アメリカのSNSで話題になっている動画がある。ホワイトハウス執務室でトランプ大統領を人々が取り囲み、「主よ、この試練の時において彼を導きたまえ。あなたの恵みとご加護が大統領とすべての米兵にあらんことを。父よ、大統領にこの偉大な国家を導く力を与えたまえ」と祈祷するもので、映っているのは全米から集まった牧師たちだという。
トランプ氏の横には昨年、反キリスト教を取り締まる「信仰局」トップに就任した、福音派の女性伝道師、ポーラ・ホワイト局長の姿もある。
元テレビ朝日外報デスクで、アメリカ駐在歴が長い「インサイダ」編集長の中丸徹氏は「アメリカってそういう国なんだと、あの映像が強く認識させる。これはキリスト教の信者である国民に対してのメッセージとして、神のために神の祈りと共に、イランを攻撃した。神はこちら側についていて、神が支持している戦争であることをメッセージとして出したかった」と分析する。
トランプ氏は中間選挙に向け、支持率を気にしている。特に意識しているのが、全米人口の約25%を占めるとされるキリスト教福音派の存在だ。福音派とはプロテスタントの中でも聖書に厳格な宗派で、中丸氏によれば人工中絶はもちろん、ダーウィンの進化論を認めない立場の人もいるという。トランプ氏の「岩盤支持層」ともされる。
中丸氏は「福音派の中では最後、イスラエルでハルマゲドンが起きて、イエスキリストが再臨するという考え方がある。イスラエルが中東の中で、イランを弱体化させて、イスラエルの都合の良い形を作る。福音派にとっても理想だ」と解説する。
トランプ氏を支持するキリスト教福音派の一部の信者は、旧約聖書の教えにより「イスラエルをキリストの再臨に不可欠な存在」として、強く支持しているのだという。
冒頭の動画で牧師は、「神の下、1つの国家となった私たちは不可分で、全ての人に自由・正義が与えられる。イエス・キリストの御名によって。アーメン」と祈っていた。
「祈り」とは平和を願うものではないのか。私たち多くの日本人には理解に苦しむ光景だが、中丸氏はこれこそがアメリカの姿だという。「日本人にとってのアメリカは、基本的に戦後のアメリカを意味していると思うが、『やはりアメリカは一皮むけるとああなんだな』ということは、やはり今知るべきというか、知らされていることなのだろう」。
「はるばる海を渡って、『あそこの大陸に行けば、自分たちのやりたいことができる』と目指したのが、アメリカの始まりだ。彼らにとっては、『自分たちの理想の国をアメリカで作るんだ』というところから、キリスト教の自分たちの信仰が貫き通せるアメリカという感覚からすると、非常に彼らにとっては普通のことだ」(中丸氏)
一方、国際政治学者の舛添要一氏は「福音派支持者の中にも、『この戦争をどこまでやるのか』と懸念する声は一定数ある」と指摘する。「福音派であれ、ユダヤ人であれ、あんまり戦争が長引くことを誰も求めていない」。
ホワイトハウスでの祈祷について舛添氏は「アメリカはどんな国かと聞かれた際に、いつも『キリスト教のアメリカと答えている」という。「福音派がやっているアメリカの私立大学で、若い頃に教えていたことがあり、この雰囲気は非常によくわかる」。
「政治学の授業で1日1回、全学生を講堂に集めて、聖書のある一節を学芸会のように勉強させる。福音派は『悪魔と正義の味方の戦いだ』と言う。旧約聖書には『イスラエル・パレスチナはユダヤ人のものだ』と書いてあり、それをそのまま信じている。そして国民の4分の1が福音派で、その力は選挙において大きい。トランプ氏が選挙に勝ったのも彼らの力だ。今の状況は不思議なことではなく、私が大学で教えたのと同じことを毎日やらされていた、そんな感じだ」(舛添氏)
(『ABEMA的ニュースショー』より)