米中首脳会談では、トランプ大統領が台湾への武器売却について、習近平国家主席と協議した。歴代の米政権が中国との協議を拒んできただけに、日本も含めた米国の同盟国に衝撃が走る。『読む日曜スクープ』は、米中で覇権を争うAI開発の最先端も踏まえ、大国間のパワーバランスを読み解く。専門家は、2年後の2028年を見据え、「今年が分岐点」と分析する。
1)米中首脳会談 台湾めぐるトランプ大統領“発言”の衝撃
5月15日、米中首脳会談からの帰国中、トランプ氏は「習氏から話を持ち出された(台湾への)武器売却についても協議した。近いうちに判断する」と発言した。米国の歴代政権に受け継がれてきた「6つの保証」では、米国政府は台湾への武器売却に際して中国政府と協議しないとしている。トランプ氏は、1982年以降、歴代政権が踏襲してきた「原則」を破った形だ。
ジョセフ・クラフト氏(経済・政治アナリスト/東京国際大学副学長)は、「アメリカの信頼や威信が失墜しかねない」と懸念する。
議会では超党派でこの保証を法制化する動きが出ている。未だまとまっていないが、議会、米国内から批判が出てくる。バンス副大統領やルビオ国務長官ら閣僚が台湾の重要性を理解させ、そして議会、特に下院の中国委員会が反発できるかどうか。もの言えぬ議会と閣僚ではトランプ氏の暴走が加速するだけだ。
津上俊哉氏(現代中国研究家/日本国際問題研究所客員研究員)もトランプ大統領の発言に驚きを隠さない。
峯村健司氏(キヤノングローバル戦略研究所上席研究員・中国研究センター長)は、このままでは台湾問題を中心に中国ペースが続くと指摘する。
中国側は、9月24日に習近平氏が訪米することを約束した。これは中国外交の原則では相当異例だ。4ヶ月も前に次の日程を入れることは通常しない。このままいけば台湾問題をもっとディールできる、アメリカ側が妥協してくるという手ごたえがあるからこそ、次の首脳会談を約束したのだろう。日本も含め、同盟国、有志国さらには議会も含めて、トランプ氏を羽交い締めにしてでも、台湾問題で妥協しないように釘を刺すための逆転打を打たないと大変なことになる。
2)習近平国家主席の“対米”強硬姿勢 可能になった“要因”とは
米中首脳会談の中で、習近平国家主席は「台湾問題は適切に処理できなければ、両国は対立衝突し、危険な境地に追い込む」と厳しい言葉を発した。ジョセフ・クラフト氏(経済・政治アナリスト)は問題視する。
津上俊哉氏(現代中国研究家)は、米国が追いこまれた不利な状況を、昨年の関税引き上げ競争から分析する。
峯村健司氏(キヤノングローバル戦略研究所)も、昨年からの流れの中で、イラン攻撃とトランプ氏の思惑を読み解く。
中国にレアアースの輸出規制によって追い込まれてカードがない中、交渉カードを作ろうとしたのが、ベネズエラ侵攻だ。ベネズエラは、習近平氏が掲げる「一帯一路」政策に加わっており、中国と強い関係がある政権を替えると。これが成功し、今度はイランだと。中東における中国の友好国に親米的な国家を作り、中国をぐっと追い込む作戦だった。しかし、イラン攻撃で思うような成果を出せない中、自分が使うはずだったイランというカードを逆に中国に使われてしまった。これが全てだ。もし仮にイランが上手くいっていたら、今回の米中首脳会談もトランプ政権が思い描いた通りになり、ある意味中国の封じ込めはできた。
3)米中『AI覇権争い』も台湾問題に直結 安全保障を揺るがす課題
今回の米中首脳会談では、AI開発も重要な課題になった。米アンソロピック社が開発した最新AI「クロード・ミュトス」は、システムの脆弱性を見つけ攻撃する能力が高い。専門性を持った人間の何十倍もの速さで自律的に脆弱性を発見できるとされる。
アンソロピック社は「2年後の2028年、AIが国家戦略技術になる」と指摘する。峯村健司氏(キヤノングローバル戦略研究所)は「まさに今年が分岐点」と警鐘を鳴らす。
先日、来日したアメリカのAI最先端企業の幹部と意見交換をしたが、「米中のAIは、現段階では、アメリカが数か月から1年ほど先行しており、アメリカの最も重要な軍事的優位性だ。ただ、追いかける方が流用も可能で有利だ。いつ追い抜かれるかわからない」と言っていたのが印象的だった。
2028年は習近平国家主席の3期目の任期が終わる。習近平氏は3期目が終わるまでに台湾問題を解決したいと党内で約束していると聞いている。まさにAIの趨勢は、台湾有事も含めた安全保障に直結する。日本がアメリカの同盟国として、アメリカのAI開発に、限定的であってもコミットすることは、我が国を守る上でも非常に重要だ。
ジョセフ・クラフト氏(経済・政治アナリスト)も台湾情勢に関連づけて、AI開発を支える半導体製造に言及した。
番組アンカーの末延吉正氏(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)は、日本の役割を強調する。
(「BS朝日 日曜スクープ」2026年5月17日放送より)
<出演者プロフィール>
津上俊哉(現代中国研究家 日本国際問題研究所客員研究員。元経産官僚。在中国大使館参事官など要職を歴任。著書「米中対立の先に待つもの」(日本経済新聞出版)など)
峯村健司(キヤノングローバル戦略研究所上席研究員・中国研究センター長。ワシントン特派員も経験し、米中両国に人脈を築く。近著に『台湾有事と日本の危機』。『中国「軍事強国」への夢』も監訳。中国の安全保障政策に関する報道でボーン上田記念国際記者賞受賞)
ジョセフ・クラフト(経済・政治アナリスト 東京国際大学副学長。投資銀行などで要職を歴任。米政治経済の情勢に精通。米国籍で日本生まれ)
末延吉正(元テレビ朝日政治部長。ジャーナリスト。東海大学平和戦略国際研究所客員教授。永田町や霞が関に独自の多彩な情報網を持つ。湾岸戦争などで各国を取材し、国際問題にも精通)





