国際

日曜スクープ

2026年5月22日 12:00

米中首脳会談後の“世界”台湾めぐるトランプ発言の衝撃 AI覇権「今年が分岐点」

米中首脳会談後の“世界”台湾めぐるトランプ発言の衝撃 AI覇権「今年が分岐点」
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米中首脳会談では、トランプ大統領が台湾への武器売却について、習近平国家主席と協議した。歴代の米政権が中国との協議を拒んできただけに、日本も含めた米国の同盟国に衝撃が走る。『読む日曜スクープ』は、米中で覇権を争うAI開発の最先端も踏まえ、大国間のパワーバランスを読み解く。専門家は、2年後の2028年を見据え、「今年が分岐点」と分析する。

1)米中首脳会談 台湾めぐるトランプ大統領“発言”の衝撃

5月15日、米中首脳会談からの帰国中、トランプ氏は「習氏から話を持ち出された(台湾への)武器売却についても協議した。近いうちに判断する」と発言した。米国の歴代政権に受け継がれてきた「6つの保証」では、米国政府は台湾への武器売却に際して中国政府と協議しないとしている。トランプ氏は、1982年以降、歴代政権が踏襲してきた「原則」を破った形だ。

ジョセフ・クラフト氏(経済・政治アナリスト/東京国際大学副学長)は、「アメリカの信頼や威信が失墜しかねない」と懸念する。

トランプ氏はアメリカの従来の対中政策を全く理解していない。なぜ、民主党・共和党、超党派でこの保証を守ってきたのか。台湾の、アジアにおける位置づけや、アメリカの安全保障に持つ意味を理解できていない。今回の行動は、自分が求めるディールのためには、台湾の安全や自由をも売るという姿勢と映る。これではアメリカの国際的な信頼や威厳は失墜しかねない。 
議会では超党派でこの保証を法制化する動きが出ている。未だまとまっていないが、議会、米国内から批判が出てくる。バンス副大統領やルビオ国務長官ら閣僚が台湾の重要性を理解させ、そして議会、特に下院の中国委員会が反発できるかどうか。もの言えぬ議会と閣僚ではトランプ氏の暴走が加速するだけだ。

津上俊哉氏(現代中国研究家/日本国際問題研究所客員研究員)もトランプ大統領の発言に驚きを隠さない。

最初に思ったのは、台湾の人たちは「非常に有効な交渉材料だ」というトランプ氏のセリフを、どのような思いで聞いたのだろうかと。台湾だけでなく同盟国全体が、アメリカによる安全保障に対する疑念を高めた。台湾への武器売却で、中国に譲歩する代わりにトランプ氏は何を得たいのか。大豆をもっと買えということではないだろう。一番考えられるのは、中国がイランを説得する引き換えに、武器売却で譲歩するというディールだが、中国は米国の代理人になってイランを説得する役割は引き受けないから、簡単には成立しないだろう。いずれにしても、とんでもないことに手をつけた。

峯村健司氏(キヤノングローバル戦略研究所上席研究員・中国研究センター長)は、このままでは台湾問題を中心に中国ペースが続くと指摘する。

1982年の「6つの保証」は大変重要で、当時のレーガン大統領が台湾への武器売却を減らそうとして、動揺した台湾の人たちを安心させるために確約した。今回、トランプ氏がこれを破る形で中国との交渉材料にしたが、先ほど、台湾当局の高官とやり取りをした際も、相当なショックを受けていた。「頼清徳政権として正式なコメントを出していないのは、ある意味“絶句”に近い衝撃を受けているから」と言っていた。 
中国側は、9月24日に習近平氏が訪米することを約束した。これは中国外交の原則では相当異例だ。4ヶ月も前に次の日程を入れることは通常しない。このままいけば台湾問題をもっとディールできる、アメリカ側が妥協してくるという手ごたえがあるからこそ、次の首脳会談を約束したのだろう。日本も含め、同盟国、有志国さらには議会も含めて、トランプ氏を羽交い締めにしてでも、台湾問題で妥協しないように釘を刺すための逆転打を打たないと大変なことになる。
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2)習近平国家主席の“対米”強硬姿勢 可能になった“要因”とは

米中首脳会談の中で、習近平国家主席は「台湾問題は適切に処理できなければ、両国は対立衝突し、危険な境地に追い込む」と厳しい言葉を発した。ジョセフ・クラフト氏(経済・政治アナリスト)は問題視する。

私から読むと、これは“脅迫”だ。初めて中国の国家主席が武力を示唆し、アメリカの大統領に突きつけた。それに対しトランプ氏は何も言えなかった。あの場では、アメリカの中国政策は全く変わらないと突き返すべきだった。アメリカとしての最大のカードが台湾であるにもかかわらず、相手が譲歩する前にこちらから譲歩してしまった。アメリカの威厳とアジアのパワーバランスが変わった瞬間だった。20年先にもし中国がアジアを席巻しているのであれば、「この日がその始まりだった」と振り返ることになる。危機感を募らせている。

津上俊哉氏(現代中国研究家)は、米国が追いこまれた不利な状況を、昨年の関税引き上げ競争から分析する。

中国からレアアースの反撃があり、昨年の関税引き上げ競争は中国に軍配が上がった。しかもその後、2つの出来事があった。ひとつは、米最高裁で“相互関税”が違法とされたこと。「いざとなればまたかけるぞ」という脅しが効かなくなった。さらにもうひとつ、イラン戦争で、アメリカ側の立場が非常に悪くなっている。トランプ氏にとって不利な出来事が加わった状況での米中首脳会談となった。

峯村健司氏(キヤノングローバル戦略研究所)も、昨年からの流れの中で、イラン攻撃とトランプ氏の思惑を読み解く。

前週までワシントンで、トランプ政権の関係者と意見交換を重ねた。複数の人物によると、今回の習近平氏との首脳会談で、どれだけ中国を追い込むかということを、昨年末からトランプ氏は考えていたそうだ。
中国にレアアースの輸出規制によって追い込まれてカードがない中、交渉カードを作ろうとしたのが、ベネズエラ侵攻だ。ベネズエラは、習近平氏が掲げる「一帯一路」政策に加わっており、中国と強い関係がある政権を替えると。これが成功し、今度はイランだと。中東における中国の友好国に親米的な国家を作り、中国をぐっと追い込む作戦だった。しかし、イラン攻撃で思うような成果を出せない中、自分が使うはずだったイランというカードを逆に中国に使われてしまった。これが全てだ。もし仮にイランが上手くいっていたら、今回の米中首脳会談もトランプ政権が思い描いた通りになり、ある意味中国の封じ込めはできた。
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3)米中『AI覇権争い』も台湾問題に直結 安全保障を揺るがす課題

今回の米中首脳会談では、AI開発も重要な課題になった。米アンソロピック社が開発した最新AI「クロード・ミュトス」は、システムの脆弱性を見つけ攻撃する能力が高い。専門性を持った人間の何十倍もの速さで自律的に脆弱性を発見できるとされる。

アンソロピック社は「2年後の2028年、AIが国家戦略技術になる」と指摘する。峯村健司氏(キヤノングローバル戦略研究所)は「まさに今年が分岐点」と警鐘を鳴らす。

中国は国内の相当な資源をAI開発につぎ込んでいる。習近平政権の考え方は、AIイコール軍事。相当早い段階から、ドローンや無人機だけではなくて、いわゆる軍の司令部機能にもAIを採用しており、巻き返しを図るだろう。
先日、来日したアメリカのAI最先端企業の幹部と意見交換をしたが、「米中のAIは、現段階では、アメリカが数か月から1年ほど先行しており、アメリカの最も重要な軍事的優位性だ。ただ、追いかける方が流用も可能で有利だ。いつ追い抜かれるかわからない」と言っていたのが印象的だった。
2028年は習近平国家主席の3期目の任期が終わる。習近平氏は3期目が終わるまでに台湾問題を解決したいと党内で約束していると聞いている。まさにAIの趨勢は、台湾有事も含めた安全保障に直結する。日本がアメリカの同盟国として、アメリカのAI開発に、限定的であってもコミットすることは、我が国を守る上でも非常に重要だ。

ジョセフ・クラフト氏(経済・政治アナリスト)も台湾情勢に関連づけて、AI開発を支える半導体製造に言及した。

中国による台湾統一は、現時点ではTSMCを手中にすることを意味する。アメリカは半導体の製造自体が不可能になり、中国が一気に世界を席巻する。にもかかわらず、容易に台湾を交渉カードに使うトランプ氏の浅はかさが非常に怖い。

番組アンカーの末延吉正氏(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)は、日本の役割を強調する。

アメリカはこれまで、台湾をめぐり、あいまい戦略を取りながら、「6つの保証」を要石として、中国に振り回されないよう超党派で守ってきた。この意味をトランプ氏が本当に理解しているのか、皆が今回疑問を抱いた。かつて安倍氏がトランプ氏に様々な見解、意見を打ち込んだように、高市政権もトランプ氏が間違えないよう意見交換することが大切だ。台湾の今後も含め、今が分かれ目。政府にはしっかり動いてもらいたい。

(「BS朝日 日曜スクープ」2026年5月17日放送より)

<出演者プロフィール>

津上俊哉(現代中国研究家 日本国際問題研究所客員研究員。元経産官僚。在中国大使館参事官など要職を歴任。著書「米中対立の先に待つもの」(日本経済新聞出版)など)

峯村健司(キヤノングローバル戦略研究所上席研究員・中国研究センター長。ワシントン特派員も経験し、米中両国に人脈を築く。近著に『台湾有事と日本の危機』。『中国「軍事強国」への夢』も監訳。中国の安全保障政策に関する報道でボーン上田記念国際記者賞受賞)

ジョセフ・クラフト(経済・政治アナリスト 東京国際大学副学長。投資銀行などで要職を歴任。米政治経済の情勢に精通。米国籍で日本生まれ)

末延吉正(元テレビ朝日政治部長。ジャーナリスト。東海大学平和戦略国際研究所客員教授。永田町や霞が関に独自の多彩な情報網を持つ。湾岸戦争などで各国を取材し、国際問題にも精通)

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