国際

日曜スクープ

2026年5月28日 18:00

ウクライナがドローンで対ロシア反撃“加速”AI駆使で戦場は…米テック企業の意図

ウクライナがドローンで対ロシア反撃“加速”AI駆使で戦場は…米テック企業の意図
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ウクライナは粘り強くロシアへの反撃を続ける。飛躍的な進化を遂げているドローンを駆使しており、最新型には人工知能、AIも搭載されている。実は、ロシアの侵攻直後から、米国のAI関連企業もウクライナ支援に乗り出していた。ただ、戦争でのAI活用は、米国のイラン攻撃でより鮮明となっている。

1)ウクライナがドローンで反撃 最新型はAI搭載も

ウクライナは5月20日夜、ロシアの占領下にある、東部ドネツク州のドローン操縦士訓練施設と、南部ヘルソン州のロシア連邦保安庁司令部を攻撃し、150人を超える死傷者を出したと主張した。いずれもドローンを活用した攻撃とされる。

小野圭司氏(防衛研究所主任研究官)は、ウクライナのドローンの飛躍的な進化を指摘する。

ウクライナのドローン攻撃は質も量も、この戦争が始まって以来急激に拡大した。ロシアによるウクライナ侵攻が始まった当初は、年間5000機と言われていたウクライナのドローン生産量が現在では年間300万から600万機とも言われ、この数年間で非常に伸ばした。当初はラジコンのような無人機を使っていたが、今では長距離飛行も可能で、電波妨害にも耐性が備わるなど高性能化している。人工知能を使い自律飛行できるドローンも出てきている。

小谷哲男氏(明海大学教授)は、ウクライナ軍のドローン専門司令部に注視する。

つい先日、ワシントンでの会議があり、ウクライナの最前線でどのような戦闘が行われているのか、ウクライナ軍関係者も参加していて話を聞いた。オフレコの部分が多いが、ひとつ大きいのは、2年前にウクライナ軍がドローン専門の司令部を作り、陸軍、海軍、空軍などと同じ軍種の一つにドローン部隊を位置づけた。このドローン専門の司令部がドローン作戦について様々な新しい考え方を打ち出してきた。しかも、陸軍や空軍などとも連携をしている。さらに、ウクライナの軍と民間企業は、この4年以上ずっと連携を続けてきて、イノベーションを起こし、ドローンの能力を飛躍的に高めた。加えてAIなども使って司令官の意思決定を支えるシステムができた。ドローンを有効活用できる態勢が整い、目に見える形で効果を上げ始めている。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、「ウクライナはAI搭載ドローン『ホーネット』や、中距離攻撃ドローン『FP2』などの配備を増やし、ロシアのドローン部隊、兵たん・指揮所・防空システム・倉庫などの標的を攻撃している。その結果、ロシアは前線作戦の支援が困難になっている」と報じた。中でも最新AI搭載ドローン「ホーネット」は、AIを使って目標の識別、分類、優先順位づけができるという。どういうことなのか。

小野圭司氏(防衛研究所主任研究官)
ロシア側はドローン攻撃を防ぐために様々な手立てを用意しており、その一つが妨害電波による通信の遮断だ。人工知能搭載型ドローンは、通信遮断時にも自律飛行をして目標に近づくことができる。さらに、戦闘車両に草木を巻き付けて偽装した場合も、偽装を見破り、敵の攻撃目標だと判別することも可能だ。一方で、こういった高性能な人工知能搭載型ドローンは高額となり、従来の5倍から10倍とされる。部品点数も増え、部品供給のサプライチェーンも用意しておく必要がある。それでも軍用のミサイルに比べれば価格は100分の1で、費用対効果はまだまだ大きい。
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2)米AIデータ解析企業がウクライナ支援 見返りは“データ提供”

2022年、ロシアによる侵攻が行われた直後にキーウでゼレンスキー大統領とアメリカのAIデータ解析企業「パランティア社」CEOのカープ氏が極秘会談を行い、システムの無償提供を約束。見返りにアメリカのAI企業はウクライナの4年間の戦闘データを入手できることになったと考えられている。

さらにパランティア社は「メイブン・スマート・システム」を開発。このシステムは、衛星画像・ドローンの映像・レーダーデータなどを一つに統合。標的を分類して使用兵器を推奨し、攻撃パッケージを即時に生成するとされており、米軍のイラン攻撃に用いられた。その結果、イラン攻撃では作戦開始後24時間で1000以上の標的が設定された。小谷哲男氏(明海大学教授)は、ウクライナでのデータ蓄積がこのシステムに結び付いていると指摘する。

もともとはグーグルが関わっていたが、途中でパランティア社に替わった。パランティア社はウクライナでの戦場データを持っており、それが最終的な開発で活かされたことは間違いない。とりわけ、ドローンを多用すると周波数が混線する。その中で、いかに安定的に使うかがウクライナで課題として見えてきて、それが「メイブン・スマート・システム」に反映されていると言われている。

小野圭司氏(防衛研究所主任研究官)は、ウクライナと米企業の関係について、ウクライナのITリテラシーの高さを指摘した。

開戦当初からアメリカの大手IT企業はウクライナ支援に入っていた。マイクロソフト、Google、オラクルのような大企業も即座に支援を申し出て活動に入り、人工知能関係のスタートアップ企業も、様々な人工知能を提供しウクライナを支援してきた。
支援提供を受けても、受けた側が使いこなすことができなければ意味をなさないが、ウクライナにはITの素地があり有効活用できた。ロシアの侵攻が行き詰まった大きな要因の一つだ。
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3)“AIによる戦争”に警鐘…アンソロピック社は米政府から排除

進化するAI戦術だが、戦争への使用に警鐘を鳴らすAI企業も。「クロード・ミュトス」の開発で知られる米アンソロピック社は2025年7月、2年間国防総省に自社のAIモデルを提供するとして、最高2億ドル(約310億円)の契約を締結。ただし、自社AIの使用について、「米国人を対象とした大規模監視に使用しない」「攻撃の実行まで最後に判断する完全自律型兵器については使用しない」という2つの制限を盛り込んだ。これに対し、国防総省側は制限条項の撤廃を要求。両者の意見は食い違い、米政府はアンソロピック社を政府機関から排除するに至った。

番組アンカーの杉田弘毅氏(ジャーナリスト/元共同通信論説委員長)は、この攻防について以下のように分析をした。

アンソロピック社のダリオ・アモデイCEOは、もともとOpenAIにいた人で、ChatGPTはダリオ・アモデイグループが開発したと言われている。OpenAIは公共目的の組織という形でスタートしたが、アモデイ氏はAI開発においては信頼性や制御可能性を重視したが、開発を急ぐ現CEOのサム・アルトマン氏と対立。アモデイ氏は結局袂を分かち、世界最強のAI企業であるアンソロピックを創設することとなった。
アモデイ氏は今年1月『技術の思春期』という長文のブログを発表。その中で「AIは自分の欲望を持っている」「AIは人間を騙す」と指摘している。彼らは自社の実験結果をもとにしたそうした懸念を基に、完全自律型兵器は使わない、国民監視には使わないという2つの制限を決めた。当初、ペンタゴンは彼らを猛烈に批判していたが、アンソロピック社が抜けた後に入ったOpenAIも、基本的にはアンソロピック社が提示した2つの制限と同じような条件でOKとしている。AIの使用に制限を設ける考えが主流になってきているのではないか。
アメリカのITコミュニティの中でも特にパランティア社は、「西側の同盟」を企業目的として強く打ち出し、「ウクライナは西側のために戦っているのだから、我々が助けなければ」との姿勢を示す。「だからこそ強権国家の中国とはビジネスをしない」と、中国に非常に厳しい姿勢だ。これはアンソロピックも同様で、アモデイ氏はトランプ政権が中国にエヌビディアの半導体を売ることも批判する。
アメリカのITコミュニティには色んな考え方の人々がいて、新しいものをどんどん作って全部使えばいいという人だけではない。日本も彼らの得る結果を分析して、独自のAI開発・使用の制限を考えていく必要がある。

こうした中、トランプ大統領はAIの監督監視を強化する大統領令への署名を延期した。

小谷哲男氏(明海大学教授)
ベッセント財務長官が中心となってこの大統領令を起案した。ミュトス登場の衝撃を受け、今後新しいAIを開発するときは、義務ではないが、アメリカ政府の承認を得るというのが主な内容だ。財務当局からすれば、監視しておかないと大変なことになるというところだが、テック系の人たちからすると、政府の規制が強まるので反対する。トランプ大統領は揺れている段階だ。

小野圭司氏(防衛研究所主任研究官)は、「問われるべきは我々のAIに対しての姿勢」と強調する。

AIは軍事的な利用だけではなく、民生分野でも利用価値が高い。軍隊なら指揮官、企業であれば経営者のような人たちが、どのように使うのか。単に経営や軍隊の専門家としてではなくて、人間社会として、どのように向き合うのかという思想家的な感性を持つべきだ。さらに、使う人だけに任せきりにするのではなく、社会全体で問うていかなくてはいけない。人工知能を人間社会が抱き込むような形で接していくことが必要だ。

(「BS朝日 日曜スクープ」2026年5月24日放送より)

<出演者プロフィール>

小野圭司(防衛研究所主任研究官。AI、無人機などの防衛テックに関する情勢に精通。安全保障をはじめ、戦争・軍事の経済学や戦争経済思想を研究。著書に「防衛産業の地政学」(かんき出版)など)

小谷哲男(明海大学教授。米国の外交関係・安全保障政策の情勢に精通。「日本国際問題研究所」研究主幹)

杉田弘毅(ジャーナリスト。21年度「日本記者クラブ賞」。明治大学特任教授。共同通信でテヘラン支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを歴任。著書に「国際報道を問い直す-ウクライナ紛争とメディアの使命」(ちくま書房)など)

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