ワクチン不足 原因は?いつ日常に?河野大臣に聞く[2021/07/12 23:30]

新型コロナ感染拡大を止める切り札として期待されるワクチンですが、供給不足で打てないという自体が相次いでいます。なぜこのような事態になってしまったのでしょうか。ワクチン接種を担当する河野太郎大臣に話を聞きます。

まず、最新のワクチン接種状況をみていきます。医療従事者の土日分は含まれていませんが、全人口では29.6%が1回目を接種しています。2回目の接種が終わっているのは17.8%ということです。

(Q.ワクチン接種の進捗状況はどう見ていますか?)

河野太郎大臣:「菅総理が7月末までに高齢者2回接種を終えるという話をされた時には『本当にそんなことができるのか』という話がずいぶんありました。7月12日で、全人口の3割という数字が出てるというのは、あの時に考えると夢のようだなと。本当に自治体・医療従事者・関係者の皆さんにがんばって頂いて、いまや全体をどれだけ進めるのかという議論をして頂いているというのは、本当にありがたいと思っています」


(Q.自治体での集団接種やかかりつけ医などでの個別接種で使われているファイザーのワクチンをめぐっては『ワクチンが足りない』という声が多く上がっています。河野大臣は『微調整する』と話していますが、もっと早く調整できませんでしたか?)

河野太郎大臣:「ファイザーのワクチンは、4〜6月の間に1億回、日本に入ってきて、6月いっぱいで恐らく8800万回ぐらい自治体に供給しています。週に1000万回ずつ入ってきたので、自治体にお配りしました。菅総理が5月半ばくらいに『100万回』と仰って、私は当時『7〜80万回でどうでしょうか』と申し上げたら、総理は『一日100万回を目指していけ』と仰いました。それで自治体にもお願いしたのですが、今恐らく、足元では一日に140万回くらい自治体の皆さんに打って頂いているということになります。

『一日に100万回いくのか』という話がずいぶんありましたが、ふたを開けてみたら、自治体の皆さんに本当に頑張って頂いて、100万回になりました。『なぜ、もっと早くから政府が統制をしなかったのか』というお叱りを頂きますが、政府がもっとコントロールしようとすると、恐らくもっと低い水準だったと思います。

政府がそれをやらずに、それぞれ自治体の裁量で、一番いいやり方でやってくださいと言ったら、現在、一日に140万回を超えるようになっています。冷戦時代のソ連の計画経済と西側の自由経済の差だと思います。どこかでコントロールしようとすると、我々の想像からいって一日100万回がゴールみたいなことでした。自治体が色んなことを考えてやってくれたので、どんどんペースが加速しました」


(Q.接種ペースの加速を読み切れませんでしたか?)

河野太郎大臣:「1つは、100万回を超えて、ここまでいくとは正直思っていませんでした。6月に入って、補佐官が『これは100万回どころではないかもしれない。120万くらいいっている可能性がある』と、藤井副大臣が『自治体によっては120万どころか、全国換算をしたらそれ以上に打っている自治体がある』と言い出しました。調べてみたら、福島県相馬市は全国換算で一日に220万回分くらい打っているペースでした。恐らく今、自治体で全国換算をすると、160万、180万打ってくれている自治体が相当数あるので、今の姿になっているんだと思います」


(Q.自治体からすると『自分たちはすごく早い』『もうちょっと抑えた方がいい』ということは分からないものですか?)

河野太郎大臣:「7〜9月のワクチン供給量が下がった時に、4〜6月に供給したうちの未接種分を打ってもらう想定でしたが、いまや接種回数が増えたため、未接種のワクチンがかなり早いペースでなくなっています。

もう一つは、早いペースで打っているところほど、先の予約を取っています。ところが、ワクチンの供給に限界があるため、どうしても数が足りず、キャンセルをせざるを得ないということで、一日160万、180万回打っている自治体に120万回くらいにペースを落としてくださいと。このくらいのペースでいけば、ワクチンがなんとか途切れずに、それぞれの自治体にいけるんじゃないかということで、ペースを最適化してくださいと。もちろん手持ちの在庫を全部打って、その後は供給ラインに合わせて打つというやり方をして頂いても構いません」


(Q.国側がもっとコントロールをうまくすることはできませんか?)

河野太郎大臣:「国が一律にこうやりなさいとやると、一日100万回を目指して打って、現在の接種回数を下回っていたと思います。それぞれの自治体が一番いいと思っているやり方で打ってくれたからこそ、現在の接種回数までいったんだと思います」


(Q.11日の全国知事会では『市区町村は国の方針に基づき、ワクチン接種に全力を挙げてきたのに、はしごを外されて混乱している』という緊急提言がまとめられました。『9月以降の供給スケジュールや配分量のめどをしっかり示してほしい』という自治体からの不安に対してはどう考えていますか?)

河野太郎大臣:「ワクチン接種回数は現在、相当上振れをしていますので、自治体の希望量を取ると、ファイザーのワクチンを2週間で3万箱くださいということになりました。しかし、7〜9月は2週間ごとに1万箱の供給です。希望量が供給量の3倍ということで、希望通りには送り出せません。今までの未接種のワクチンを使いながら、スピードが速いところは緩やかにして頂く必要があります。

そして、先の見通しがないと、どこまで予約を取っていいか分からないということですから、それぞれの自治体にどれだけのワクチンを供給するかは、2週間ごとの数字を8月末までお示ししております。だいたいその数で9月までいきますが、今、自治体の接種のほかに、職域で接種もやってもらっています。

この職域が、自分の自治体の何人分にあたるのかというのは、まだデータとして反映されていません。9月分は職域のデータを反映して、恐らく首都圏は、自治体で打ってるのに加えて、職域接種が相当あると。そうすると首都圏の自治体がもかなり打ってる方が多いということですから、そこのワクチン量は少し調整をして、職域接種の少ない所へ余計に加えていくということをやっていきたいと」


(Q.職域接種や、自治体・自衛隊の大規模接種に使われているモデルナのワクチンは当初、6月末までに4000万回が供給されると説明していましたが、実際には1370万回で、河野大臣は『ゴールデンウイーク前には分かっていた』と話していました。承認前で、契約で合意がないと話せないということですが、うまいブレーキのかけ方はありませんでしたか?)

河野太郎大臣:「4月の中旬ごろ、モデルナから世界的なワクチンの需要が非常に大きいので、この予定通り4000万回を日本に供給することができないという連絡がありました。そこで『いやいや4000万回よこせ』と突っ張ることもできたのかもしれません。ただ、4月の中旬は、ようやくファイザーの高齢者接種のために、都道府県に1箱ずつ配ってシステムは動くかどうか、接種するのに予診にどれぐらいの時間がかかるか、実際にワクチンを接種しながら試してくださいという時期でした。

モデルナはまだ承認のめども立っていませんでした。当時はEU(ヨーロッパ連合)が、透明化メカニズムで『1箱ずつ輸出の了解を取れ』という時でしたから、接種のめども立たないモデルナのワクチンが4000万回来てしまう。そして、ファイザーのワクチンが毎週1000万回ずっと入ってくるという状況だと。

これは絶対、EUの輸出の透明化メカニズムに引っ掛かるねと、日本向け止めるぞと。あるいはファイザーとモデルのとどっちが大事なんだみたいなことになると心配をしている時に、モデルナから供給が予定通りできなくなったという話がありましたので、『分かりました。その分を後ろに下げてもらってもかまいません。その代わり、第3四半期には確実に5000万回入れてください』ということで、むしろ私としてはこれでEUにファイザーを確実に入れろと。

その前に実はアストラゼネカが若干ヨーロッパから入ってくる量がありました。それはもしEUが必要ならアストラゼネカは交渉に応じると言っていました。ですからモデルナについても、EUが本当に必要なら交渉に応じるけれども、ファイザーは確実に入れてくれという交渉をそれでできました。ありがたいというとあれかもしれませんが、交渉のカードには使いました。

そして、モデルナが1000万回入ってきましたが、6月の当初は、モデルナの需要は、自衛隊と愛知県・群馬県・宮城県の大規模接種、極めて限定的でした。変異株の広がりもあるということで、職域接種をやってみようとお声をかけたところ、非常に大きな需要を頂きました。これはかなり予想外でした」


(Q.職域接種でも止まっているところが多くありますが、順調に再開することはできますか?)

河野太郎大臣:「今、モデルナを輸入する量をそのまま配送に回しているという、自転車操業の状況ではありますが、6月にスタートをした職域接種は大体7月いっぱいで2回目を打ち終わります。

そうすると、そこは終わりますから、その枠を使って、お待ち頂いている職域接種を8月から入れていこうと思っています。

ただし、その時には、自治体である程度接種が進んでいますので、3000人の職域接種と言っていたけども、半分は自治体で打っちゃったよと、1500人の職域接種になるよということがあるかもしれませんが、お待ちを頂ければ、必ず職域接種はスタートさせるということで動いています。


(Q.イギリスやアメリカはどんどん日常を取り戻しているように見えますが、日本では何%くらいまで接種が進めば日常を取り戻せますか?)

河野太郎大臣:「モデルナとファイザーのワクチンで、希望する国民の皆さんに打って頂けるだけの量が9月の末までに入ってきます。それを自治体に配送することを考えても、10月から11月のどこかで希望する国民の方は全員打つことができると思います。それは、相当接種率を高く考えているので、若い方にもたくさん打って頂くという前提です。

じゃあどのくらいのタイミングでマスクを外せるのか、どのくらいのタイミングで日常生活になるのかというのは、専門家の先生方のシミュレーションや研究を待ちたいと思っています」


(Q.ゴールは動かさないということですか?)

河野太郎大臣:「もう供給は9月末までにワクチン十分入ってきますので、そこはしっかりやっていきたいと思います」

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