけないこともいっぱいある。これも判断しなければいけない。これから先、国内世論にどういう影響を与えるかも考えなければいけない。ありとあらゆることを考えないと対応はできない」と、高度な政治判断の連続であることを強調した。
夜間に重大な事件が起きた際の体制についても、「常に起きる体制にはある。何がいつ入ってきても寝ていました、寝ぼけていましたでは話にならない。酒を飲んで酔っぱらってましたでは済まされない」と、24時間態勢で続く緊張感を語っている。
◆アメリカの攻撃に対する「法的評価」の難しさ

現在、最も注目されているのは、アメリカの軍事行動を日本政府がどう評価するかという点だ。高市総理は訪米に際し「現段階で法的な評価ができるというものではない」と慎重な姿勢を崩していない。
この法的評価のプロセスについて、石破氏は「自衛権の行使」という観点から詳細に分析した。「イランからアメリカに対して急迫性のある武力攻撃があったわけではない。そうすると、どうやって『自衛権を行使した』と整理するのか。先制的自衛や予防自衛という概念がある。一つのことを見れば、まだ急迫性の武力攻撃ではない。しかし、いろいろなことが積み重なって、それを全部合わせると急迫性の武力攻撃と同じような評価になる。これを集積理論というが、どの理論を使えばアメリカの攻撃というものが評価できるか。それは感情的にいいとか悪いとかの話をしても仕方がない。今まで国連でどのような評価があったか、国際司法裁判所でどういう評価があったかなどを自分の中で整理しとかないと、判断はできない」と、冷静な理論構築の必要性を説いた。
さらに、過去のイラク戦争を引き合いに出し、「アメリカは(イラクが大量破壊兵器を)持っていると言うからそうだろうと、(当時総理の)小泉純一郎さんは支持した。それをどう国民に説明するか、国際社会に説明するか。学習効果がないはずはない」と、過去の教訓を踏まえた説明責任の重要性を指摘している。
仮に法的評価が否定的になった場合、後方支援を断るのかという問いに対しては、「その場合は国内の支持も得られないし、難しいのではないか。アメリカに対して、今イギリスも一緒にはやらないと言って、一緒にやっているのはイスラエルだけ。例えばG7の他のメンバーはどうなのか、アメリカの同盟国はどうなのか。日本はどうやって歩調を合わせるべきかも総合的に判断しないとできない」と述べ、多角的な視点での判断が不可欠であるとした。
ホルムズ海峡が封鎖されたと報じられる中、日本への影響は避けられない。アメリカに対して日本はどのような意見を言うべきなのか。
石破氏は、「最初に我が国の国益を考えなければいけない。アメリカに意見をするならば、いかにして(イラン攻撃を)早期に終わらせるか。アメリカの今回の行為が一体何を狙ったものであるのか(を確認すること)。やはりNPT(核不拡散条約)体制を守っていく中にあって、これ以上の核拡散というのは防がなければいけない。それは当然、北朝鮮の問題とも連動してくる。どうやって核拡散を防ぐかとホルムズ海峡の安全をどう確保するか」と、エネルギー安全保障と核拡散防止の観点を挙げた。 (『ABEMA Prime』より)