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2026年3月24日 02:30

【報ステ解説】トランプ大統領「攻撃5日間延期」“タイムリミット目前”真意は

【報ステ解説】トランプ大統領「攻撃5日間延期」“タイムリミット目前”真意は
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アメリカのトランプ大統領は、日本時間23午後8時23分、イランと生産的な対話を行ったとして、発電所などに対する攻撃を5日間延期するよう指示したと明らかにしました。

トランプ氏『攻撃5日間延期』

アメリカ トランプ大統領のSNS
「過去2日間、アメリカとイランは、中東における両国の敵対関係の、全面的な解決について、極めて有意義な協議を行ってきたことを報告する。私は、イランの発電施設とエネルギーインフラに対する軍事攻撃を、5日間延期するよう戦争省に指示した」

週末は、自身の所有するフロリダのゴルフ場で過ごしたトランプ大統領。突如として、48時間のタイムリミットを設定したのは、このあとのことです。

アメリカ トランプ大統領
「イランがこの瞬間から48時間以内に、ホルムズ海峡を完全に開放しなければ、アメリカは、イラン国内のあらゆる発電施設を攻撃し、跡形もなく粉砕する。まずは、一番デカいところからだ」

投稿されたのは、日本時間22日午前8時44分。あと10時間余りで、タイムリミットの48時間を迎えるはずでした。

イラン国内の最大の発電所は、首都テヘラン近郊にあるダマバンド発電所。周辺には、ほかにも複数の発電所があり、攻撃を受ければ、テヘラン全域に甚大な影響が出るのは確実です。

トランプ政権の閣僚からは、強気の発言が出ます。

アメリカ ベッセント財務長官(22日)
「(Q.大統領は収束ではなく、拡大へ方針転換する)大統領は、その気になればいつでも収束できる。イランには、力でわからせるしかない。(Q.これは脅しの拡大であって、戦争の収束と矛盾しないか)当初から目標は明確だ。空軍と海軍を壊滅させ、ミサイルを破壊し、再建の余地を与えないこと。そして、核兵器の開発を阻み、国際社会での覇権を握らせないこと。その達成のために大統領は、いかなる手段も辞さないだろう」

イランは、徹底抗戦の構えです。国営テレビを通じて、攻撃を受ければ、必ず報復を行うと表明しました。

イラン軍司令部報道官(22日)
イラン軍司令部報道官(22日)
「脅迫が実際に実行された場合は、以下の警告措置が直ちに実施される。1、ホルムズ海峡は完全に封鎖され、発電所が復旧するまで封鎖されたままとなる。2、シオニスト政権のすべての発電所やエネルギーITインフラは、徹底的に標的とされる。3、アメリカ株を持つ域内の企業は、すべて完全に破壊される。4、アメリカ軍基地のある周辺国の発電所は、正当な攻撃目標とみなされる」

もっとも、専門家の間では、当初から実際の攻撃には踏み切れないのではないかといった指摘が上がっていました。発電所への攻撃は“禁じ手”だからです。

CNN安全保障アナリスト デビッド・サンガー氏(22日)
CNN安全保障アナリスト デビッド・サンガー氏(22日)
「(Q.トランプ氏の“48時間”発言は本気か)大統領自身が、つい先週までイスラエルに『手を出すな』と釘を刺していたのが、エネルギー施設で、それが問題だった。(Q.イランが折れる兆候は見られないが、イランがデッドラインを無視したら、トランプ氏の狙いが裏目に出るか)エネルギー施設への攻撃は、何よりジュネーブ条約で禁止されている。トランプ氏は、条約の抜け道を探すかもしれないが、やればアメリカは、まずい立場になる」

『イランと“全面解決”に向け協議』

そして、日本時間23日夜、トランプ大統領は、SNSに、発電所などに対する攻撃を5日間延期するよう指示したと投稿しました。

イランへの要求(アメリカ)

アメリカメディアによりますと、トランプ政権は、イランに対し『ミサイル開発計画を5年間停止すること』『ウラン濃縮をゼロにすること』『アメリカとイスラエルが、去年、爆撃した核施設を廃止すること』など、6項目を要求しているということです。

イランにとっては受け入れがたい要求にも思えますが、トランプ大統領は「極めて有意義な協議だった」と述べています。

イラン革命防衛隊のSNS

イランの革命防衛隊は、「トランプが折れた」とSNSに投稿しました。

CNNホワイトハウス担当 リプタク記者
CNNホワイトハウス担当 リプタク記者
「(Q.期限が少し延びました。協議はどうなっているのでしょうか)最も異例の投稿といえます。衝突が3週間続くなか、アメリカとイランの対話があったのか不明でしたが、大統領は対話が継続中と表明し、10分前まで存在を知らなかった。沈静化への外交ルートがある可能性が判明しました。問題は、アメリカが誰と交渉しているか。大統領は『話せる指導者らは殺害された』としていたのが、いまは『協議が継続中』と述べているのです」
外国為替市場

マーケットは直ちに反応。外国為替市場で、円相場は1円以上、円高方向に振れ、一時、158円台前半を付けました。一時、1バレル=100ドルを超えていた原油の先物価格は、80ドル台半ばに急落。23日の東京株式市場で日経平均株価は、1857円安で取引を終えていますが、トランプ大統領の投稿を受け、先物価格は、一時、2000円以上、値上がりしました。

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“徹底抗戦”イランの軍事力

しかし、これで直ちに緊張が緩和する訳ではありません。

地上部隊を派遣し、イランの原油輸出拠点であるカーグ島を占拠するという計画は、引き続き、検討されています。その場合、イラン側は、ペルシャ湾全体に機雷を敷設する構えです。

イランがこれまでない飛距離のミサイルを発射していた可能性があることも明らかになりました。

イスラエル ネタニヤフ首相(22日)
イスラエル ネタニヤフ首相(22日)
「イランは、4000キロ先のディエゴガルシアにミサイルを発射した。イランが欧州の奥深くまで狙う力があると警告してきた」
ディエゴガルシア島

狙われたとされるのは、インド洋に浮かぶイギリス領のディエゴガルシア島。アメリカ軍とイギリス軍の基地が置かれ、戦略爆撃機の拠点として、重要な役割を果たしている島です。

アメリカメディアによりますと、発射されたのは2発で、いずれも基地には命中しませんでした。

ミサイルの射程

しかし、問題はその射程。本当に4000キロも飛ぶのであれば、狙いをヨーロッパ側に向けた場合、パリやベルリン、ロンドンまでも含まれることになります。

ホラムシャハル4

イギリスメディアによりますと、発射されたのは、イラン側が、これまで最大射程2000キロと主張してきたミサイル『ホラムシャハル4』。ただ、このミサイルは、射程4000キロと推定される北朝鮮の『ムスダン』がベースになっているというのが、多くの専門家の見立て。それを、あえて2000キロに制限してきたのが、これまでのイランでした。

つまり、停戦協議が行われるその裏では、双方が軍事的な行動を激しくしているのが、いまの中東情勢。そもそも、停戦協議自体があったかどうかも確かではありません。

ファルス通信

イランのファルス通信は、情報筋の話として、トランプ大統領の投稿内容を否定し、アメリカとの直接的・間接的な連絡は、一切ないと報じました。イラン外務省は、トランプ大統領の発言について「エネルギー価格を引き下げ、自身の軍事計画のための時間稼ぎを目的としたものだ」とコメントしています。

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ホルムズ海峡封鎖めぐり応酬

48時間の警告から一転して、トランプ大統領はイランのインフラ施設への攻撃を5日間延期すると発表。背景に何があるのでしょうか。イラン情勢に詳しい慶應義塾大学の田中浩一郎教授、そして、ワシントン支局の梶川支局長に聞きます。

ワシントン支局 梶川幸司支局長

◆まず、ワシントン支局の梶川支局長に聞きます。

(Q.トランプ大統領が、イランとの対話が進展したことを受けて攻撃を5日間延期すると公表しましたが、本当に何らかの対話があったのでしょうか)

ワシントン支局 梶川幸司支局長
「どんな対話がなされたのか、詳細は全く不明です。ただ、トランプ大統領は、先ほど、CNBCの電話インタビューの中で、『イランとの協議は非常に激しいものだったが、実質的な成果が得られると期待している』と語ったそうです。 また、イランの現在の指導部について『特定の個人に依存する体制ではない』などとして、現状は『実質的な体制転換、レジームチェンジに等しい』と、記者に主張したそうです。現在の交渉相手が、戦争前に交渉に関与していた人物とは全く異なるというのが、その理由だとも説明しているようです。その理屈はともあれ、トランプ大統領が戦争の終結に向けて“出口”を模索していることの表れと言えます。ただ、イラン指導部の多くがイスラエルによって殺されていますので、本当に協議があったのかどうか、そして、あったとしても、一体、イランの誰と話しているのか、それは、実績に意味を持つのか。これは、不明のままと言えます」

(Q.交渉があるとしたら、どのような交渉になるのか。狙いは、いまのところ見えているのでしょうか)

ワシントン支局 梶川幸司支局長
「まずは、ホルムズ海峡の開放というのがあるわけですけれども、ニュースサイト『アクシオス』によりますと、アメリカはイランに対して、ホルムズ海峡とは別に、6項目の要求を突きつけているとされます。イランは過去の交渉で、これらのいくつかを拒否しているうえに、今回、このような戦争になっているわけですから、トランプ政権への不信感もあると思います。これ、簡単に進むかどうかはわかりません。一方、今週中に沖縄に駐留していた海兵隊2500人と、佐世保基地に配備されていた強襲揚陸艦が現場海域に到達するものとみられます。仮に、5日間で協議がまとまらない場合は、イランの石油輸出の拠点であるカーグ島などの上陸制圧作戦も視野に入ってくるかもしれません。ただ、この5日間という日程は、さらに延びる可能性も十分にあると思われます。トランプ大統領としては、ホルムズ海峡の主導権をイランが握っている以上は、戦争を手仕舞いにしたくてもできないという状況があります。こうしたトランプ大統領の状況を見て、イランが足元を見て、ホルムズ海峡で妥協する用意があるのか。そして、イスラエルとしては、できるだけ長く戦争を続けたいでしょうから、イランとの交渉を妨げようとするかもしれません。ですから、まだまだ先行きは不透明だと言えると思います」
慶應義塾大学 田中耕一郎教授

◆慶應義塾大学の田中浩一郎教授に聞きます。

イラン側の主張

トランプ大統領は交渉をしていると主張しているということですが、対するイラン側は「トランプ氏の発言は、エネルギー価格を引き下げ、自身の軍事計画のための時間稼ぎを目的としたものだ。緊張を緩和するための取り組みはあるが、我々は戦争を始めたわけではないため、アメリカが仲介役を務めるべきだと考えている」と主張しています。

(Q.トランプ大統領が5日間延ばすと言ったことについて、イラン側の受け止めはどう見ますか)

慶應義塾大学 田中耕一郎教授
「素直には受け止めないでしょうね。これまで何度も騙されてきていますし、あるいは、逆に言うと、トランプはいつも最後、怖気づくという類の表れなのかとも思いたくはなるでしょうが、逆に5日間と言っても2日後ぐらいに攻撃するかもしれないので、全く信用してないと思います。イラン外務省の声明にあったように、時間稼ぎをしているんじゃないか。例えば、それはトリポリが到着するまで、あるいはそのほかの用意ができるまで。例えば、紅海にいた空母『ジェラルド・フォード』が火災もあって、いま地中海のほうに引いているわけです。さらに、その先にクレタ島に入ってドック入りしなければいけないわけですから、東地中海でイスラエルに対する守りも欠けているので、そうなると、いま大西洋を横断しようとしている次の空母が来るまで、交代の空母が来るまでは、ちょっと身動きが取れないんだと思います。特に、イスラエルにとっても丸裸の状態で、イランの弾道ミサイルを自国のミサイル防衛網だけで守り切れることが、難しくなってきていると思われますので、だから、イスラエルももう少し時間を置いてほしいということも影響しているんじゃないかと思います」

(Q.ワシントン支局から報告があった電話インタビューに答えたという内容ですが、実質的な体制転換に等しくて、その戦争前に交渉していた人物とは違う人物と交渉をしていて、それなりの成果が得られているということですが、論理は通っているのですか)

慶應義塾大学 田中耕一郎教授
「トランプ大統領の頭の中にあるのは、ベネズエラと同じ、“ベネズエラ方式”だと思うんですよね。つまり、マドゥロ大統領夫妻を排除したけど、システムはそのまま残っている。だから、それをイランでも成し遂げたんだということで、自分もメンツが立つような格好。さらに言えば、体制転換ということをこれで果たしたので、イスラエルのネタニヤフ首相にも、もうこれ以上、攻撃をさせないように押し切ろうとしているんじゃないかという側面は見えますね」

(Q.トップを殺害したという段階で、実はもう体制転換はできていて、そこと交渉してという論理は、ある種、トランプ大統領の頭の中では成り立つのか)

慶應義塾大学 田中耕一郎教授
「成り立つ。自分のメンツもこれで保たれるということじゃないかと思います」

(Q.緩和のための取り組みはあるというイラン側の話はありますが、トランプ大統領と同じかわからないですが、何らかの接触があるということなのでしょうか)

慶應義塾大学 田中耕一郎教授
「そこは、ちょっと私も疑っていまして、イラン側の誰が交渉しているのかということに関して、梶川支局長がおっしゃっていましたけれども、一方で私が気になるのは、アメリカ側が、誰が交渉しているのかということです。ウィトコフ氏とクシュナー氏は、2月26日のジュネーブでの協議の内容をかなり曲解したのか、あるいは、意図的にねじ曲げて、トランプ大統領に報告していた可能性が高いとみられますので、イランが全く信用してないとも思います。だから、アメリカ側の交渉者も誰なのかよくわからないものだから、本当にこんな話があったのでしょうか?と疑いたくもなるような内容です」

(Q.イラン側がホルムズ海峡を完全封鎖するとか、機雷を敷設するといったような警告を出した後、時系列的にはトランプ氏が前言を翻した形になっています。こういったのも神経戦だとすれば、イラン側が揺さぶりのなか、自信を深めているということもあるのでしょうか)

慶應義塾大学 田中耕一郎教授
「揺さぶりが効いたかなとは思うかもしれませんが、これで慢心するほど、イランはトランプ氏のことを信用していないですよね。過去2回、すでに痛い目にあってますので、これで3回目騙されているようでは、もはや終わりだということだと思います」

(Q.イラン外務省の声明では、アメリカが仲介役を務めるべきだという文言も入っていました。何らか折り合える点があるとしたら、イランとしては何が折り合えるのでしょうか)

慶應義塾大学 田中耕一郎教授
「まず、しっかりとイスラエルを抑制するというか、首に鈴をつけろということだと思うんですよね。さらに、そこが破られるようだった場合には、アメリカに責任を取らせると。あるいは、アメリカが責任を持てということであろうと、私は推測しています。その中には、例えば、今回のことも含め、去年6月の攻撃のことも含め、賠償させろということだと思うんです。戦時賠償をきちっと取るということです」

(Q.アメリカが仲介役を務めるべきというのは、アメリカがイスラエルを抑えて、そのうえで戦争を終結させてほしいということですね)

慶應義塾大学 田中耕一郎教授
「そうですね。戦争が、さらに二度と起きないように、三度目が決して起きないように」

(Q.イランが実戦で、中距離弾道ミサイルを使ったという狙いはどこにあるのでしょうか)

慶應義塾大学 田中耕一郎教授
「これまでイラン側は、2000キロメーター以上の射程のものはつくらないということで、自主規制をしていたわけです。なので、試射実験も全部その範囲の中に収まっていたのですが、ここで4000キロもの到達距離を持つミサイルを発射したということは、一つは、アメリカに対してイギリスが基地の提供というか、使用を認めたということ。これへの警告が大いにあると思います。もう一つは、これまでこの距離の弾道ミサイルの発射をしたこともないので、試射実験も兼ねているんですよね。あと、イランは衛星を自ら打ち上げる能力を持っていますので、人工衛星の可能性から考えれば、それを流用・転用すれば、4000キロぐらいの弾道ミサイルはつくれたということでもあります」

(Q.当初、イランの軍事力が続くのは2週間程度ではないかと言っていましたが、それが4週目に入りました。イランが戦闘を続ける能力、それから今後の展開、どのように見ていますか)

慶應義塾大学 田中耕一郎教授
「私も、そこは間違えたというか、ここまで準備が整っていたことについては、ある種、驚いてもいます。ただ、徹底的に戦うぞということに関しては、自分たちの国を守るためなので、その意思が固いことは、はっきりはしていたんですけれども、しかしながら、これだけの備えがあったということ、さらに、4000キロも飛ばすものも用意していたということなどを考えると、去年6月にイスラエルによる先制攻撃を受けて、その後、アメリカのバンカーバスターでもやられたときの教訓を、彼らは一定の範囲の中で、次に備えていたんだなということがはっきりわかります」

(Q.いまの情勢の中で、5日間でこの戦闘が終結するというような兆候、どう見ますか)

慶應義塾大学 田中耕一郎教授
「まだそこまで時期が、機が熟しているとは思っていません。イスラエルはまだやるつもりですし、アメリカも、例えば、ここで中東に派遣している、あるいは、いま向かっているトリポリとかの揚陸艦が引き返したとか、増派を思いとどまったとか、そういう動きがあれば、イラン側も、ある程度、信用するでしょうけれども、その増派は依然として続いているので、やっぱり次の一手を打つための時間稼ぎじゃないかというふうに見るのが普通だと思うんです」
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