アメリカのトランプ政権は24日に「最も壊滅的な経済作戦」「経済Dデイ」と呼ぶ、イランに対する大規模な経済制裁を発表する見込みだ。中身は不明だが、アメリカメディアは、イランと貿易を続ける国々を対象としたものになるのではないかとしている。
イランが経済制裁に反発することは必至だ。しかし、どういった反発のシナリオが想定されるのだろうか。
アメリカとイスラエルの攻撃以降、イランで力を握っている軍やその関係者の動向を見ていると、口先だけでは済まさないという積極的に攻撃する軍事方針がうかがえる。湾岸諸国の港やインフラをイランが先制して攻撃するというシナリオも考えられるだろう。(テレビ朝日外報部 大原武蔵)
「やられたらやり返す」からの転換
イランのこれまでの軍事的な姿勢は明確だった。「やられたらやり返す」。攻撃された対象に見合う、同じような対象を攻撃してきた。イランのエネルギーインフラが攻撃されれば、周辺の湾岸諸国にある発電所や海水淡水化施設を攻撃し、軍事施設が攻撃されれば、湾岸諸国のアメリカ軍基地やアメリカ軍が駐留する基地を攻撃した。あくまで「『やられたら』やり返す」だった。
しかし、その方針は変化しているようだ。ここ数日の軍関係者の発言を振り返ってみる。
かつては革命防衛隊の総司令官で、現在は最高指導者モジタバ師の軍事顧問を務めるヤヒヤ・ラヒム・サファビー氏は22日の「防衛産業の日」に際して、「イランの脅威に対する対応は、先制的で計算されたものでなければならない」との声明を発表した。「イランの対応は受動的なものであってはならない」とも強調している。
「先制攻撃」と「攻撃を上回る報復」
先制攻撃は、他の軍関係者からも示唆されている。イランの正規軍(アルテシュ)のモハンマド・アクラミニア報道官は22日、国営通信のインタビューで、「イランの軍事方針は、防御的な姿勢から攻撃的な姿勢へと移行している」と述べた。攻撃的な姿勢を「必ずしも先制攻撃を意味するわけではない」としつつ、7月17日のヨルダンへの攻撃を例として挙げた。
覚書の署名から約1カ月後の7月17日、イランは未明から砲火にさらされていた。アメリカ中央軍による13日連続での攻撃の6日目だった。南部ホルムズガーン州の鉄道や橋が被害を受け、8人が死亡した。報復として、イランの正規軍や革命防衛隊は、バーレーンやクウェート、カタール、オマーンのアメリカ軍施設などをミサイルやドローンで攻撃していたが、この時、ヨルダンに駐留する米軍も攻撃をしていた。アクラミニア報道官はこのヨルダンへの攻撃については「先制的なアプローチだった」と説明。敵が攻撃に踏み出す前に攻撃していたと主張している。
さらにアクラミニア報道官は、攻撃的な姿勢には別の側面もあるとし、「いかなる侵略行為に対しても必ず即座に対応すること」と「その対応が侵略行為そのものよりも広範囲に及ぶ可能性」だとしている。
すなわち、イランの攻撃的な姿勢には大きく2つの側面があるようだ。それは、「敵の脅威が現実化する前にそれを防ぐ先制攻撃」と「敵の攻撃を上回る報復」だ。
米経済制裁に加担なら「敵」 イラン側が警告
こうしたイランの積極的な攻撃姿勢は、別の文脈でも活かされようとしている。8月9日にイランの軍事や外交を統括する国家安全保障最高評議会の事実上トップに就任したモフセン・レザイ事務局長は22日、国営放送のインタビューで、米トランプ政権が発表を控えた経済制裁について、近隣諸国に加担しないよう警告した。「経済制裁に加担すれば敵と見なし攻撃する」としたほか、加担した国を念頭に「ホルムズ海峡以外の代替輸出ルートを含め、『一滴の石油すら』ペルシャ湾から出ていかない」と述べるなど強気の姿勢だ。
一方で、トランプ政権の経済制裁の発表を前に、イランの行政や立法のトップから、外交や交渉を重視する声が上がっているのは事実だ。しかし、トランプ大統領がしきりに主張するように、イランの当局者の間では対応の違いがあり、軍やその関係者の最近の発言からは、敵から攻撃をされなくとも攻撃するという強気な姿勢とその方針が見えてきた。
アメリカのイランに対する経済制裁が、アメリカと同盟を結ぶ湾岸諸国にとっていかに大きな負担となるか思い知らせるためにも、イランが新たな先制攻撃に踏み切る可能性は否定できない。イランが頻繁に言及するトランプ政権の「経済戦争」が、中東情勢に、次なる“戦火“をもたらしてしまうのだろうか。