国際

日曜スクープ

2026年4月9日 17:00

「最悪の事態」寸前だった戦場…内情は? トランプ氏“イラン攻撃2週間停止”の行方

「最悪の事態」寸前だった戦場…内情は? トランプ氏“イラン攻撃2週間停止”の行方
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トランプ大統領が発表した、イランへの攻撃“2週間停止”。「ホルムズ海峡の即時、安全な開放」が条件とされる、停戦合意後イスラエルは、親イラン組織ヒズボラが拠点とするレバノンに大規模攻撃を実施した。協議の行方は予断を許さない。米国がイランの発電所などインフラを攻撃し、イランが湾岸諸国に報復する「最悪の事態」寸前だった戦場。戦闘はどこまで激化して、危険な状況に至っていたのか。

1)“インフラ破壊”宣言していたトランプ大統領 本気度どこまで

トランプ大統領は4月1日、「今後2週間から3週間のうちにイランに強烈な打撃を与え、『石器時代』へと引き戻す」と演説し、イランが戦闘終結に向けた協議で合意しない場合、発電所と石油施設を攻撃すると警告。さらに4日には、「時間は刻々と過ぎている。イランに地獄が降り注ぐまで48時間だ」と重ねて発言していた。

今村卓氏(丸紅経済研究所社長)は、こうしたトランプ氏の言動について、ホルムズ海峡の開放が念頭にあると分析する。

ホルムズ海峡封鎖により、イランはかなり有利な情勢になった。アメリカは、軍事力などの労力を使わずに、あるいは兵士などの犠牲を出さずに、これを解きたい。トランプ氏は、そのために言葉の戦いを仕掛け、この駆け引きで、海峡の開放を迫りつつ発電所やエネルギーインフラに攻撃をすると。イランとしては攻撃を受ければ大変な事態で効果的だとアメリカ側は考えていたが、イランの現体制は姿勢を崩さない。イラン側は、攻撃を受ければダメージも大きいが、おそらく湾岸諸国に報復をする。そうなれば、中東が火の海になってしまい、石油・ガス価格にどれだけの影響を与えるか。トランプ政権は、さすがにためらうのではないか。

小谷哲男氏(明海大学教授)は、トランプ政権内部で、発電施設などインフラへの攻撃を正当化する声があがっていたと指摘する。

「石器時代に戻す」という発言は、当初はブラフかと思っていたが、最近の政権内の話を聞いていると、どうも本気ではないかと。例えば、橋の攻撃に関して「この橋を使ってイランがミサイルを動かしているから、これは軍事施設で、正当な目標だ」と。あるいは、発電所についても「発電所で電気が作られて、イランはミサイル開発をする、場合によっては核開発をするから、これも軍事目標だ」という論調が増えている。ただし、橋や発電所を攻撃すれば、当然イランも報復するので、ガソリン価格がさらに上がる。結局トランプ氏はもう手詰まりで、何をやっても上手く行っていない。

イラン国内にはおよそ130〜150の発電所があるとされる。田中浩一郎氏(慶応義塾大学大学院教授)は、発電施設への攻撃を「戦争犯罪」と指摘していた。

(発電施設の分散化は)守るほうにとっても効率が良くない。トランプ大統領の発表はかなり眉唾な部分も含むとはいえ、イラン側の防空態勢が極めて脆弱な状態にあることに変わりがない。時間をかければどんどん潰されていく。これは、れっきとした戦争犯罪だ。
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2)上陸作戦の焦点になっていた「カーグ島」 米国が狙った事情

米軍の上陸作戦の焦点になっていたのが、ペルシャ湾の奥にあるカーグ島だ。イランの原油輸出量のおよそ9割を担う。米軍は3月13日、軍事施設にのみ攻撃を加えたが、今後、石油施設まで攻撃を拡大したり、上陸して占拠する事態はありうるのか。

今村卓氏(丸紅経済研究所社長)
制圧はできるかもしれないが、その後どうするのか。イランが反転攻勢に出てくる可能性があり、制圧後も守り続ける必要がある。その点を考えると、戦闘が益々エスカレーションする恐れがあり、アメリカ側もかなりためらいを持っている。しかし、準備はしっかりすることでイランに圧力をかけ、実行前に一時停戦まで進めたい。そういうオプションを用意している段階ではないか。
田中浩一郎氏(慶応義塾大学大学院教授)
イラン側にとってみれば石油基地を押さえられる痛手はあるが、カーグ島は戦略的にはほとんど価値がない。取られた後で、そこを袋だたきにすればいいとイラン側は考える。ホルムズ海峡の開放を狙うのであれば、ホルムズ海峡の出入り口の島が対象になるし、重要性もはるかに高い。一方で、アメリカ側の軍事的なリスクも、ホルムズ海峡の入り口の島を狙う方が高い。

小谷哲男氏(明海大学教授)は、戦闘機F15乗員救出の成功が上陸作戦の選択に影響を及ぼす可能性に注視した。

ここ数日の米軍の動きを見ても、アメリカ本土から、中東にかなりの輸送機が飛んでいくのが見えている。おそらく、あえて見せているのだと思うが、上陸に必要な装備なども運んでいる様子がうかがえる。 
今回、パイロットの救出作戦を行った場所は、イスファハンに近い。ミサイル基地や航空基地もある場所で救出作戦を行うことができたので、イスファハンの核施設にも降りられるのでは、と言い出す人もいると聞いている。島への攻撃よりも、濃縮ウランを押さえるほうに傾く可能性も出てきたとみている。トランプ大統領としては、ホルムズ海峡を開放する、濃縮ウランを押さえる、あるいはその両方を欲しいはずだ。
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3)米軍の上陸作戦「7つの島」攻略は困難か…日本政府の今後は?

米軍が上陸作戦に踏み切る場合、その成否のカギを握るのがホルムズ海峡にある7つの島とされてきた。7つの島は革命防衛隊が高速艇・ドローン・ミサイル・機雷敷設の拠点として利用しているとされる。特に注目されてきたのが、大トンプ島、小トンプ島、アブムサ島の3つの島だ。これらの島は、「固定型不沈空母」と呼ばれる。全般的に水深が浅いため、大型の軍艦やタンカーがそばを通らざるを得ず、容易に標的となる可能性がある。

小谷哲男氏(明海大学教授)は、現状の米軍の兵力ではこれらの島の攻略は難しいと分析していた。

地上作戦をするにあたって、これらの島すべて、あるいはいくつかを取ることは当然検討しているはずだ。ただ、実現は非常に難しい。まず空挺部隊を上から降ろしたとして、すぐに強襲揚陸艦から海兵隊が上陸して支援できるのか。目標が 1箇所ではない中、海兵隊の1部隊は到着し、もう1部隊は向かっている最中だが、それだけで十分なのかという問題もある。また、仮にこのうちの1つか2つの島を取ったところで、ホルムズ海峡が開放されることにはならない。今の10倍程度の兵力は集めないと難しいだろう。

田中浩一郎氏(慶応大学大学院教授)は、大トンプ島、小トンプ島、アブムサ島の3つは、イランとUAEの間で1971年から領有権問題が発生していることを指摘した。

この3つの島は、イランが実効支配したままになっているが、 UAE側は外交交渉に応じるようにずっと求めており、UAE を構成する首長国の一つ、ラス・アル・ハイマ首長国とシャルジャ首長国がそれぞれ領有権を主張している。UAE が参戦するのではないかという情報がここのところ出ているのは、3島の領有権問題との連動とみている。

今後の注目ポイントとして、今村卓氏(丸紅経済研究所社長)は、日本における官民一体の対応の必要性を挙げる。

攻撃開始となれば、当然原油価格が跳ね上がるようなエスカレーションになるので、果たしてそれにトランプ氏が耐えられるのか。厭戦気分になったり、やっぱりやるんだというところで揺れ動くと思う。そこをしっかり見極めて、ホルムズ海峡をどれだけの船がこれから航行できるのか、極端に悲観にも楽観にも振れない、今の時点でのベストな見通しをしっかり立てたうえで、どこで何が足りなくなるのかというフィードバックの態勢を官民協力して作って行くべきだ。

番組アンカーの末延吉正氏(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)も、日米両国政府の対応を注視する。

トランプ大統領と高市総理は非常にケミストリーが合うので、日米関係を固めながら、対イラン、対UAE、サウジとの関係を保ち、外務大臣、経産大臣も含め、日本政府全体として、民間企業とも情報を共有しながら、重層的に、どのような事態でも色々なカードを切れる形を構築していくことが重要だ。安倍政権に比べると、高市政権は同じ保守政権でも、個人商店としてやっている部分がまだ少しある。チームとして動くことが重要だ。
トランプ氏は、中国の習近平国家主席と大きな取引、ビックディールをしてでもイランを止めるというような、次元を変えていく動きが出ないと…。大国主義を振りかざすなら、事態を収めるところまで責任を持ってやるべきだ。

(「BS朝日 日曜スクープ」2026年4月5日放送より)

<出演者プロフィール>

今村卓(丸紅経済研究所社長。2008年から9年間、丸紅ワシントン事務所長。米国政治・国際経済・金融に精通)

田中浩一郎(慶応義塾大学大学院教授。在イラン大使館で専門調査員。国連政務官を経験。イランを中心に中東地域の安全保障など研究)

小谷哲男(明海大学教授。米国の外交関係。安全保障政策の情勢に精通。「日本国際問題研究所」研究主幹)

末延吉正(元テレビ朝日政治部長。ジャーナリスト。東海大学平和戦略国際研究所客員教授。湾岸戦争などで各国を取材し、国際問題にも精通)

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