中間選挙で惨敗後、トランプ大統領が初めて公の場に姿を現しました。その場にいた記者たちの一番の関心事は「政権批判」とも取れるバンス副大統領のSNS投稿についてでした。バディの間にすきま風が吹いているのでしょうか。
バンス氏「敗因は戦争」に波紋
上下両院での大敗が確定してから半日以上。初めて公の場に姿を現すまで、それだけの時間が経過していました。この日は、ホワイトハウスに建設中の宴会場に最後の梁(はり)を設置。少し感慨深そうな表情を浮かべます。
「床用の大理石はカットや模様が見事で、誰もが欲しがる代物だ。採掘場の持ち主が手放さなかったが、私と国のために売ってくれた」
あいさつでは中間選挙について一言も触れません。しかし、記者たちがうずうずしているのに気付いたのか、突然…。
「質問をいくつか受けよう。あれを背景にどうだ」
すぐに、この質問が飛びました。
「バンス氏は選挙の敗因がイランとの戦争だと言っているが?」
この3時間前に、バンス副大統領がSNSに意味深な投稿をした件です。
「我々が負けた理由は戦争にある。大統領自身が昨夜そう語っている。『戦争する価値はあった』『上院を今後6年間失うだけの価値はあった』と言いたい人はそうすればいい。その代償を払うだけの価値があったと主張すればいい」
イランとの戦争には、共和党惨敗に見合うだけの価値があったのか、という問いです。
(Q.副大統領は敗因をイランとの戦争としたが?)
「おおむね正解だろう。それで短期的にガソリン価格が上がったからだ。だがやるしかなかったし、再び同じ選択をするだろう。イランに核を持たせるわけにはいかない」
(Q.選挙戦の締めくくりに後悔は?)
「ない。私が候補者なら勝っていた」
トランプ大統領は、バンス氏の意見は正しいと認めながらも“それでも攻撃は間違っていない”との姿勢を曲げません。
「“戦争が影響を与える”ことは分かっていたが、核兵器を持たせるわけにはいかない」
(Q.“戦争の影響”について副大統領が長文を投稿したが?)
「実際に影響した」
(Q.投稿すると知っていた?)
「分かっていた。彼がどう感じているかも。別に問題はない。良かったんじゃないか」
イラン攻撃に“当初から反対”
2月末にイラン攻撃に踏み切った際、バンス氏は攻撃に異を唱え、長期化の懸念や、それにおける燃料高騰のリスクなどを強く訴えていた1人だと言われています。
(Q.イラン攻撃に関して副大統領と意見の相違は?)
「それはない。我々の結束は固い。強いていえば、私とは少し“哲学”が違って、私ほど攻撃に前向きではなかったかもしれん」
攻撃が開始されると、公に批判することは避けてきました。
「ガソリン価格は高騰しているが、中東で起きていることは永遠に続くわけではない」
結局、戦争は長期化し、急速に支持を失っていったトランプ政権。一部アメリカメディアでは、バンス氏の投稿を、トランプ大統領との“決別”と報じているところもあります。
「バンス氏が選挙の壊滅的な結果をトランプ氏の戦争の責任だとしたことは、大統領との間に距離感が生まれた珍しい瞬間だ。それはバンス氏がいかに強く戦争に反対していたかを表している」
“トランプ後”にらみ 新右派に訴え
一方で、これは決別ではなく、トランプ大統領を支持しながらも、裏切られたと感じている共和党員にメッセージを送るためとの見方もあります。それが現れているのが、共和党を見限った有権者たちが求めているものとして列挙した項目に「イスラエルとの関係を見直す」と書かれていることです。
「バンス氏は壊滅的な敗北を受け、トランプ氏から離れた有権者との新たな連携を模索していると情報筋は語った。彼は『新右派勢力』にメッセージを向けていて、アメリカとイスラエルの関係の本質を変えることも含まれる」
メッセージは、保守層の中でも他国の紛争などに関わるなとの理念を持つ人々に向けられているようです。
「彼がやろうとしているのは“伝統的保守勢力”や、イスラエルとの関係を見直す“孤立主義層”などの支持固めです」
「『自分は最初から戦争に反対だった。始めたのは大統領とイスラエルだ』と公に主張して、信頼回復を狙っているのです」
バンス氏はまだ、2年後の大統領選に出馬するか否か表明をしていません。それでも来る時に備え、新たな支持層獲得に早くも動き出した。これが投稿文の真意なのかもしれません。ただ、そのためには、今も続くイランとの紛争を終結させる道を示す必要があるのですが、イランは共和党の大敗を自分たちの勝利と位置付け、結束を強めています。
「今日、傲慢な大国が面目を失い、軍事的にも国際的にも取り返しのつかないほど地に堕ち、衰退の一途をたどっている。アメリカの政権交代に期待したり、譲歩によって協調できると考えることは重大な誤りだ」
バンス氏「負けた理由は戦争」
アメリカの政治・安全保障に詳しい、明海大学の小谷哲男教授に話を聞きます。
(Q.バンス氏の地元、オハイオ州で実際に調査をされて肌で感じるもの、この結果についてどう思いますか)
「今回、生活費の高さが大きな争点になっていましたが、これに対する強い不満を聞きます。前回、共和党に入れた人たちの中にも、今回は民主党に入れた人たちもたくさんいたようです。もう1つはデータセンターに対する不満・不安、これも大きな争点になっているのを現地で確認しました」
(Q.バンス副大統領の投稿の真意はどこにあると考えますか)
「バンス氏は投稿する前に、内容をトランプ氏に見せて承認を取っているということですので、決して反旗を翻した動きではないと思います。むしろ今後、共和党を立て直すために、トランプ氏はないですが、この先に選挙のある共和党に向けて、軌道修正をする形で一致団結して戦っていこうというメッセージだったと思います」
(Q.トランプ政権と一般の人たちの間の緩衝材になろうとしたのでしょうか)
「今回、共和党支持であるにもかかわらず、民主党に入れなければならなかった人たちを取り戻すために、どうすればいいかをメッセージとして出したということです」
(Q.バンス氏自身が次の大統領選挙に意欲を示していると取ることもできますか)
「トランプ氏がバンス氏を副大統領候補として指名した時から、バンス氏もそれを前提に動いてきたと思います。ただ今回、中間選挙でトランプ・バンス政権が大負けしたことになります。これを挽回するためにも、軌道修正をしなければならないということを、早めに発信したのだと思います」
イラン戦争 終結に向かうか
(Q.イラン戦争の行方はどうなると考えますか)
「イラン戦争は、トランプ氏の個人的な思いが相当反映されたもので、トランプ氏は残り2年の任期の中で、イランに核開発計画を放棄させるディールを結ぶことは諦めないと思います。今後も軍事的な圧力も含めて、イランに対して交渉を強く迫るという姿勢自体は、恐らく変わらないと思います」
イスラエルとの“蜜月関係”に変化?
(Q.バンス氏はイスラエルとの関係見直しにも触れています。トランプ氏とネタニヤフ氏の蜜月関係が変わっていく可能性はありますか)
「ちょうどイスラエルでも総選挙があって、今後どういう連立政権になるか分からないですが、ネタニヤフ首相ではない形で新しい政権ができるとすれば、アメリカとしてもイスラエルとの関係をリセットしやすい。そういう環境の中でのバンス氏の発言だったと思いますし、トランプ氏もそれを了承しているということだと思います」
(Q.ネタニヤフ政権が続く場合はどうですか)
「続くとなったとしても、これまでのように、イスラエルがアメリカを操っているかのように見えることに関しては、強く拒絶をしていくことになると思います」
(Q.一定の距離を取っていくだろうということですね)
「そうですね」






















