サッカーワールドカップでの予選敗退をめぐり、韓国国内では批判の声が過熱しています。
国民の怒りのワケについて見ていきます。
■韓国サッカー改革へ“政治介入”FIFA制裁の懸念も
代表監督やサッカー協会へのバッシングが続く韓国で、7月6日、新たな動きがありました。
ワールドカップの1次リーグ敗退や監督選任をめぐる批判などを受け、大韓サッカー協会のチョン・モンギュ会長が辞表を提出。
2013年1月の就任から13年半にわたる長期政権に幕を閉じました。
次期会長選出までは、副会長が代行を務める予定です。
「韓国サッカーの発展と栄光だけを考えて走り続けてきた。すべての栄光と成果は選手とファンのおかげで、不足と誤りは私1人の責任」と説明しています。
チョン前会長は、2024年のホン・ミョンボ氏の監督選任の際に、チョン前会長ら協会幹部の不当な介入があったという疑惑が指摘されています。
またチョン前会長とホン前監督は高麗大学の先輩・後輩という関係にあり、『身内びいきの人事』という批判も上がっています。
韓国政府は、サッカー界の改革にも乗り出しました。
7月6日、韓国サッカーの競争力を高めることなどを目的とした『Kサッカー革新委員会』を発足。
共同委員長は、サッカー元韓国代表で3度ワールドカップに出場したレジェンドのパク・チソン氏などです。
「今回のワールドカップを通じて、これまで通りにやってはいけないことが露呈した。これを契機に、韓国サッカーが前進し、良い影響を与えられる協会、韓国サッカーになってほしい」
「政府の干渉や介入と捉えられたくない」として、予定されていた共同委員長ではなく、1人の委員として参加していく意向を示しました。
チェ長官が共同代表を降りた背景です。
ワールドカップの敗退直後には、チェ長官は自身のXで、
『韓国サッカーのみじめな失敗がなぜ起きたのか。国民的な疑惑を究明する』と投稿し、大韓サッカー協会への特別監査の実施を表明していました。
ただ、こうした動きに対し、韓国の経済メディア『マネートゥデイ』は、
『監査に留まらず、政府がサッカー運営そのものに深く介入するのでは』と懸念を示しています。
また、監査が人事や選挙、運営方針などに広がれば、FIFAとの関係でも論争が起きかねないとも指摘しました。
なぜFIFAと論争が起きかねないのでしょうか。
FIFAは政治権力や政府が協会運営に過度に関与することを禁じています。
過去には、政府が介入したという理由で、FIFAによる警告や資格停止処分を受けた国もあるということです。
過去、どのような国が処分や警告を受けたのでしょうか。
これまで政治介入によってFIFAに処分などを受けた国です。
ネパールでは、2026年3月にネパール国家スポーツ協議会がネパールサッカー協会の執行部を一時停止処分をしたことを受け、FIFAが改善を求めました。
しかし、十分な措置が取られなかったため、6月に資格停止に踏み切りました。
資格が停止されたことで、FIFA加盟国との公式試合ができず、国際大会への参加資格も停止されました。
またFIFAからの育成資金も凍結されたということです。
■国民怒りのワケ『期待と失望』『競争社会』『エリートの特権』
なぜ、ここまで大きな炎上騒動となったのか、そのワケを見ていきます。
サッカー韓国代表が炎上した理由です。
韓国サッカーを30年以上取材している、スポーツジャーナリストの慎武宏さんによると
・サッカーに対する高い期待と失望
・過度な競争社会による『勝利至上主義』
・エリート、特権への強い反感
これらが重なって激しい批判になったということです。
理由の1つ目、『サッカーに対する高い期待と失望』についてです。
サッカーに対する高い期待のきっかけは、2002年に行われた日韓ワールドカップで、当時の韓国代表はベスト4に躍進。
この様子を数多くの国民が街頭で応援していました。
この時、地域や世代を超えて国民が一つになったと言われています。
当時の国内の様子です。
写真のように国民が赤いユニフォームを着て、街頭から韓国代表を応援しました。
準決勝のドイツ戦では各地で合わせて700万人が街頭応援に参加したということです。
批判が過熱する理由2つ目は、国内の激しい競争です。
韓国では『インソウル』という言葉があります。
これは若者がソウルにあるソウル大学、高麗大学、延世大学を目指すことをいい、これらの大学に入学できれば大企業への就職に有利とされています。
しかし、現在は良い大学に入るだけではダメで、資格や留学経験、外見、親のコネも大企業への就職には必要とされていて、スペックを積む競争を子どものころから強いられているということです。
競争に拍車をかけているのは韓国国内での就職難です。
2024年の新卒の就職率は69.5%で、大学を卒業してもすぐに就職できない人が多くいます。
また、長期間(6カ月以上)失業している人は増加していて、2026年4月時点で10万8000人。
2025年と比べて3万人増加しています。
これは最初の仕事を探す若年層の待機期間が長期化していることが原因ということです。
理由3つ目が、スポーツの特権です。
その1つ目、兵役免除です。
韓国では成人男性に約2年間の兵役義務がありますが、スポーツ選手はオリンピックでメダルを獲得(銅メダル以上)するか、アジア大会で金メダルを獲得すると兵役が免除になります。
「兵役免除は国民にとってかなり大きな特権。 それゆえ結果が出ないと大きな批判にさらされる」ということです。
スポーツの特権2つ目が、報酬です。
韓国の一般会社員の平均年収は約450万円。
今回リーグ敗退となった韓国代表ですが、選手1人あたり約840万円の報奨金が大韓サッカー協会から支給されるということです。
さらにホン・ミョンボ前監督の推定年俸は、約4億円と海外の分析サイトが報じていますが、これについて大韓サッカー協会は否定しています。
エリート・既得権益への批判もあります。
韓国のサッカー協会の前会長、チョン・モンギュ氏は現代(ヒョンデ)財閥の創業者の甥にあたる人物で、現代自動車の元会長を務めた人物です。
名門・高麗大学の出身で財閥の一員です。
その影響から大韓サッカー協会は旧現代グループから5年間で約390億円受け取っているとされています。
財閥についてです。
主な財閥はサムスン、SK、現代自動車、LG、ロッテなどで、この5グループの売上は韓国のGDPの約40%を占めています。
財閥は創業家の一族が経営を支配していることが多く、中小企業が育たず就職難や格差につながっていると言われています。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2026年7月7日放送分より)











