アメリカのトランプ大統領が排除したベネズエラのマドゥロ大統領と、イランの最高指導者ハメネイ師は、どちらも中国と緊密な関係を持っていた。ロシアのウクライナ侵攻が続くなか、大陸の一角を占める中国の動向に世界が注目している。
なかでも懸念されているのが、台湾有事だ。習近平国家主席は、どこまで台湾統一を進めるつもりなのか。『ABEMA Prime』では、識者の見解をもとに考えた。
■中国の悲願、台湾の統一

ジャーナリストの周来友氏は「イランは中国の同盟国ではなく、ハメネイ師も習氏の盟友ではない。イランは結局、中国を信頼していない。西側諸国に幻想も持っていたため、中国国内では『やられても自業自得だ』となる。ベネズエラの大統領連行には、落胆している部分はあるが、『中国でも同じようなやり方をできないのか』という期待もある」と語る。
東洋学園大学客員教授の朱建栄氏は、「中国はどのように外交的態度を決めるのか。国際ルールの面ではアメリカの行動を批判する一方で、国益で見れば石油や一帯一路などで、ベネズエラとも仲がいい。アメリカを批判しても、正面衝突はしないだろう。さすがにイランと戦っている最中に、トランプ氏の訪中はないのではないか」と話す。
中国の姿勢としては「台湾問題もあるため、国家の主権については一貫している。クリミア半島を含むウクライナの領土は、ロシア領と認めていない。今の中国経済は、国内だけではやっていけない。全世界を相手に、平和で国際的な貿易のルールを守るしかない」と説明する。
国際情勢が、台湾統一に与える影響について、周氏は「民族最大の目標として、統一はしてもらいたい。ただ、日本の専門家は『あと何年だ』と言っているが、中国の歴史は統一と分裂の繰り返しだ。100年単位の長い目で見れば、いつか統一するだろう」との見解を示す。
朱氏は「沖縄返還と同じ文脈だ」と見ている。「屈辱的な近代史で国土を取られたため、国家統一による現代化を悲願にしている。香港やマカオは返還されたが、台湾はまだだ。佐藤栄作元総理は『沖縄返還なしに戦後は終わらない』と言ったが、同様に中国国民は9割以上が『台湾統一で現代社会になる』と考えている」。
歴史をなぞりつつ、「日清戦争で日本が勝ち、中国が下関条約で台湾を割譲した。その後、日本が50年間支配し、4年間の内戦を経て分かれた。アメリカは当初、台湾統一に反対しなかったが、朝鮮戦争が始まると統一を阻害した」と振り返る。
そして、現代に目を向けて、「『2027年に武力統一する』という話があるが、これはウソだ。中国は基本的に平和統一を願っていて、中国人同士の戦いで死者を出したいとは思っていない。仮に武力で制圧しても、さらに国際社会で孤立する。経済制裁を受けると、発展できなくなるため、中国は平和統一に向けて、台湾と交渉し、民衆の意見も取り入れる」とした。
■台湾を中国に統一する意味

来日9年目のアパレルデザイナー、エンエンさんは、「小さい頃の教育もあり、『台湾は中国の一部だ』と認識してきた。自分の子たちには、ずっと外にいるより、家に帰ってもらいたい」と話す。
周氏は「統一しても、香港やマカオのように、ビザのようなものが必要になる。台湾からは自由に来られても、中国からは制限ができる。現状の“2つの制度”のままで、民主主義と社会主義の両方から、中国がより健全な国になるのでは」と述べる。
朱氏は「東京の住民には、沖縄返還しても、しなくても関係ない。ただ国としては、これがなくては戦後が終わらない。中国では、近代を超えるために、“台湾の復帰”が1つのシンボルになる」とし、周氏も「要は中国人のプライドだ。強くなった今、やはり統一に行き着く」と話す。
周氏は「台湾の制度が、中国の見本になればいい」と提案する。
朱氏は「1つの制度に、もうひとつが吸収されることは、“平和統一”とは言えない。国力を結集して、経済発展を進める現状では、すぐに平和統一はできない。2035年以降に先進国の仲間入りをすれば、政治的な民主化に向かわざるを得ない。台湾とは経済や他の部分が近づいて、初めて平和統一できる。武力統一も平和統一も4〜5年以内にはないと、中国は理解している」と見通す。
■日本はどう関わるのか

台湾情勢をめぐり、日本はどのような立ち位置を取るべきか。朱氏は「多くの中国国民は、日本が好きだ。首相は好きでなくても、北海道や温泉は好き。10〜20年前は、何かあればすぐ反日デモが起きていたが、今は『政治は政治』だ」と、中国の国民感情を紹介する。
王毅外相は「台湾問題は中国の内政だ。日本はどのような資格があって干渉するのか」と非難したが、この発言については「かつての日本が台湾を支配したことと、満州事変以来の歴史的な警戒心がある。トランプ氏と中国が台湾をめぐるディール(取引)をやろうとしている中、日本が存立危機事態を叫ぶのはおかしい、となった」と考察する。
しかしパックンは、「地政学的に当然だ。アメリカから台湾は遠いが、日本からはすぐそこ。もし台湾に中国という脅威が迫れば、反発しないといけない日本の考え方が、少しは理解できるのではないか」と反論する。
これに朱氏は「この地域の平和を望む、日本国民の気持ちはわかる。しかし、中国は台湾に対して、一方的な武力攻撃をしようとしていない。平和統一をしようとしているのに、なぜ日本は“台湾有事”を叫ぶのか」と返した。 (『ABEMA Prime』より)