国際

日曜スクープ

2026年4月24日 11:00

幻のホルムズ海峡「開放」宣言…イラン政権で内部対立 “強硬派”にトランプ政権は?

幻のホルムズ海峡「開放」宣言…イラン政権で内部対立 “強硬派”にトランプ政権は?
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トランプ大統領は4月21日、イランとの停戦を延長すると発表。「イランから提案が出され、協議が何らかの形で決着するまで」としており、「イラン政府は深刻な分裂状態にある」との見方を示している。イランの指導部は、ホルムズ海峡の「開放」をめぐり、内部対立が表面化していた。『読む日曜スクープ』は、イランの内部対立に焦点を当て、今後を分析する。

1)ホルムズ海峡でイランが船舶“攻撃” エスカレーションまたも

イランは、アラグチ外相のホルムズ海峡「開放」表明から一転、その翌日4月18日に海峡付近の船舶を“攻撃”した。松本太氏(前駐イラク大使)は、「明らかにアメリカに対するシグナル」と読み解く。

今回の攻撃は人命に影響はなく、また比較的軽微な被害だったと聞いているが、これはイラン側からの警告だ。アメリカがホルムズ海峡を逆封鎖したうえに、4月15日にはベッセント長官がイランに対するEconomic Fury(経済的怒り)と命名した経済制裁強化を発表したことで、イランの革命防衛隊から大きな反発が出ている。それが本質的な問題で、革命防衛軍の幹部たちは、米国の措置に対抗する必要があると考えている。そのために、さらに封鎖をしっかり実行しようと、高速艇などを使用し、砲撃までする行為に出た。 
実は、4月18日に起きたインド船籍の船への攻撃で興味深いコミュニケーションが交わされている。革命防衛隊から通過のクリアランスを得ていたのに、今、攻撃を受けていると。これは、一度OKは出したものの、この局面になって革命防衛隊で何らかの判断があり、一切をストップしたことを意味する。

鈴木一人氏(東京大学公共政策大学院教授)も、米国との協議再開が焦点となる局面での船舶“攻撃”だったことを指摘する。

イランの攻撃は、2回目の協議を前に、アメリカ側が逆封鎖や経済制裁などを仕掛けてきたことに対する反応だ。イランにとって最強のカードは、やはりホルムズ海峡の封鎖。自分たちの最強のカードをここで使って、「封鎖を解いて欲しかったら停戦協議に参加しろ」「イランの条件を飲め」と圧力をかけるための方策と考えることができる。 
今、ホルムズ海峡で何が起こっているかと言うと、イランが通した船は通るが、アメリカは止める。アメリカが通そうと思っている船はイランが止める。誰も外に出ることができない状態が作られている。

小谷哲男氏(明海大学教授)は、アメリカ側の受け止めを以下のように分析した。

4月10日〜11日、アメリカとイランの間で協議が行われたが、アメリカは、協議に出てきたイランの代表団におそらく決定権はなく、実際の決定は革命防衛隊が絡む形でないと無理だろうと見ている。今回の交渉は、圧力をかけて要求を飲ませるやり方でもあるとは思うが、もう一つ、革命防衛隊はどこまで譲歩できるのか、譲歩するつもりはあるのかを見るという意味もおそらくある。だから、あえて今、イランに対して強硬に出ている。アメリカとしては、やはり革命防衛隊は容易に譲歩しそうにないと考えている。
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2)イラン政権の内部対立が表面化「革命防衛隊の幹部の額には…」

ホルムズ海峡“封鎖”を改めて強化するイラン。アラグチ外相の「開放」宣言は何だったのか。アラグチ外相は4月17日、「レバノンでの停戦合意を受けて、ホルムズ海峡を通るすべての船舶の航行は残りの停戦期間中 イラン港湾・海事機関がすでに発表したルートにおいて完全に開放されることが宣言された」とSNSに投稿。この発信に対しイラン国内からは、批判の声があがった。革命防衛隊に近いタスニム通信は「欠陥のある不完全なツイートだ。このツイートは十分な説明なしに投稿されたもので、海峡通過の条件や仕組みの詳細に関して多くの曖昧さを生み出し広く批判を招いた」と痛烈に批判。停戦協議をめぐりイラン内で交渉推進派と強硬派の意見が割れているとされる。

松本太氏(前駐イラク大使)
アメリカのイランに対する政策、逆封鎖や経済制裁が強まれば強まるほど、イランの体制内における亀裂は深まらざるを得ない。経済合理的に考えれば、もちろん早く終戦した方がいいに決まっている。しかし、強硬派は体制の生き残りという観点から対応を考え、軟弱な姿勢では自分たちの体制すべてが崩壊しかねないと危惧している。これは例えば 1945年の日本の状況と極めて似ていて、この2つの立場を一致させるのは難しい。例えば、ガリバフ国会議長は、カメレオンのように立場を変える人物で、もちろん最初の協議では、交渉を推進するためにイスラムバードに行ったわけだが、現時点では極めて強硬派に近い発言をしている。アラグチ外相は 17日の(「開放」宣言の)投稿を最後として、この48時間一切投稿できていない。これは体制内の明らかな亀裂を物語っている。 
強硬派の顔ぶれは、革命防衛隊のバビディ総司令官、国家安全保障最高評議会のゾルガドル書記、ムサビ航空宇宙軍司令官らが代表的な人物。彼らの顔を見ると、敬虔なムスリムだとわかる。額にあざがあるのは礼拝をよくするから。敬虔なムスリムでイスラム革命体制を守ろうとしている。

協議の場に出てくるのは交渉推進派であるものの、その背後で決定権を持つのは強硬派とされる中、トランプ大統領はどのような戦略で交渉に臨むのか。

小谷哲男氏(明海大学教授)
この1週間ほどの大きな変化は、アメリカ側がモジタバ氏はやはり健在だと考え始めていること。当初は、意識不明で実際には決定に関わってないのではと見ていたが、1回目の協議が決まる段階で、やはりモジタバ氏が最終的な決断を下していると。推進派、強硬派、そしてモジタバ氏が一体どう考えているのか、その辺りをまずアメリカは見極めたい。そのためにパキスタンという仲介国、そして(同国の)ムニール元帥が革命防衛隊にも顔を出せることに期待している。当然アメリカは、交渉推進派としか会うことはできない。実際に決定権を握っているであろう強硬派とコミュニケーションを取るには、今はパキスタンを介せざるを得ない。

3)米国が“逆封鎖”解く選択肢は?「やはり交渉のメインは…」

強硬派が発言力を強めているとされるイラン。イラン側がホルムズ海峡を開放すると宣言したタイミングで、米軍も逆封鎖を解除するという選択肢はなかったのか。

小谷哲男氏(明海大学教授)
4月10日〜11日の、最初の協議がまさに始まる日に、アメリカ側はまずホルムズ海峡にイージス艦を2隻入れている。協議をやれば当然、イラン側はホルムズ海峡を押さえていることをテコに強気に出てくることがわかっていたので、ホルムズ海峡を封鎖しても無駄だというメッセージだった。実際に協議が始まると、想定通りホルムズ海峡を押さえていることでイランが強硬な姿勢を示したので、アメリカ側もイランに対する海上封鎖を始めた。この先も協議をする上で、ホルムズ海峡はテコにならないとのメッセージを出し続ける必要がある。
イランがホルムズ海峡の開放に応じたとしても、この交渉のメインは核問題。核問題を議論するにあたって、アメリカとしてはイランに対する海上封鎖というカードを持っておきたい。アメリカ側はホルムズ海峡の封鎖解除を考えなかったと思う。

ホルムズ海峡の開放にも関連するイランの核問題。ウラン濃縮の停止期間に加え、イランが既に保有している濃縮ウランの扱いが焦点だ。米国は、濃縮ウランすべての撤去を求めるが、鈴木一人氏(東京大学公共政策大学院教授)は「実現にはイランとの協力が不可欠」と指摘する。

イランが所持しているとされる高濃縮ウランは、440キロあると言われているが、その半分のありかが分かっていない。この残りの半分をどう回収するのかという問題がある。トランプ大統領が、掘削機を使ってでも土の中に隠したものを探し出すと言明しているが、イランとの協力が不可欠なだけに、合意は相当難しい。

番組アンカーの末延吉正氏(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)は、国際情勢が日本国内の政治に及ぼす影響にも注視する。

ホルムズ海峡の問題は直ぐには収まらない。情勢を追いながら、一方で、国民生活をどうやって守っていくのか。今回の国会では皇室典範の改正に結論が出る可能性もあるし、国家情報局設置の問題もある。国際情勢と国内の生活がリンクしている時代なだけに、政治をよくウオッチしながらそのあたりを日々きちんと追っていかなければいけない。

(「BS朝日 日曜スクープ」2026年4月19日放送)

<出演者プロフィール>

松本太(前駐イラク特命全権大使。一橋大学教授。著書に「世界史の逆襲」(講談社)など)

鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授。2013〜15年、国連安保理イラン制裁専門家パネル委員。著書に「資源と経済の世界地図」(PHP研究所)など)

小谷哲男(明海大学教授。米国の外交関係・安全保障政策の情勢に精通。「日本国際問題研究所」研究主幹)

末延吉正(元テレビ朝日政治部長。ジャーナリスト。東海大学平和戦略国際研究所客員教授。永田町や霞が関に独自の多彩な情報網を持つ。湾岸戦争などで各国を取材し、国際問題にも精通)

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