国際

2026年9月11日 12:41

中国政府の突然の『反ダンピング措置』に困惑 対日圧力の新たなカード? 半導体などの『自立自強』を掲げる中国で何が

中国政府の突然の『反ダンピング措置』に困惑 対日圧力の新たなカード? 半導体などの『自立自強』を掲げる中国で何が
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中国政府が日本産の半導体材料に対し、不当に安く輸出する「ダンピング」があったと7日に認定しました。日中関係が冷え込む中、新たな対日圧力のカードとみて困惑が広がる一方で、日本企業の中国駐在員たちからはやや違った角度の冷静な分析も聞こえてきます。

輸出に壁は「やはり痛い」

中国商務省が7日、不当に安く輸出するダンピングを暫定的に認定したのは、主に半導体製造などに用いられる特殊ガス「ジクロロシラン」です。

輸出元として名前を挙げられたのは、信越化学工業などの複数の日本企業で、最大99.2%の比率で保証金の納付を求める暫定措置が発表されました。

ある日本企業の中国駐在員は、パソコンやスマートフォンなどに欠かせない半導体を製造する際、このガスはシリコンの薄い膜を何層も重ねていく重要な工程で使われると説明します。

日本産のジクロロシランは、中国産に比べて品質が良いとされ、すでに中国市場に広く浸透しています。中国商務省の発表によると、4年前(2022年)の時点で、日本産が中国市場に占めていたシェアは約80%。その勢いは徐々に低下しつつあるものの、去年(2025年)の1月〜6月でもシェア約60%を維持しています。

つまり日本にとっては、競争の激しい中国市場で評価を確立した貴重な輸出品なのです。ただし、「最大99.2%」という高い割合の保証金を輸入業者に課され、今後、中国メーカーは「日本産か、中国産か」という厳しい選択を迫られることになります。

取材に応じた駐在員は、政府の動きを受けて、今後は中国産のガスへと切り替える中国企業も出てくるとみています。

中国の半導体産業は年々成長を続けていて、「高品質のものを中国に売り込む日本企業としては、もしも輸出を閉ざされてしまうとやはり痛いのでは」といいます。

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効果的な一点を狙って?

そのそも、中国政府は「自立自強」という大方針を掲げ、米国に依存しない半導体のサプライチェーンの構築を急いできました。ハイテク分野で米国が対中輸出規制を続ける中、「半導体の国産化」は中国にとっては切実な課題です。

パソコン、スマートフォン、EV(電気自動車)、そしてヒト型ロボットに至るまで、半導体は未来産業の核心といってよい存在だからです。

世界最大級の半導体業界の展示会「セミコン・チャイナ」(上海、2025年)
世界最大級の半導体業界の展示会「セミコン・チャイナ」(上海、2025年)

そんなさなかの今回の発表です。別の駐在員は「この措置は、中国の『半導体の国産化』を後押しするような、産業政策的な意味が強いのでは」と解説してくれました。

ジクロロシランは、中国メーカーが広く使う基礎的な「材料」です。機械などの完成品ではなく、生産に不可欠な材料に対して反ダンピングの措置を取ることで、業界への波及効果は大きくなります。また、日本企業の競争力が特に強い材料なので、この一点だけを押さえることで国内産業を保護する大きな効果が期待できる面もありそうです。

新たな「対日圧力」のカード、という性格にとどまらず、半導体を新興産業の柱として育てていく中国の国家方針が今回の措置からみえてくるかのようです。

中国経済を継続的にウォッチする金融関係者の一人は、「これまでに中国政府は、鉄鋼、EVなどの産業を戦略的に育て、世界の覇権を握ってきた。次に中国がめざす領域は、間違いなく『半導体』です」と話していました。

一方、日本政府の木原官房長官は「調査の状況や、また影響を十分に精査をし、(日本企業の)事業活動に不当な影響が生じないよう適切に対応する」と述べています。

中国政府の認定は暫定的なもので、関係者は10日以内に異議申し立てができるとされています。

(ANN上海支局長 尾崎文康)

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