14日、アメリカ・トランプ大統領と中国・習近平国家主席による米中首脳会談が北京で開催される。トランプ大統領の訪中は9年ぶりであり、世界がその行方に注目している。この会談に先立ち、「ABEMA Prime」では、外交、経済安全保障、そして国際情勢の専門家を交え、両国の思惑と落としどころについて議論が交わされた。
■9年ぶりの訪中、トランプ氏の狙いは

今回の訪中において特徴的なのは、テスラのイーロン・マスク氏やエヌビディアのジェンスン・フアン氏をはじめ、米大企業のトップ16人が同行している点だ。この顔ぶれについて、キヤノングローバル戦略研究所の峯村健司氏は次のように分析する。
「今回、トランプ氏の目的はただ1つ、できるだけ中国にアメリカの製品を買ってもらうこと。だからこそ、これだけの経済団を連れていった。トランプ氏の支持率が相当下がっている中、とにかく何かやっているという成果を出したい。中国にたくさん買ってもらったという絵を出したがっている」。
これに対し、ひろゆき氏はアメリカ国民の反応について「中国がテスラの自動車を何台買うと言ったところで、アメリカ国民が喜んで支持率が上がるとは思えない。何かそれなりに大きな約束をして帰るつもりではいると思うが」と疑問を呈した。
特に注目されるのが、当初は同行予定がなかったとされるエヌビディアのジェンスン・フアン氏の参加だ。経済安全保障に詳しい井形彬氏は、半導体輸出規制の観点からその意図を読み解く。
「最先端ではなくても、2番目くらいに新しい半導体を売るとなれば、バイデン政権の政策からかなり踏み込んだ形になる。ただし、最先端のものを作れる半導体の製造装置に関しては、引き続き貿易をさせない、輸出させない、投資規制を入れることで止めていく。釣ってきた魚はあげるが、魚の釣り方は教えないようなやり方で、ちゃんとアメリカ儲かっていると見せつつ、安全保障上のレッドラインを越えるようなことはさせないバランスを取ろうとしている」。
経済と安全保障が交差するAI分野も大きな議題となる。米アンソロピック社のAI最新モデル「ミュトス」が中国に半年から1年で追いつかれるという懸念がある中、米中2国間での協議が進む可能性が指摘されている。井形氏は、この対話の危うさについて言及する。
「今、AIで一番進んでいる国は圧倒的にアメリカ。中国と対話が始まること自体は悪くないが、そこに日本やヨーロッパが入ってこない。他の国は全部排除されるとなると問題だ」。
■台湾問題を巡る「密約」の懸念とレッドライン

中国側にとって最大の関心事は台湾問題だ。李強首相は「台湾問題は越えられない第一のレッドライン」と明言しており、トランプ氏に対して「台湾独立反対」の表明を求めている。ここで浮上するのが、米中間の「密約」の可能性だ。峯村氏は歴史的な背景から警鐘を鳴らす。
「台湾=密約の歴史だ。1970年代にアメリカと中国が国交を回復する協議があって、当時、キッシンジャー氏は台湾のTの字も言っていなかったが、後に公開された機密文書を見たら、台湾の話をしまくっていた。しかも譲歩しまくりだった。今回も、アメリカや中国が、会談後に発表した話を信じていいのか、検証しなければいけない」。
さらに峯村氏は、中国側の具体的な狙いについても言及した。
「中国の人に話を聞くと、とにかく台湾。1に台湾、2に台湾、3が台湾だ。今回、本当にトランプ氏が何らかの台湾に関する譲歩、もしくは何か譲るような、これまでのスタンスと違うことを言ってくれれば、もうそれで勝ちだと中国側も捉えて割り切っている。台湾の武器売却をやめるとか、延期すると言われるだけで、台湾がぐらついてしまう」。
一方、井形氏は「密約の匂わせ」が持つ外交的意味を分析した。
「密約は秘密。密約のままなら、会談が終わった後も結局わからない。ここで何がポイントかというと、密約の匂わせだ。なんですよね。台湾をビビらせることで、他の同盟国<パートナー国にも、アメリカの言うことを聞いていないと見捨てるかもしれないと見せていることになる」。
■イラン情勢と中国の外交カード

緊迫するイラン情勢についても、米中首脳会談の重要な論点となる。トランプ氏は「第一にイランについてじっくり話したい」と述べる一方で、「イランは我々が完全に掌握している」と強気な姿勢も見せている。中国側の立場について、ひろゆき氏は次のように指摘した。
「イランに関しては、中国の武器を使っているとか、陸路で石油をイランから中国に持っていけたりするので、そこをシャットアウトしてしまうとイランも困る。イランに対して対処をしようというのが、中国側として1つ、アメリカに譲歩できるものだ」。
峯村氏は、中東における中国の影響力と、今回の会談での立ち回りを予想する。
「中国にとってみれば、イランはずっと、対アメリカに対して一番強力な外交カードと言われてきたので、これはフルで使ってくるだろう。実際にも、仲裁に入っていると言われるパキスタンはパペット(操り人形)で、裏で動かしているのは中国。この仲裁がうまくいけば、トランプ氏も『ありがとう、習近平はいい奴だ』となる」。
パックン氏はイラン側の事情を考慮し、事態は容易には動かないと見る。
「中国はたぶん協力すると思う。ただしイラン政権も、自分たちの条件が満たされないままは、休戦には持ち込まないと思う。アメリカは中間選挙もあるし、内政、国民の民意を意識しなければいけないが、中国にもイランにも、それはない。国民が苦しんでいても、体制転換を求められたら絶対に応えない。だから結局、アメリカが事実上の降伏というか、イランが条件を飲むまでは対立が進むと思う」。
議論の終盤、日本への影響について井形氏と峯村氏は強い危機感を示した。
井形氏は「台湾について何か譲歩されると、台湾だけではなく日本も困るし、アメリカと同盟を組んでいる国がみんな、本当にアメリカを信じられるのかとなってしまう。日本及びアメリカの同盟国はみんなトランプ氏に対して、いくらでもディールしていいが、台湾は切っていいチップではないと強く働きかけているはずだ」と述べる。
また峯村氏も「中国の立場から見ると、一番面倒くさいと思っているのはアメリカとアメリカの同盟国。これを切り崩す一番のカードが台湾だと思えば、意地でも取りに行く。一気にドミノ倒しのように日本との同盟も揺らぐとなると、中国が一気にオセロみたいに全部ひっくり返せるわけだから、台湾にこだわっている」。
ひろゆき氏は、今回の会談については、中国有利に進むとして議論を締めくくった。
「トランプ氏が、中国に厳しいことをする道はない気がするし、どちらかというと中国の『勝ち確』な気がする。中国に強く出られないという結論だとすれば、中国がどう喜ぶかということになり、やはり台湾に関する何かを渡すことになると思う。それは台湾の人も分かっているだろうし、『台湾有事は日本有事』と言っていた日本政府は、その時どうするのか」。 (『ABEMA Prime』より)