古賀誠氏に聞く「戦争」「靖国問題」「憲法改正」[2019/08/15 15:15]

 終戦の日を迎えるにあたり、自民党の重鎮・古賀元幹事長がテレビ朝日政治部の単独インタビューに応じ、安倍総理大臣が前向きな憲法改正に慎重な姿勢を示しました。

 74回目の終戦記念日を迎えるにあたり、日本遺族会の会長を長く務めた自民党の古賀元幹事長に話を聞いてきました。古賀元幹事長は父親がフィリピンのレイテ島で戦死したことから、平和への思いを強く持って政治活動を行ってきました。靖国神社についても天皇陛下が参拝できる状態にするべきとの考えを持っていて、具体的な方策について聞きました。
 また、参議院選挙で安倍総理が争点の一つに掲げた憲法改正。自民党の条文イメージ案では9条への自衛隊明記が盛り込まれていますが、従来から今、憲法を変える必要はないとの考えを持つ古賀元幹事長に自民党の進むべき道を聞きました。
 さらに岸田派、宏池会の名誉会長でもある古賀元幹事長にポスト安倍、総裁候補の一人でもある岸田政調会長の今後について直撃しました。


 【74回目の終戦の日、平和への思い】
 (Q.戦争を知る世代が減るなかで、古賀元幹事長が危惧することは?)
 そうですね、本当に1年経つのは早いなと思うね、暑い夏に。また8月15日が巡ってくると。特に私の場合は父親を戦争で亡くして、2歳の時に出征して4歳の時にフィリピンのレイテで亡くなってますから。何一つ父親の思い出というのは記憶にないんですけれども。そういう世代だからこそね、そういう生い立ちだからこそ、やはり大事にしなければいけないものは平和ではないかなと。あんな戦後の貧乏な時代、父親のいない家庭・家族、こんなの繰り返しては絶対いけないなと、そういう思いはこの暑い夏の8月15日に新たにしなきゃいけないし、決して風化させるものではないし、大切に考えなきゃいけない日だなと。そんな思いしますね。

 (Q.日韓関係、北朝鮮問題、どう打開すべきか?)
 僕はね、政治に携わっている人たちが今のようなね、売り言葉に買い言葉というのは非常に乱暴な表現かも分かりませんけれども、もっと丁寧な会話、丁寧な相手の国に対する信頼、また尊重する。特に近隣諸国であるだけにね。これは引っ越しのきかない国ですから。国と国ですから。未来永劫(えいごう)にね、隣国ですよ。やはりお互いの信頼というものをまず第一に、そうした会話とか、そういったものが求められていくということを大切にしなきゃいけないんじゃないかなというような気がしますね。


 【靖国神社問題の本質とは】
 (Q.総理の参拝に中国、韓国から批判。この靖国神社の現状をどう見る?)
 僕はね、いつも靖国神社の問題が出て、総理の参拝とか、そういったことのなかで海外からの内政干渉が行われる。まさに内政干渉だと、靖国の問題に総理がお参りするとか、陛下の問題とかってことになるとね。私は決してね、内政干渉が例えば、韓国、中国、そういった国々にね、そのことだけで片付けられる問題ではない。国内問題として日本の国が靖国にお眠りになっている英霊に対してね、しっかりした責任ある反省をしてきたかと。この欠如は、それがないがしろになったままにずっと戦後74年、時を刻んできた。そこに問題がある。だから靖国問題というのは、政治家として解決しなければいけない一つの大きな政治課題だという認識を持っております。

 (Q.古賀氏による解決策、具体的には?)
 私はね、なぜ靖国問題がここまでこじれているかというとね、A級戦犯という昭和殉難者のことでありますけれども。14名、この人が合祀(ごうし)をされたと。私はそれは一つ、A級戦犯の方々の責任というのは免れないなというふうに思うんですね。あのA級戦犯というのは戦勝国である連合軍による報復裁判であるとか、色々、A級戦犯そのものに対して異論、意見はあります。しかし、現実に今、言ったように310万の尊い命が失われ、国土が焦土化し、戦後、本当に貧乏な日本の国、復興するのに大変な苦労を皆がしてきた。これに対しての責任は、私は誰が見てもやはりA級戦犯にあっただろうというふうに思います。その人が国の命令で平穏な生活、家族があり、そういったものを捨てて国に命を捧げた。その召集を出した人と、そのことによって命を落とさなければいけなかった人と、一緒にお祭りされて同じように尊い命を捧げた、尊崇の念を持ってお参りできるかどうか、これはなかなかね、難しい理屈とか理論で片付けられない問題が遺族には特にありますね。


 【憲法改正 9条への自衛隊明記は…】
 (Q.秋以降に改憲議論進むのか、自衛隊明記に古賀氏は?)
 僕は憲法改正にはですね、アメリカの占領下によって押し付けられたものだから憲法改正しなければならない、この意見に屈するものではありません。ただね、戦後74年も経って様々な国際社会のなかにも変化が起きてきている、国内にも様々な問題が変わってきている、そういう変化のなかに今のままの現行憲法を、この憲法を守り続けなければならないと申し上げようとは決して思っていません。しかし、守るべきもの、一番大事なものはしっかりと守っていかなければいけない。それが立憲主義であり、平和主義だということだと私は思っています。そういうことを考えると、9条を議論し、変えていくという今の国家主義的な人たちの考えは私はちょっとね、時期尚早だし、そこまで日本の国の安全保障体制から考えてもね、必要性というものが高まっているとは決して思いません。

 (Q.“自衛隊違憲”の国民は少ないのでは。古賀氏の見解は?)
 安倍総理のご発言をいちいちあげつらおうとは決して思いませんが、自衛隊明記についておっしゃってるのは憲法違憲だという人、特に学識経験者でいらっしゃる。しかし、今おっしゃったようにほんのわずかですよ、学識経験者にしても学者さんの意見のなかで国民のほとんどの人たちは自衛隊に対して災害だ、色んな面で大きな役割を果たして頂いていると、それを認める認めないとかじゃなくて皆が受け入れているんですよ。自衛隊に対しての大きな尊敬、役割に対しての感謝、それで僕は良いんではないかと、十分でしょというのが私の自衛隊に明記する必要がないんではないかと、私の考えはそこにあるんですけど。


 【“ポスト安倍は?”古賀氏を直撃!】
 (Q.安倍政権の出口も見えてきた、次の時代は?)
 そうですね、僕のこれからの新しい令和という時代のね、始まった令和という時代がどういう時代でないといけないか考えますと、やっぱり国家主義という国の力を強くするという安倍さんの基本的な理念、哲学と言っていいのかな、次は自由尊重というのか、やはり国民とともに物事を共有し、徹底的な議論を尽くしていくと。憲法問題なんかもまさにそうですけどね、そういう政権が望ましいんじゃないかなと。そういう意味では、伝統と歴史を持っている宏池会。宏池会というのは自由を尊重する原理主義というものに重きを置く。安倍さんがやってきた国家主義、そういった支持層から国民全体をどうまとめるかという考えを理念とする宏池会。そこに岸田さんに対する期待感というのを国民の皆さんにお持ち頂いているんではないかと思いますね。

 (Q.参院選で現職4人落選の宏池会。岸田政調会長の求心力は?)
 先の参議院選挙で本当に優秀な若い人たち、経験豊かな人4人を失ったことは大変、残念なことだし、自民党だけではなく、日本の政治にも損失が大きいと残念に思っています。しかし、選挙は勝ち負けしかないんだから、ずっと勝ち続けるということだけではありません。特に岸田さんはご案内の通り、すくすくとつくしの坊やのように今までは政治にも参加できて、宏池会の会長にも就任できて、あまり挫折だとか修羅場だとか正念場というのは少なかった政治家ではないかと。つくしの坊やはすくすく育ってるけど、ポキッと折れたらそこで死んじゃうと、沈んじゃうと。岸田さんはそうじゃなくて、自らは政権を取るための試練だと、良い経験だから、これからたくましくなっていけば私は必ず岸田政権が誕生した時にそれを試練として国民の期待に応える政治ができると私はそう信じてます、確信してます。

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