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ABEMA TIMES

2026年3月9日 17:15

イランの「安価なドローン」を数億円のミサイルで迎撃 石油施設を狙われ世界が困る…トランプ大統領の“誤算”

イランの「安価なドローン」を数億円のミサイルで迎撃 石油施設を狙われ世界が困る…トランプ大統領の“誤算”
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 アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃は、開始から1週間以上が経過した。イランの最高指導者・ハメネイ師が殺害され、イランの反撃は中東諸国の米軍施設だけでなく、隣国アゼルバイジャンや、NATO加盟国・トルコにも及び(イラン当局は否定)、戦火は拡大の様相を呈している。

【映像】イランの安価なドローン(実際の映像)

 トランプ大統領は3日、「当初、4〜5週間かかると計画していたが、それよりも長い期間作戦を続ける能力を持っている」と発言。SNSでも「無条件降伏以外は受け入れない」と投稿した。

 しかし、国際政治学者の舛添要一氏は、この戦い自体がトランプ氏の“誤算”だらけだと指摘する。「支持率が全然上がらない。ホルムズ海峡封鎖によりアメリカ経済にまで影響が及んでしまった。誤算だった」。

 ではトランプ氏は、誤算でなければ、どんなシナリオを描いていたのか。舛添氏によると、トランプ氏は、今回の軍事作戦でイラン国民自身が、47年続いたイランの「イスラム革命体制」を転覆させると考えていた。つまり体制転換だ。

 2025年12月に起きた大規模デモも、反体制を訴えていた流れも、好機と捉えた可能性がある。しかも斬首作戦も成功し、最高指導者のハメネイ師も殺害した。民衆の不満と、それを恐怖政治で抑え込んだ指導者もいない。核兵器や長距離ミサイルの開発もしない、アメリカやイスラエルにとって、都合のよい民主国家ができるはずだった。ベネズエラの作戦成功も、その延長線にあったに違いない。

 攻撃を開始した1週間前、米メディア(アクシオス)のインタビューで、トランプ氏は「長期化させてすべてを掌握することも、2〜3日で終わらせることもできる」と語っていた。彼のシナリオでは短期決戦で終わり、イランの反撃はあっても“限定的”で、周辺国への影響などないと踏んでいたはずだった。

 事実、アメリカ軍は5800億円(米シンクタンク試算)もかけてミサイル攻撃を行い、開戦後すぐに制空権を奪うなど、圧倒的軍事力を見せつけてきた。ところがイランに安いドローンで迎撃されるという誤算が生じた。

 また、イランを一気に短期で破壊することで「お手上げだ」と降参し、資源輸送ルートとして重要なホルムズ海峡を封鎖する能力もないだろう、つまり経済的影響もないだろうと、もくろんでいた。

 そしてこのシナリオのエンディングは、中間選挙だ。関税問題やインフレで悪化する国内経済を払拭するためには、この戦争が支持率上昇の起爆剤になるはずだった。イラク戦争の時のブッシュ大統領(当時)は支持率が上昇していた。

 しかし、そのすべてが誤算だった。ロイター通信の調査によると、今回のイラン攻撃を「支持しない」と答えたアメリカ国民は43%。「支持する」の27%を大きく上回っている。攻撃を支持する人以上に、しない人が多いことが、トランプ氏にとって誤算だ、と舛添氏は指摘する。

 トランプ氏の「無条件降伏」発言について、舛添氏は「軍事的にここまでイランを崩壊させているため、『絶対に勝つぞ』ということを国民に示す意味で、この言葉を使ったのだろう」との見方を示す。

 一方で、イランのペゼシュキアン大統領は、決して降伏しないと言っている。「イランは古代から中東における大帝国だ。自分たちの文明や文化に誇りを持っており、『簡単にやられてたまるか』という気持ちがある。いくらミサイルや武器が枯渇しても、最後まで戦うという気持ちが、イラン国民の中にあるのだろう」。

 舛添氏は、最初の誤算として「イランの民衆が体制転換に立ち上がると予想していたが、誰も立ち上がらなかった」ことを挙げる。「宗教指導者が独裁している国、昨年末に国民がデモをやった。ハメネイ師を殺せば、皆が立ち上がって民主主義に向けて動くはずだと思っていたが、誰も立ち上がらなかった。これまでも弾圧されており、反体制の政府を作る動きがない。一部にはあるかもしれないが。明確に状況を読んでいれば、こんな甘い考え方は持てなかっただろう」。

 そして、「昨年末からのデモは完全に弾圧された。反体制派が勝つためには、強力な武力を持たなければならないが、全く持っていない。そこが大きな誤算。助けようとすれば、地上軍を陸軍の中に入れないとできない。そうすると泥沼になってしまう」と指摘する。

 続いての誤算は、「イランは軍事的にそんなに抵抗できないと思っていたが、実際はイランが周辺諸国にまで攻撃した」ことだという。「値段の安いドローンを大量に持っていて、どんどん周辺12カ国に飛ばした。ここまで抵抗するとは思わなかっただろう。ミサイルでの反撃もしているが、一番大変なのは200〜300万円程度の安いドローンが、石油精製施設をたたくなどの攻撃だ。そのドローンを撃ち落とすのに、数億円のミサイルを使っていれば、経済的にアメリカは大変だ」。

 3つ目の誤算は「経済的な影響はさほど広がらないと見ていたが、原油価格が急騰し、アメリカでも物価が高騰」していること。「『徹底的にやれば、ホルムズ海峡を閉鎖できないだろう』と考えていた。『タンカーに駆逐艦をつけて守る』と言っているが、今ホルムズ海峡に40数隻の船がいる。それを守るために40数隻の駆逐艦を出しますかということになる。対岸、ホルムズ海峡の目の前にはイランがあり、いくらでも邪魔できる。こんなに船の動きが止まるとは思っていない」。

 こうした状況下で、「私が船乗りなら、いつやられるか分からない場所には行かない。湾の中でじっと待っているだろう」として、「そうなると、いろいろな物資、とくに原油を運べず、一気に石油価格が上がっている。カタールではLNG(液化天然ガス)を生産しているが、その施設を攻撃され、生産をやめると言っている。小さなドローンを石油精製施設に落とすと、一気に火の手が上がり使えなくなる」と話す。

 そして「イランのうまい点は、まともに軍事的反撃をしても負けるため、石油やLNGの関連施設をたたいていること。原油価格が上がり、世界中が困り、アメリカの物価も上がる。アメリカ人もガソリン価格に敏感だ。そうした狙いがイランにはあるのだろう」と推測した。

 4つ目の誤算は「イラク戦争の時のように支持率が上がると思っていたが、実際は支持しない人の方が多い」という状況だ。「普通は“悪魔”と戦う、そういう戦争の時には絶対に支持が集まる。イラクのサダム・フセインをたたいた時も、9.11の同時多発テロでアフガニスタンに入った時も、みんなが拍手した。『悪魔との戦いは支持して当然』なのだが、支持率が上がらず、むしろだんだん下がっている。これは大きな誤算で、このまま行けば、秋の中間選挙で共和党は勝てない。これが大きな問題だ」。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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