アメリカとイランの、戦闘終結に向けた最初の協議は合意に至らず、トランプ大統領はイランへの海上封鎖を宣言した。近く協議再開をも示唆しているが、先行きは見通せない。『読む日曜スクープ』は、イラン核開発やホルムズ海峡封鎖など、両国の隔たりを分析しつつ、軍事オプションを含めた今後の焦点を探る。
1)米軍艦船がホルムズ海峡を通過 協議に合わせた狙いは?
4月11日、アメリカ中央軍は、2隻のミサイル駆逐艦がホルムズ海峡を通過し機雷除去作戦を開始したと発表。数日のうちに水中ドローンを含む追加部隊も作戦に加わるとされる。パキスタンでの、米国とイランの協議開始に合わせたタイミングでの、米軍の作戦開始。小谷哲男氏(明海大学教授)は米国の意図を以下のように読み解く。
齊藤貢氏(元駐イラン大使)は、イラン側の戦略を踏まえつつ分析する。
番組アンカーの杉田弘毅氏(ジャーナリスト/元共同通信論説委員長)も、イージス艦のホルムズ海峡通過を「大きな動き」と捉える。
2)バンス副大統領が問題視「イランの核兵器開発」 協議への影響どこまで
4月11日から12日未明にかけての、最初の停戦協議は合意に至らなかった。バンス副大統領は「イランに核兵器を開発しないという意思が見られなかった」としている。小谷哲男氏(明海大学教授)は、協議のポイントを以下のように分析。
今回の協議は、2015年にオバマ政権が結んだ核合意を否定するプロセス。より上のレベルでなければトランプ政権としては合意できない。そこが最後の最後までネックになったと思う。既に濃縮したウランの引き渡し、あるいは希釈、加えて今後ウランの濃縮を行わないこと。NPT(核不拡散条約)では平和利用は認められているが、それも諦めろと。これはアメリカにとって絶対的なレッドラインで、今回もそれを伝えたのだと思う。
一方、齊藤貢氏(元駐イラン大使)は、イラン側の視点から、協議のポイントを分析する。
アメリカは「核兵器」と言うが、真摯に議論するつもりだったのか。イランは、真偽は別にして、公式には核兵器は持たないと宣言している。「私は核兵器を持ちません」と言っている人に「核武装を許さない」では、その時点で議論が成立しない。
もうひとつ、初日の議論が21時間となったのをどう捉えるか。外交官の経験から見ると、協議初日は、まず議題を決める。それに21時間かかったことは、核開発や賠償金を話し合うのか、入口の段階でもめていたというのが私の理解だ。
杉田弘毅氏(ジャーナリスト/元共同通信論説委員長)は、米国とイランの「時間軸の違い」を指摘。
また、既にかなりのインフラが壊されているので、インフラへの総攻撃をほのめかされても、その犠牲を恐れるゆえに譲歩することもない。イラン側は、場合によっては、長期にわたってアメリカとの敵対関係を続ける構え。一方のアメリカ側はできれば5月、6月ぐらいまでに終わりたい、そのために今回、何らかの見通しをつけたい。交渉スタート地点でのそもそもの時間軸の相違があった。
3)イランが協議に臨んだ本音は…トランプ政権どうする“今後”
交渉でイラン側の代表を務めたガリバフ国会議長は、革命防衛隊の空軍司令官の経験があり、国会議長を長く務めてきた。しかし、齊藤貢氏(元駐イラン大使)は、「ガリバフ氏が代表になった段階で、イラン側の交渉の自由度はかなり制約を受けた」と指摘。
イラン側はホルムズ海峡を開放せずに管理したいが、海峡封鎖の継続には、国際社会から批判が集まる。そこで、協議を利用して「私たちは前向きに対応したが、アメリカが拒否したのでできなかった」と戦術的に対応した。そういう意味では、今回の協議の目的をイラン側は達成している。
対するアメリカ側は、交渉に臨むにあたりどのような判断をしていたのか。小谷哲男氏(明海大学教授)は、今後の展開も含め、以下のように分析する。
協議後、トランプ氏が投稿したのは、この協議で合意に至らなかった場合のアメリカのオプションの 1つに、イランに対する海上封鎖があるという記事のリツイート。海上封鎖を考えているというメッセージを出した。軍事的な圧力を再び強める可能性は十分ある。
杉田弘毅氏(ジャーナリスト/元共同通信論説委員長)も、軍事オプションの可能性を排除しない。
トランプ政権としては、制裁と軍事圧力を最大限にかけながら交渉をしてイランの核開発を全面放棄させるのがメインシナリオ。それができなかった場合のセカンドシナリオが軍事オプション。現在、一旦休戦となり外交が始まったが、どうにも水と油のような大きな隔たりがあるとなれば、軍事オプションに戻っていく可能性がある。米国が軍事力を使うことで外交目的を達成することは、これまでもあった。
(BS朝日「日曜スクープ」2026年4月12日放送より)
<出演者プロフィール>
齊藤貢(元駐イラン大使。2018年〜20年駐イラン大使。オマーン大使も歴任。著書「イランは脅威か」(岩波書店)。関西学院大学客員教授)
小谷哲男(明海大学教授。米国の外交関係・安全保障政策の情勢に精通。「日本国際問題研究所」研究主幹)
杉田弘毅(ジャーナリスト。21年度「日本記者クラブ賞」。明治大学特任教授。共同通信でワシントン支局長、論説委員長などを歴任。著書に「国際報道を問い直す-ウクライナ紛争とメディアの使命」(ちくま書房)など)





