アメリカがイランに対し、『史上最も厳しい経済制裁』を行うと表明しました。
アメリカが軍事的圧力から経済的圧力に切り替えた背景と、日本への影響について見ていきます。
■イラン制裁『経済的総攻撃』の中身 実効性は?
日本時間8月25日午前2時すぎ、アメリカは史上最も厳しいとする経済制裁の内容を発表しました。
「我々は世界中に広がるイランの金融網に対し総攻撃を開始する。我々の目的は独裁政権を持続させているすべての経済的ライフラインを断ち切り、イランを孤立させることだ」
発表された経済制裁です。
制裁の範囲を核・ミサイル技術・石油取引などに加え、デジタル資産やテクノロジー、金、航空、海運分野に拡大。
イランと取引するすべての国に制裁を発動すると警告。
米ドル建て金融システムから排除するとしています。
制裁の発動時期については明言しませんでした。
新たな制裁対象も発表されました。
アメリカはイランの核開発などに関与したとして、60を超える個人や企業などに制裁を科すと発表。
トランプ大統領は各国の指導者に電話をかけ、イランとの関係を断つよう要請しているということです。
イラン側の反応です。
「トランプ氏がまもなく発表する経済的圧力計画はイラン国民への心理的圧力を強めるキャンペーンの一環として、同氏のメディアチームが考案した戦略の一部に過ぎない」と現地メディアに語っています。
イランへの制裁のカギを握る中国についてです。
「アメリカによる制裁の適用から逃れられる者は誰もいない。イランの原油を資金に変える金融ネットワークの一部となっている者が対象となる」と述べるにとどめました。
「制裁や圧力行使は問題解決に役立たず、緊張をエスカレートさせるだけであり、いかなる当事者の利益にもかなわない。中国は自国の正当な権益を守るために必要な措置を講じる」とアメリカをけん制しました。
イランと取引きのある周辺国です。
隣接しているトルコですが、中国に次ぐイラン製品の輸出先となっています。
イラクとアラブ首長国連邦(UAE)の両替業者は、イランが原油輸出で得た資金をイランが利用できる通貨に交換し、イラン国内に還流させる役割を担っているとされています。
インドですが、食品や医薬品などをイランへ輸出しています。
「周辺諸国の陸路による輸出入は地元住民による『密輸』の側面があり、地元住民は『密輸』に収入を頼っている。住民の生活を考えると、各国政府が取り締まる意思があるかは疑問」
■アメリカの圧力“軍事”から“経済”へ 切実事情&思惑とは
トランプ政権が軍事的圧力から経済的圧力に転換した背景です。
1つ目は、弾薬不足です。
アメリカ軍は戦争前と比べて、
▼高高度迎撃ミサイルシステム『THAAD』の迎撃ミサイルを8割近く消耗
▼防空システム『パトリオット』用迎撃ミサイルの約半数を消耗
▼巡航ミサイル『トマホーク』についても、アメリカが世界全体で保有する在庫の約半数を使ったとされています。
「弾薬備蓄が危険な水準にまで減少している」と話しています。
2つ目の理由は、トランプ大統領の支持率の低下です。
最新の世論調査によると、支持率は33%で、政権1期目の最低に並びました。
不支持は64%です。
中間選挙3カ月前の8月時点で比較すると、1期目の2018年8月は、支持率が42%と、今より10ポイント近く高かったものの、下院で民主党に敗れました。
トランプ政権の主要政策についての評価です。
移民政策については38%、犯罪対策は37%と、『支持』が4割近いのに対し、対イラン政策は27%、物価高対策は23%と、低い支持にとどまっています。
「アメリカは自国が始めた戦争で成果が全くないまま、戦費だけがかさみ、長期戦が難しい情勢。対イラン政策は国民に不人気で支持率も落ちている。トランプ大統領はコストがかからない経済制裁にシフトし、早期に成果を上げて戦争を終わらせたい思惑があるのでは」
■イラン今後は?国民生活苦境 深刻な物価高『崩壊状態』
アメリカによる経済制裁でイラン国民は苦しい生活を強いられています。
イランの7月の消費者物価指数は、前の年の同じ月と比べ、約88%上昇しており、食料品価格の上昇率は、128%に達しています。
一方、低賃金労働者の賃金の伸びは、食品インフレ率の半分未満で、物価上昇に追いついていません。
首都テヘランでは、卵1パックの価格が約525円と、7月初旬だけで4割上昇しました。
多くの家庭では、米、肉、パスタなどの基本的な食料品をツケで購入せざるを得ない状況です。
「イラン国内では、食料品価格などの物価高騰、原材料の輸入ができないことによる生産活動の停止などが起き、すでにイラン経済は崩壊状態。追加制裁でさらに壊滅状態に陥る可能性がある」ということです。
国内経済が苦しいイランですが、今後、どう出るのでしょうか。
「これまで我々は、軍事基地のみを標的にしてきた。しかし、わが国に経済制裁を科そうとするなら、アメリカがイラン周辺と、その他の地域に有する石油会社や企業を攻撃する」と述べました。
「アメリカによる経済戦争に加担すれば、敵と見なし標的にする。ホルムズ海峡とペルシャ湾から、一滴?の石油も輸出されなくなる」と警告しています。
また、イランは長期戦に構える構えです。
国防軍需省報道官は、
▼武器や防衛装備品の生産量を過去1年で倍増した。
▼一部の戦略的・戦争装備品は、紛争中に3倍以上増産したとしています。
■日本 影響拡大 原油価格に懸念 家計負担増の恐れ
約半年間に及ぶ中東情勢の不安を受け、日本でも影響が続いています。
日本の石油備蓄量です。
8月21日時点で、国家備蓄が103日分、民間備蓄が98日分、産油国共同備蓄が4日分、合わせて204日分となっており、200日分前後を維持しています。
「原油は8月も前年平月比約10割の調達にめどが立っている。今後、前年平月比75%の調達が続いた場合でも、備蓄を活用して、2028年3月末までの石油の安定供給が可能」としています。
一方で課題もあります。
財務省が8月20日に発表した、7月の貿易統計によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は、6345億円の赤字でした。
3カ月連続で赤字となっており、赤字幅も拡大し続けています。
7月の原油の輸入価格の変化を見てみると、原油1キロリットル当たりの価格は、2025年の7月は、約6万5400円だったのに対し、2026年の7月は、約11万6300円と、5万円以上高くなっています。
輸送代などの負担が重いアメリカからの輸入量が9倍となったことが影響しています。
アメリカからのエネルギーの輸入では、円をドルに替えて支払いを行うため、 円安が進みやすくなります。
円安が進んでしまうと、幅広い輸入品の価格上昇に波及するため、家計の負担が増える恐れがあります。
帝国データバンクによると、こうした原油やナフサの価格高騰、円安による輸入価格の引き上げなどによる飲食料品の値上げが秋にピークを迎える見通しです。
アメリカの原油の在庫量は歴史的な低水準となっており、最新で7億2224万バレルとなっています。
日本総合研究所の栂野副主任研究員によると、今後、在庫の枯渇を防ぐために、アメリカが放出を減らす恐れがあり、その場合、日本の原油調達や価格へも影響するということです。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2026年8月25日放送分より)
















