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報道ステーション

2026年8月20日 00:02

“ネタニヤフ首相への逮捕状”に対する妨害か…トランプ政権 ICC・赤根所長に制裁

“ネタニヤフ首相への逮捕状”に対する妨害か…トランプ政権 ICC・赤根所長に制裁
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アメリカのトランプ政権が、ICC(国際刑事裁判所)の赤根智子所長を制裁対象に指定しました。なぜこんな事態になったのでしょうか。

「国際刑事裁判所は腐敗」と主張

オランダ・ハーグに本部を置くICCは、戦争犯罪などに関わった個人を裁く国際機関です。この数年に起きた戦争当事国の指導者に逮捕状を出してきました。

ロシアのプーチン大統領。ウクライナの占領地から子どもを連れ去った戦争犯罪の疑いです。イスラエルのネタニヤフ首相。民間人への攻撃を意図的に指示した戦争犯罪、生命や健康といった基本的人権を奪った人道に対する罪の容疑です。

プーチン大統領

“法の支配”を守る番人であるICC。そのトップに日本人として初めて立ったのが赤根所長でした。

赤根智子所長
国際刑事裁判所 赤根智子所長
「“大統領だから”とか“非常に力のある国だから”とか、そういう考慮は一切なされていません。我々は中立に刑事司法の立場から、市民に対する被害・市民社会に対する大きな被害に対して立ち向かう」

その赤根所長にトランプ政権が制裁を加えました。

ルビオ国務長官の声明
ルビオ国務長官の声明
「国際刑事裁判所は腐敗し、致命的なまでに政治化された超国家的な裁判で、悪意をもって権限を乱用している。我々は国家主権に対するICCの攻撃を容認しない」

クレジットカードも“停止”

アメリカは、ネタニヤフ首相らの逮捕状に関わった検察官らをすでに制裁対象にしてきました。制裁は金融システムから事実上締め出し、クレジットカードやアマゾン、グーグルのアカウントが停止となる厳しいものです。

マメ・マンディアイ・ニアン副検察官
国際刑事裁判所 マメ・マンディアイ・ニアン副検察官
「アメリカとは無関係の契約でハイブリッド車に乗っていますが、クレジットカードが必要で、アメックスだったために、突然、車の充電もできなくなりました。テロリストや麻薬密売人と一緒にすべきではない」
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1期目から対立 もくろむ解体

そもそもICCに加盟していないアメリカ。トランプ政権は1期目から国際機関への敵意をあらわにしてきました。

トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「アメリカにとって、ICCには管轄権も正当性も権限もない。ICCは、あらゆる国の国民に対して、ほぼ普遍的な管轄権を主張し、正義・公平性・適正な手続きを侵害している」

第2次政権が発足した直後、逮捕状を出された“盟友”が訪米すると、ICC関係者に制裁を科す大統領令に署名しました。赤根所長は国連総会で、その脅威を訴えていました。

トランプ大統領
国際刑事裁判所 赤根智子所長
「ICCや、その職員に対する攻撃や脅迫、威圧的な措置は続いていて、司法の遂行に深刻な脅威をもたらし続けています」

トランプ政権は攻勢を緩めることなく、先月始めたのがICC解体キャンペーンです。

アメリカ ルビオ国務長官
「ICCとその一派は我が国に戦争をしかけている。彼らの武器は弾丸やミサイルではなく“国際法”とやらだ。国境警備隊は凶悪犯を排除し、海兵隊は命がけで国を守っている。国を守る行為が、他国の判事に“犯罪”として訴追されかねない」

「力が支配する世界となってしまう」

トランプ政権は同盟国にも同調を求めています。ただ、日本は拠出額が世界最多のICC加盟国です。今年1月、赤根所長の表敬を受けた高市総理は「国際社会における法の支配の維持・強化に向けて、ICCをしっかり支援していく」と伝えていました。しかし、今回の制裁については、こう述べるのみでした。

高市早苗総理大臣
高市早苗総理大臣
「大変、残念に思っています。これからも米国を含む関係国と意思疎通を継続しながら対応していく」
高市早苗総理大臣

赤根所長は去年出した著書で危機感をつづっていました。

『戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない』(文春新書)
「もしICCが完全につぶれてしまったら(中略)世界は「戦争で勝った側が負けた側を裁く」状態へと逆戻りしてしまうかもしれない。そうなれば法の支配ではなく、力が支配する世界となってしまう」
『戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない』(文春新書)
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ICC赤根所長に米制裁 なぜ

ICCは、2度の世界大戦や旧ユーゴスラビア、ルワンダでの虐殺行為への反省から、2002年にオランダに設立されました。国際法に基づき、集団殺害(ジェノサイド)や人道に対する罪、戦争犯罪などを犯した“個人”を裁く、初の常設の国際裁判所です。世界125の国と地域が加盟していますが、アメリカやロシア、中国は当初から加盟していません。

ICC

ICCは捜査や裁判は行うものの、警察や執行機関を持たないため、容疑者の拘束は加盟国が協力して行います。

ICC

ICCは、2023年にロシアのプーチン大統領への逮捕状(ウクライナ侵攻での戦争犯罪の疑い)、2024年にはイスラエルのネタニヤフ首相へ逮捕状(ガザ地区での戦争犯罪や人道に対する罪の疑い)を出しました。2025年にはフィリピンのドゥテルテ前大統領が実際に逮捕されました(麻薬対策における自国民殺害、人道に対する罪の疑い)。フィリピン警察が逮捕し、ICC本部のあるオランダへ移送され拘留中、11月に裁判の予定です。

ICCに加盟していないアメリカが、圧力を強める背景には何があるのでしょうか。国際刑事司法に詳しい、立命館大学の越智萌准教授に聞きました。

ICC
立命館大学 越智萌准教授
「最も考えられるのは、イスラエルに対する捜査と、ネタニヤフ首相への逮捕状に対する妨害。そこで制裁の“クライマックス”として、ICCの顔である赤根所長への強力な制裁に踏み切ったのではないか。制裁により、赤根所長は来月ニューヨークで開かれる国連総会に参加できず、ICCとしてはアピールの場を失って痛手となります。一方でアメリカは『ICCを締め出した』と親イスラエル勢力に対し、最も効果的なパフォーマンスになる」
ICCと日本の関わり

これに対して、高市総理は「残念だ」というコメントにとどまっています。日本とICCの関わりは大きく、日本は最大の資金拠出国です。2025年は約46億円/年を拠出しています。そして、継続的に裁判官を輩出していて、2024年に赤根判事がトップの所長に選出されています。

ICCと日本の関わり
立命館大学 越智萌准教授
「“日本人だから守る”ということは政府の立場ではできない。国際機関の活動には独立性が求められる。日本は“法の支配を尊重する立場”だからこそ、ICCの加盟国としてサポートするという立場が重要ではないか」
大越健介
「赤根所長は『戦争犯罪と闘う』と題した著書の中で、組織の中にロシアのスパイが潜入しようとしたことや、トランプ政権から執拗(しつよう)に圧力をかけられた体験をつづっています。そして『私たちの活動には、戦争の惨禍などに苦しむ世界中の被害者たちの希望が託されていることを忘れないでほしい』と訴えています。日本政府は立場上『残念』の一言で片付けるかもしれませんが、法の支配がもたらす恩恵を知る市民の1人として考えた場合、私たちは今、国際刑事裁判所に対する理不尽な制裁に反対し、その独立性と中立性を支持することを決して躊躇(ちゅうちょ)してはならないと考えます」
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