米マイクロソフト創業者、ビル・ゲイツ氏は、この週末、再びAIの危険性を強く警告した。
急速にAIへの危機感が高まる中、国連総会の期間中、23日にはAIをめぐる安全保障理事会が開かれ、AI企業トップが議論に加わる異例の展開となった。
議場で各国の参加者に囲まれたオープンAIのサム・アルトマンCEOは、
と警鐘を鳴らし、リモートで出席した新興AI企業「アンソロピック」のダリオ・アモデイCEOも、
と述べた。
2人のCEOは、「AI開発のスピードを落とす必要性」とともに「国際的に厳格な安全基準を設けることが重要だ」と強調した。
しかし、ここで気になるのは、なぜ今、AIへの警戒が急速に強まり、AI企業のトップが相次いで「開発の減速」を口にし始めたのか、ということだ。
「AI警戒論」が企業価値高める?
安保理会合の後、国連のAI関連会議の委員に取材したところ、その背景の一つとして挙がったのが、「AIバブルへの懸念」だ。
現在、AI各社は過酷な開発競争を繰り広げる中で、データセンターなどの投資に巨額の資金を投じている。ブルームバーグは、メタ、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット、オラクルの大手5社のAIインフラへの投資額が、来年に5割超増加し、1兆2000億ドル(約189兆円)に達する見通しだと報じている。
これほどの巨額投資に、本当に見合う収益を確保できるのか。
市場では、疑念も生まれ始めている。
こうした中、アンソロピックは秋にもIPO(新規株式公開)を目指し、資金調達を進める見通しだ。国連のAI関連会議の委員は、このIPOをめぐる動きこそが、足元の「AI警戒論」を考えるうえで、重要な要素だと指摘した。
今、シリコンバレーでは、アルトマンCEOやアモデイCEOの警戒論は、裏を返せば「AIにはそれほどの能力と将来性がある」と市場に印象付ける側面もあるとみられているという。
AIの危険性を強調することで、今後のIPOを見据えた企業価値の向上につなげる、いわば「ポジショントーク」とも受け取れる側面があるとの見立てだ。
一方、AI 企業には、別の事情もあるとみられている。あまりに速いペースで投資が膨らむ中、十分な収益を確保できず、開発ペースを落とさざるを得ないのではないかとの指摘も出ている。
そして、こうしたAIの「危険性」をめぐっては、業界内でも意見が割れている。
アンソロピックやオープンAIが開発ペースを落とす必要性を訴える一方、半導体大手のエヌビディアは規制や開発の減速に反対している。AIの開発が減速すれば、データセンターなどAIインフラへの投資が鈍り、半導体需要にも影響するためだとみられている。
AIの進化が、将来的に人間への脅威となる可能性は否定できない。
一方で、その裏にある企業間の熾烈な主導権争いにおける、人間同士の複雑な思惑と駆け引きも考慮しなければ、AIの実像は見えてこないのかもしれない。
(ニューヨーク支局長 親松 聖)