衆院解散で未来は?『9党首×大越健介』生討論全文[2021/10/14 23:30]

衆議院が14日に解散され、事実上の選挙戦が始まりました。

今回の選挙は、新型コロナの感染拡大が始まってから初めて、全国的に民意を問う選挙となります。

9党の党首にお越し頂きました。

◇もっとも訴えたい政策は?
党首の皆さんに、この選挙に向けて最も訴えたいことを書いて頂きました。

『新型コロナ対応/経済政策/外交・安保』
自民党・岸田総裁:「まずは新型コロナ対応ということで、この夏の2倍の感染力に耐えられるだけの病床の確保。病床使用率の確保。ワクチン・治療薬を用意し、あわせて、協力頂くための経済対策を訴えていきます。そして、コロナ禍の後、経済を回していくために成長と分配を考えて、皆さんの所得を引き上げて、消費につなげ、豊潤化を実現する。あわせて、激動する国際情勢のなかで、外交安全保障。誰がこの日本の国益・安全を守るのか。こうしたことを訴えていきたい」


『未来応援給付』
公明党・山口代表:「コロナを克服して日本を再生する。これが今回の選挙の目的であります。そのための政権選択をするにあたって、それを象徴するような具体策として『未来応援給付』を掲げました。コロナ禍のもと、外出自粛される子どもたち。食費がかさむ、通信費がかさむ、また、ワクチン接種の対象になってないお子さんもいる。しかし、感染をして人にうつしてしまうかもしれないという不安を抱えている。そうした子どもたちに、この日本の未来を担って頂かなければなりません。社会全体で子どもを育てる。このメッセージとして、未来応援給付。0歳から高校3年生、18歳までの子どもさんに、一律10万円相当を給付する。これで元気を付けて頂いて、未来の社会を担って頂きたい。それが大人の安心、希望につながると思います。日本再生の柱、未来応援給付を一押しです」



『公正な所得再分配 安心の確保 消費の回復で経済成長へ!』
立憲民主党・枝野代表:「コロナ禍で、日本社会があまりにも脆弱だということが明らかになりました。それはやはり、アベノミクスと称する9年間。日本の富が、例えば株を持っている方、あるいは一部の大企業の内部留保、こうしたところに偏ってしまっていて、結果的に消費が伸びずに、経済全体が成長できなかったことにあると思っています。したがって、富を適正に分かち合う。その所得の再分配、それから医療、介護、子育てなどを中心とする、暮らしの安心を高めていく。この2つで消費を増やしていくことがすべての出発点になっていく。格差と安心の2つを軸にしながら、消費を拡大させて日本経済を本当の意味での回復基調に乗せていく。そのことで社会を強くしていきたい」


『政権交代を実現し、国民の声が生きる新しい政権を』
共産党・志位委員長:「岸田新政権が発足して、代表質問で政治姿勢について質しましたが、率直にいって、これまでの政治に対する反省の言葉が一言もなかった。森友疑惑など国政私物化疑惑についても、コロナで医療崩壊を起こして多くの方々の命を損なったことについても、アベノミクスによって格差と貧困を広げたことについても反省がなかった。反省がないということは、これまでの安倍・菅政治が、表紙だけ変えて続くということになります。今、日本の政治を変えようとすれば、自公政治そのものを終わらせる政権交代が必要。そのためにも、ぶれずに誠実に、この野党の共闘を進めてきた、共産党を躍進させて頂きたい。これを訴えて戦いたい」


『持続可能な日本を創る 分配の為に改革実行』
日本維新の会・松井代表:「我々は持続可能な日本を創る。分配のための改革実行です。霞ヶ関、永田町にいるすべての皆さんが認識をされているけれども、どうしても抜本的な日本の改革を進めようというのがなかなかできていません。今、日本は確実に人口が減少している社会です。そして、超高齢化社会に突入しています。そんななかで、日本の社会保障制度、様々な規制は昭和の時代のままです。その時代のままの制度・規制では、令和の時代、これからの時代、日本は非常に厳しい状況に追い込まれます。我々は時代に合わせて様々な改革を行って、持続可能な公平公正な日本を創りたい」


『積極財政で“給料が上がる経済”の実現』
国民民主党・玉木代表:「国民民主党のやりたいことは明確です。“給料が上がる経済”を積極財政で実現したい。日本の最大の問題は、30年間給料賃金が上がらないことです。自民党政権も民主党政権もできませんでした。コロナで傷付いた経済から再生していく際に、長期にわたって日本が低迷するこの問題を解決するために、トータル150兆円の大規模な財政出動で、日本をもう1度元気な、最初は少し過熱気味になるぐらいの積極財政で、給料が上がる経済を実現したい。当面、50兆円の緊急経済対策。一律10万円の給付をもう一回やります。傷付いた事業者に対しては、業種を問わずに固定費の最大9割、月額最大2億円までを補償する。消費税を5%まで経済回復まで実現する。そして、10年規模で教育への投資、科学技術への投資、デジタルや環境分野への投資を大胆に行っていきます」


『れいわの景気爆上げ大作戦』
れいわ新選組・山本代表:「コロナになっているから、皆困っていると思い込んでいますけど、大きな間違いです。日本は25年間不景気です。デフレから脱却できない状態。世界とは違います。そのような状況のなかで、コロナまでやって来てしまった。コロナが来る前の日本を見て頂きたい。生活が苦しいと言われている方々は、全世帯の54.4%、母子世代でも86.7%。日銀の調べによりますと、20歳代の61.0%、30歳代の40.4%、40歳代の45.9%、50歳代の43.0%、60歳代の37.3%が貯蓄ゼロ世帯となっています。この状況のなかにコロナがやってくれば、とどめを刺しに来られたと同じ。やるべきことは何か。徹底的な財政出動。そのなかでも幅広くやっていかなければなりません。消費税は廃止。なぜ消費税は廃止か。大企業の減税のための穴埋めに使われているから。そして、金持ちの所得税を減税するための穴埋めに使われているから。このような偏った税の取り方を是正する。まずは消費税廃止。他にも、最低賃金1500円。これは国の保証でやっていく。子ども手当を倍にしていく。3万円ですね。そういった形で、大胆にこの国の危機を修復していくことが重要です」


『生存のための政権交代』
社民党・福島党首:「これほどまでに命や健康、生活、雇用が破壊されている。これを変えなければなりません。命を守れ、命を救えということです。税金の取り方と、税金の使い道を変える。社民党はこの3年間、消費税ゼロにする、大企業の内部留保484兆円に課税をするということを掲げています。長期的に見れば、30年間下げ続けた法人税を上げていくこと、所得税の累進課税を上げること、大企業や富裕層に応分の負担をしてもらう。そして、税金の使い道を変える。医療・介護・福祉・年金・教育にお金を振り向けて、安心できる生活をつくる。企業が潤えばうまくいくという新自由主義を、社会民主主義、皆のための経済・社会・政治に変えなければ、生存そのものが成り立たない。そして、脱原発・脱炭素で持続可能な社会をつくっていきます。ホッとできる未来へ、希望の持てる社会をつくっていく、それが今度の選挙の争点です」


『NHKが反社会的集団であること』
NHK党・立花党首:「我々『NHKと裁判している党弁護士法72条違反で』という名の国政政党は、もちろん、NHK問題です。NHKが反社会的集団であることを、我々が国政政党になって2年2カ月経ちますが、いまだにNHKは、契約をした月から受信料を払ってくれであったり、これ放送法64条2項違反です。また、支払いを拒否する方から、下請け会社いわゆる民間会社を使って繰り返し支払いの請求をすること、これは弁護士法72条違反になります。我々はまだまだNHKの、特に営業という意味ですけれども、NHKの営業が、犯罪による反社会勢力を使って国民の皆様を不安と恐怖に陥れていることを、今回の選挙で最も訴えたいと考えております」



◇“政権選択選挙”野党どう連携?
この衆議院選挙は政権選択の選挙です。政権の枠組みを決めていく選挙でもあります。
解散時の議席は、定数465のうち、自民党276、公明党29、自公を与党で300議席以上を獲得しています。

(Q.枝野代表。与党に対して、野党ができるだけまとまって闘っていこうと打ち出されていました。進みましたか?)
立憲民主党・枝野代表:「今、220くらいの小選挙区は事実上、自公との一騎打ちの構造ができたと思っております。今の選挙制度を前提とする場合の、最大野党としての役割を果たすことができたし、政権の選択肢を示すことができた。これには他の野党の皆様ご協力も頂いていることに感謝申し上げたいと思います」

(Q.志位委員長。具体的に野党政権ができたら、どうやって協力しますか?)
共産党・志位委員長:「新しい政権ができた場合は、閣外からの協力を限定的な課題で行っていく。限定的な課題で確認しているのは、市民連合と野党4野党が合意した共通政策を実行する。これは20項目あり、平和の問題・暮らしの問題・ジェンダー・民主主義、これまで続いてきた、自公の政治をチェンジしていく要になる大事な部分を合意しています。この問題について、しっかり新政権をサポートしていこうという合意になります。大事な問題に絞っての閣外協力ということで、枝野さんと合意しました。これは非常に大事なステップで、このもとで、選挙協力についても200を超える所で事実上の一本化できました。ぜひ力を合わせて、いい結果を出したい」

(Q.松井代表。仮に、今回の選挙で自民公明が過半数を割り込んだ場合、自公と連立を組む選択肢はありますか?)
日本維新の会・松井代表:「連立を組むことはありません。総選挙は政権選択選挙です。政権にとって一番重要な仕事の部分、外交・防衛政策は国でしかできないことです。僕は今、地方の政治家、大阪の市町なんですけど、外交や防衛は直接僕らがタッチできません。我々は外交・防衛政策については、今の政権の方向性を支持しています。連立だとか閣外協力だとか、そういうことをお話しする時に、政権選択であれば、まず中央政策しかできない政策を一致させることが重要なのに、立憲・共産党の皆さんは、外交・防衛という国の根幹の部分を全くなおざりにして、置き去りにしたまま野合談合の選挙互助会ですから。これはもうおかしすぎるんですよ」



◇“コロナ禍の分配”各党違いは?
今回「成長・分配」という言葉が行き交っています。分配の政策のなかでも1丁目1番地の、コロナで生活・健康・仕事にダメージを受けた人たちに対する支援をどうしていくかについて、具体的に聞いていきたいと思います。

(Q.岸田総裁。補正予算を組まなくても、今すぐ手を付けることができるものがあると話しています。具体的な打ち出せるものは出てきましたか?)
自民党・岸田総裁:「すでに今日、基本的な経済対策についての考え方を明らかにしていますが、従来から言ってきた、困っている方々に対する現金給付に加えて、事業者に対しては持続化給付金並の支援を、来年3月まで用意するとか、雇用調整助成金の3月までの延長、こういったものを経済対策のなかに、しっかり設けて、まずはこのコロナ禍、国民の皆様に協力して頂くために、しっかり経済対策を作っていきたいと思います」

(Q.枝野代表。コロナで急いで手当てをしなくてはいけない。どんなメニューを考えていますか?)
立憲民主党・枝野代表:「私たちは持続化給付金、事業者の事業支援、地域や業種を問わずに、1年前のもの比べてメリハリをつけて、3月から提案させて頂いているのに、残念ながら自民党の審議拒否にあって、国会で審議もして頂けませんでした。それから、所得の低い皆さん、あるいは子育て中の皆さんの所得に低い方、こうした皆さんに対する明日の暮らしのための生活支援、これを3月に法案提出しながら、自民党の審議拒否にあって、審議もして頂けませんでした。これは、今からでは遅すぎるくらいですから、一刻も早くやらなければならない。そして、その次の段階で、消費を喚起していかなくてはならない。中間層まで含めて、低所得者には現金給付、中間層には所得税の減免という形で、大部分の、いわゆる勤労所得者の皆さんには、一定の家計を支える。こういったことをやっていきたい」

(Q.志位委員長。一言ありますか?)
共産党・志位委員長:「私たちとしては、持続化給付金、家賃支援給付金、この第2弾の支給を強く求めてきました。しかし、ずっとそれが先送りされている。ぜひ支給して、コロナ収束まで継続的な支給が必要です。それから、コロナで家計収入が減った方々を対象に、広く中間層まで対象にして、1人基本10万円の給付金、“暮らし応援給付金”を提案しています。中間層も含めて、ボーナスや賃金が減っています。コロナで暮らしが痛んでいますから、そういう方にはそういう支援が必要。そして抜本策としては、中小企業の支援をやりながら、最低賃金を時給1500円に引き上げる。あるいは、富裕層・大企業への課税をやりながら、消費税5%に下げる。こういう抜本策はしっかりやっていく」

(Q.玉木代表。広く給付をするという発言が多いですが、所得が多い人も低い人も、一律に配るということは、ばらまきになりませんか?)
国民民主党・玉木代表:「なりません。去年3月に、一律の10万円給付は、我が党が最初に提案させて頂きました。その時になぜそれを言ったかというと、スピードなんですね。今、マイナンバーですべての銀行口座が紐づけられてないので、所得の変化を国が把握する仕組みがなくて、やっと分かって去年の所得です。困っている人は分からないんです、今の仕組みは。ですから、緊急時にはいったん全員に配る、もし高所得者に配るのがダメだということであれば、確定申告時とか課税時に、後で返して頂く“逆還付”をするということで、とりあえずは、速やかに配るということを優先した方がいいと思います。今、岸田総裁が言いましたが、これからやるとしたら、配っても早くても、梅の咲く頃ですよ。間に合いませんから。だから、予備費で少なくとも、総合支援資金の3カ月の延長60万円とか、あるいは今、ガソリンが上がっている。160円を超えたらいったん、上乗せしている税金を取らない“トリガー条項”が凍結されているので、解除して、特に地方で車の生活しかできない人が困っていますから、こういったすぐにやることをやってもらいたい。これは政権しかできませんから、選挙中でもやってください」

(Q.政権の一員である山口代表。どんなことをお考えですか?)
公明党・山口代表:「コロナで直接困っている人に対しては、事業者は、事業を継続できるように。働いている人は、雇用調整助成金などで雇用が維持されるように。個人としては、生活に本当に困っている人は小口の資金を貸す。あるいは総合支援資金というのもありましたけども、貸付で、最終的には返せなければ除もする。そういうことで助けていく。これからは、感染が減少してきたので、もっと事業ができるようにしていくというところで、特に飲食・観光などで困っている方々に、感染終息を見届けたうえでGoToキャンペーンなどを開始していくことも必要だと思います。それから、さっきも申し上げた“未来応援給付”、マイナンバーカードの普及を目指すために、新しいマイナポイントを一律3万円でつける。こういうことをやりながら、社会を活性化させていく。仕事をやって収入を得ていくという方向に行くべきだと思います」


(Q.岸田総裁。中間層が分厚くなってほしいというのは、どの政党も基本的に変わらないと思います。分厚い中間層をつくるという具体的な手当・対策を教えて頂けますか?)
自民党・岸田総裁:「分厚い中間層を作る、つまり、分配の方の話ですが。私は『成長も、分配も』と申し上げています。いきなり、借金で分配するというのではなく、経済の成長があって、成長の果実を分配する。これが筋だと思います。その成長、今まで特に力をいれてきた自民党、公明党、与党が、分配と言い出すところに説得力があると思っています。成長を実現したうえで、分配。それでなおかつ、市場や自然に任せる“トリクルダウン”ではなく、政治も民間と協力しながら、成長も分配も実現していく。これが今までの経済とも違うという点だと思っています」

(Q.松井代表。成長と分配の両輪だということで、なかなか優先順位がつけにくいと思いますが、どう考えていますか?)
日本維新の会・松井代表:「岸田総裁の話を聞いていましたが、成長させた果実で分配する、当たり前の話です。でも日本は、この30年、成長してこなかった。ここをもう少し具体的に、どうしたら成長するのか。我々が言っているのは“規制緩和”です。日本に新しい産業を生み出していこうと。そして、その産業にチャレンジして頂くことで、新しい分野の仕事を作っていくことで成長させていく。今の規制の中では、なかなか新しい仕事にチャレンジできない状況がたくさん出てきています。例えば、農業もそうです。農業は成長産業だと僕は捉えていますが、企業が参入できない。この規制を、僕は安倍政権の時から何度も、改革・規制緩和してほしいということを申し上げてきたけども、これが実現できない。成長させるためには、改革で規制を解除・緩和して、新しい産業を生み出そうと。この果実をもって、我々は分配していきたい」

(Q.志位委員長。規制を撤廃していくという話に対して、基本的なスタンスとしては、共産党からあまりそういう声を聞いたことがありません。具体的な考えはありますか?)
共産党・志位委員長:「例えば、規制緩和ということで、労働補正の規制緩和やってきた。その結果、派遣・パート・アルバイト・非正規の働き方をさせられている方が若者では半分です。女性も半分、全体の4割。こういう、労働の在り方の劣化を作っているわけです。分配と成長という話で、一言言いたい。問題は、分配の中身が歪んでいる。ここにあると思います。この9年間で、日本の大富豪の資産は6兆円から24兆円に4倍になった。ところが、働く人の実質賃金は22万円減った。つまり、大企業や富裕層が分配を独り占めしてしまって、庶民のところに分配が回っていない。この歪みが問題。歪んだままでは成長もできない。これが今の実態だと思います。じゃあどうやって、歪みを正すかといったら、色んな方法はありますが、税は一つの大事な方法です。富裕層や大事業からきちんと税金を取って、消費税を減税する。これは再分配になりますよね。そのことをせっかく、金融課税の強化ということで、岸田総裁は話しましたが、総理になったとたんにトーンダウンしてしまった。それもやらないというのであれば、分配の歪みを正すことになりません。ここを正すことが一番大事」

(Q.枝野代表。立憲民主党は、成長戦略をどういう段階でどんな中身で実行に移していきますか?)
立憲民主党・枝野代表:「アベノミクスの9年間でも、株価が上がっただけで、実質経済成長率はその前の3年3カ月よりも悪いんです。これは別に、その前が良かったとは言いません。バブル崩壊からずっと日本の成長率は低いんです。これは一貫しています。何故かと言えば、富が偏っているからです。消費が伸びないからです。しかもアベノミクスは、例えば株価だけ上げたことで、超大金持ちをさらに大金持ちにした。大企業の内部留保を貯めることで、大企業だけ豊にした。規制緩和と称して、競争競争でむしろ格差を拡大させて、この間に富の偏在、歪みを大きくしているだけだった。ですから成長していない。成長させるには消費を伸ばす、消費を伸ばすためには、所得の低い人の所得を伸ばす。この方が消費が伸びるというのは、経済学の常識です。それから、老後や子育てや雇用の不安があるから、財布のひもがゆるまない。だから、実は社会保障と言われていた、老後や子育てや雇用の安心をつくることが何よりの成長戦略です」



◇“バラマキ批判”財政破綻は?
中間層を分厚くするために色んな政策が上がっています。ただ、こうした政策にはどうしても税金がかかります。日本の債務残高は、対GDP比で見ると1200兆円を突破しました。コロナ禍で財政出動をしなくてはいけない状況で、どの国も上がっていますが、先進国の中で日本は突出しています。
こうしたなか、財務省・矢野康治事務次官の批判が波紋を呼びました。

財務省・矢野康治事務次官:「バラマキ的な政策論議は深刻な問題。将来、必ず財政破綻するか、大きな負担が国民に」(文芸春秋 十一月号から)


(Q.枝野代表。立憲民主党は、時限的なものだけでなく“1億総中流社会の復活”を掲げていて、歳出も伴ってくると思います。そうしたうえで、矢野次官の発言をどう見ていますか?)
立憲民主党・枝野代表:「逆にですね、私たちは、再分配と言っています。それは、比較的ゆとりのある方には応分の負担をお願いする。具体的に金融所得課税をできれば来年度から、遅くとも再来年度には、25%にまず上げるし、近い将来、総合課税化すると言っています。それから、法人税も累進課税化して、今実際の負担率が低い、超大企業には応分の負担をして頂きます。私たちは、払って頂くところには、ちゃんと負担をお願いしたうえで、それを元手の中心に置いたうえで、分配すると言っています。残念ながら、与党の方から、そういう負担をお願いすることについての提案が全くないことを大変、残念に思っています。

(Q.枝野代表。借金で増やすわけではないということですか?)
立憲民主党・枝野代表:「まずは、再分配ですから、負担能力のある所に負担をして頂く。これがむしろ出発点です。給与をあげたところに税の恩恵を与えるなんて、アベノミクスで恩恵を受けてきた企業が一番恩恵を受けるんですよ。中小・零細企業は、すでに給料を払いたくても、給料を上げたくてもカツカツのところが大部分で、給料を上げる余力のあるのは、これまでに恩恵をたくさん受けてきた大企業にある。これは再分配の逆行です」

(Q.岸田総裁。腹を決めて、自分は社会のために負担をするんだという企業も個人もいると思います。政党が、時期は今は違うかもしれませんが『国民にここは負担してもらいます』という骨太の議論がもっとあっていいように思いますが、どう思いますか?)
自民党・岸田総裁:「まさにそのためにも、これからの、例えばコロナ禍からの出口戦略を、しっかりと道筋を政治家が示さないと、国民の皆さんも納得して、払うものも払わないということになりかねません。例えば、財政ということを考えても、財政は国の信頼の礎ですから、この財政安定の旗は絶対降ろしてはならない。

(Q.岸田総裁。そうすると、財務次官の発言そのものは否定しないということですか?)
自民党・岸田総裁:「もちろんです。ただ、内容・表現はいろんな意見です。様々な意見は尊重します。基本的に財政安定化の旗は降ろさないですが、順番を間違えてはならないと。まず今コロナ禍です。命がかかっている、暮らしがかかっている。こういった非常時においては、思い切って財政出動はしなければいけない。この段階では、借金もやむを得ないと、私は思っています。ただ、ここから先、経済をまた回し始めるわけです。そうして経済が回り出して、好循環が実現できてこそ、財政というのは考えられる。経済あっての財政ですから、その先に財政を考える。その段階にあたっても、いっぺんに借金を返すことは非現実的です。この道筋をしっかり示して、日本は将来に向けて、こういった財政の道筋を考えているんだということを、
国際的に示すことによって、市場や国際社会は日本の信頼をつなぎとめてくれるということですので、この道筋を、政治がしっかり示すことができるかどうか、これが政治の責任として問われているんだと思っています」

(Q.福島党首。耳に障りのいいことばかり言っていても、国民には『本当のこと言ってよ』という気持ちもあると思います。どう考えていますか?)
社民党・福島党首:「その通りで、分配と言いながら、岸田総裁は大企業や富裕層への課税、法人税・所得税の累進課税をもとに戻すことを言わないんです。分配ということであれば、応分の負担をしてもらうことは、やっぱり言うべきだと思っています。それを言わないで、こちょこちょと部分的にやるのは、本当の分配ではない。結局、成長と分配と言いながら、1960年代ですかと言いたいです。成長をまず先にと言っている間に格差が拡大し、貧困が増えました。新自由主義が労働補正の規制緩和をして、大企業は484兆円の内部留保を貯め込みながら、非正規雇用は4割、実質賃金は下がり続けています。この富の偏在、格差拡大、貧困拡大をむしろ政治がやってきたことを変えないという決意ですから、やはり政治を変えなくてはいけない。生存のための政権交代が必要です」



◇10年後 どんな日本に?

各党首には出演に先立って「10年後どんな日本にしたいか?」という質問に答えて頂きました。

『徹底的な公助で、何があっても心配しなくて良い国』
れいわ新選組・山本代表:「今この国を見てみて、コロナという状況でも、国は中途半端な支援しかしていません。10万円の給付金と、眼帯みたいなマスク2枚だけですよ。中途半端にどんどん絞っていく支援、これでは持ちません。先程も言いましたが、25年、デフレ脱却できない不景気の中でコロナがやってきた。この緊急事態を政治家の多くが認識していないんじゃないですか。成長しなければ分配もないなんて、こんな寝言を言ってもらったら困るんですよ、総理大臣に。25年、需要が失われ続けてきた。消費と投資ですよ。要は、皆が使えるお金が減っていったんですよ。どうしてか。労働環境が壊されたからですよ。非正規化が進んでいったからですよ。それに加えて、消費税のような事実上、法人税減税73%の埋め合わせをされていたのが消費税とも言えますよ。社会補償には、ほんの少ししか使われていないということを鑑みれば、でたらめみたいな税金。こういうことも色々合わさって、この国はどんどん衰退していった。一部の者だけにおいしい思いをさせるために、多くを貧しくさせていった。所得の中間値、中央値、25年で180万円低下していますよ。お金を出してください。大至急、国債発行です」


『すべての人の命と尊厳が守られる社会』
社民党・福島党首:「すべての人の命と尊厳が守られる社会。税金の取り方と使いみちを変え、雇用についても非正規雇用に歯止めをかけ、正社員化への道。そして、最低賃金1500円を実現し、皆が明日に希望を持てる社会を作りたいと思います。社民党がつくりたい社会は、すべての子どもが自分のなりたいものに挑戦することができ、すべての人の尊厳が守られる社会です。ですから教育費、例えば給食費無償化、高校の完全無償化、大学の授業料を下げる、奨学金給付型を基本にするなど、安心して何かに挑戦できる、ホッとできる社会を10年後に作りたい。気候危機にちゃんと対応し、脱原発・脱炭素、省エネ・再エネ、それで持続可能な生活と社会を10年後に本当につくりたいと思っています」


『他国に侵略されていない、強くて楽しい日本』
NHK党・立花党首:「10年後ということでやはり、我々政治家というのは国防・外交を特に考えなければいけません。日本を取り巻く諸外国を見たところ、特に中国が、積極的に侵略を繰り返していると考えています。そういう意味では、しっかりとした日本の国防・防衛に力を入れていかなければいけない。残念ながらそういうところにあると思います。専守防衛、当然のことです。侵略する必要性は当然ありませんが、敵基地攻撃能力といったものも保有する。そういった形で、10年後も安心に暮らせる、他国に侵略されていない日本をつくると考えています」


『まじめに働けば給料の上がる国』
国民民主党・玉木代表:「繰り返しになりますけど、給料の上がる国にしたい。10年後も給料が上がらない国だったら、日本は35年間、給料の上がらない国になります。給料が上がらないと結婚もできない、子どもを持てない、比例報酬の年金も上がらない。このことがすべての日本の問題なので、これどうやって克服するかということを、各党が競い合うべきだと思います。先ほどから分配の議論がありますが、分配の中身の議論より、分配の量の問題です。アメリカはGDP20兆ドルの国ですが、約3割の6兆ドル、財政出動をこれから数年間でやるということです。中身はともかく、日本も3割ぐらい、150兆円ぐらいの財政出動を大規模長期計画的にするんだとコミットしないと、景気は良くならないし、労働市場もタイト化していかないので、賃金上がらない。大胆に財政出動する積極財政に転換が必要です」


『持続可能な社会』
日本維新の会・松井代表:「冒頭に申し上げましたが、まさに今、日本は人口減少社会に突入しています。そして、超高齢化社会です。今でももう高齢化率は3割弱です。10年経つと3割強となってしまいます。20年、30年で4割近い人が高齢者になっている。社会保障を拡充しなければならない。ということは、社会保障制度を抜本的に見直していく。そのためにも財源が必要です。そのためには、増税をするためにも、様々な形の改革を、まず税金で生活する側がその覚悟を示す必要があると思います。先ほどからの増税の議論ありましたけど、国民から見れば、政治家はあまりにも優遇・厚遇され過ぎています。これをまず第1に見直してこそ、国民の皆さんに負担もお願いをしながら、制度を変えられると。我々はそう思っています」


『誰もが希望を持ち、自分らしく生きられる社会』
共産党・志位委員長:「私たちは弱肉強食の新自由主義は本当に終わりにして、国民の命と暮らしを最優先にする政治を作りたい。なぜこんなにひどい医療崩壊が起こったかというと、40年代に医療公衆衛生、切り捨てをやって来た。例えば感染症のベッド、保健所を半分にしてしまった。ここを拡充に切り替える。お医者さんの数も増員に切り替える。こういうことをやっていきたい。そして、この間の新自由主義の結果、働き方も壊されてしまっている。約5割の若者と女性が非正規で働いている。ですから、非正規社員から正社員への流れをしっかり作っていく。新自由主義と本当に決別して、命と暮らしを大事にする政治を作っていきたい。そんななか、気候危機を打開する、ジェンダーと労働、この2つの大問題を続けていきたい」


『子育てに安心の日本』
公明党・山口代表:「少子高齢化がどんどん進んで日本は世界一の水準です。10年後も子どもの人口が1割いくかどうかという予測です。そうなると、日本社会の歪みが進み、国際競争力を失っていきます。だからこそ、子どもを社会全体で育てていく、応援していく、そういう政策が必要です。未来応援給付は、コロナから立ち上がるための1回きりのものですが、10年後のことを考えると、子育てのトータルなやり方を制度化していかなければなりません。教育の無償化を進める。不妊治療に保険適用する。出産一時金を増額するなど、重ねて安心して子育てしやすい社会をつくっていくということが10年後、必要になります」


『多様性を認め合い、互いに支えあう社会』
立憲民主党・枝野代表:「結婚したら同じ名字になりたいという人も、結婚しても別々の名字でいいじゃないかという人も互いに認め合う。異性を愛する人も、同性を愛する人も互いに違いを認め合う。多様性、お互いの違いを認め合う社会。そのなかで、今、比較的豊かで恵まれている時には誰かを支える側に回る、代わりに、自分が困った時には必ず社会全体で支えられる。この役割を担えるのは政治しかありません。政治が多様性と支え合いをしっかりと担う。そういう社会をつくっていけば、この国の未来は大変明るいと思っています」

(Q.枝野代表。多様性は概念が広いですが、どういった具体策がありますか?)
立憲民主党・枝野代表:「まずは選択的夫婦別姓だというのは、もう30年も議論している場合ではありません。先進国の中で、結婚の時に片方に氏を変えさせるなんてことを強制させてくる国は、もう日本ぐらいしかありません。大変、時代遅れです。これぐらいすぐに決めましょう」

(Q.岸田総裁。選択的夫婦別姓は自民党の中でも意見が割れています。例えば、自民党・国政でなかなか物事が決まらないこともありますね?)
自民党・岸田総裁:「夫婦別姓の問題については、自民党の中でも議論はありますが、私も地元に戻り、多くの皆さんで車座になって議論する中にあって、当事者の話は十分分かりますが、国民の皆さんにおいても十分理解が進んでいるのでしょうか。例えば子どもが3人4人いて、氏は一緒なのか別々なのか、誰が決めるのか、いつ決めるか。こういったことについて話してみると、なかなか議論がまとまらない状況もあります。こういった状況だから議論を続けることが大事だと申し上げています」


『国民一人一人が安心して豊かに生き生きと暮らせる国』
自民党・岸田総裁:「10年後、私たちの国は強い自信を持って、前向きに生きられる社会でありたいと強く思っています。先程から経済、成長と分配によって賃金を上げて好循環を回す。あわせて、問題となっている格差の問題。これにしっかり目を向けて、国民の一体感を取り戻していきたい。外交安全保障においても、自らの国を守ることは大事なことですが、私たちが大事にしている価値観、自由・民主主義・法の支配・人権、この価値観を大事にできる国。なおかつ、環境問題と地球規模の課題に貢献できる。そのことによって、大きな存在感を示せる。こういった外交安全保障を行うなどによって、国際社会において10年後も、私たちの国は、前向きに自信を持って生きられる国でありたいと思っています。そういったことをこの言葉に込めさせて頂きました」


(Q.枝野代表。地球規模の問題が進行しています。日本は国際的にどんな役割を果たすべきでしょうか?)
立憲民主党・枝野代表:「日本は、例えば多種多様な自然エネルギーが国内であります。蓄電などの技術も一定の水準にあります。これをシステムとして安定的に動かしていく能力も、比較的高いものがあります。したがって、日本が先行して高い目標を立てて、原子力発電なきカーボンニュートラルを実現していく。これは日本の成長産業になるし、世界に貢献できるし、特に地域の活性化につながっていく。私は自然エネ
ルギー立国を目指していきます」


(Q.岸田総裁。地球規模の問題に、日本はどう立ち向かいますか?)
自民党・岸田総裁:「地球規模の課題に日本が貢献する。この地球規模の課題は環境だけではなく、平和もあれば、防災もあれば、核軍縮・中東和平と、地球規模の課題はたくさんあります。そこに日本が貢献することが大事だと。そこに日本の存在感を見出すことが大事だと。私が先ほど申し上げたのはそういうことです」


衆議院選挙は今月19日に公示され、31日に投開票が行われます。

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