副業とデジタル化で“地方再生”コロナ禍で脱首都圏[2021/11/11 23:30]

ウィズコロナの世界で、どう働いていくのか。白神山地のふもと・秋田県八峰町の小さな町で、新たな試みが始まりました。

八峰町の特産、ネギの出荷作業。高齢者ばかりの職場に、40代の男性がいます。まだ働き始めて、2日目だといいます。
近藤さん(43):「きのうからやったとこなので筋肉痛になった」
これまで、ずっとパソコンと向き合う仕事をしてきた近藤さんですが、元の職場を辞めたわけではありません。

近藤さんは、普段、愛知県に住んでいる技術系企業の会社員です。本業をオンラインで持ち込んで、副業として農作業にあたる秋田県の新事業に参加しています。
近藤さん(43):「本業とは全く関係のない業種に飛び込んで、実際に体動かして本業に返せる部分があればいいし、コロナがあって、いまのままの生活を続けていいのかなと。もう一度、自分が見つめ直すきっかけになった」

体験事業の名前は『半農半X』。秋田県が民宿での素泊まり料金と、5万円までの交通費を負担して、農作業については、時給850円を支払います。

秋田では、人口の減少が加速しています。最新の調査では、人口減少率が過去最大の減り幅となりました。
秋田県デジタル化統括監・坂本雅和氏:「人口減少のなかでも、人手不足という問題もある。経済、人も首都圏に集中している。その差、ハンデをどう埋めるか。デジタルという力を活用して、首都圏との差を補っていく」

デジタル化により都市と地方の格差を解消する岸田総理の肝いり政策、『デジタル田園都市国家構想』の初会合が11日、行われました。インフラの整備とともに、遠隔医療やスマート農業といった取り組みへの支援も検討します。

コロナ禍で定着したテレワークは、地方の中小企業にも恩恵をもたらしそうです。

群馬県は11日、地元企業を対象に説明会を開きました。テレワークでも可能な業務を、その分野に精通した首都圏の人材に副業で担ってもらおうという狙いです。社外の人材とテレワークで結ばれることで人手不足の解消にも繋がると期待を寄せます。
群馬県労働政策課・設楽修一課長:「アフターコロナということで、首都圏で副業を解禁する企業が増えた。その流れを県内の中小企業に、良い人材の確保の一つの選択肢として、利用していただくのは重要」

都会と地方の格差が取りざたされるなか、東京から離れることを選んだ企業もあります。
鶏肉の加工食品メーカー『アマタケ』は、茨城県つくばみらい市に拠点を移しました。40人以上いる営業マンの多くがテレワークで仕事をしています。

つくばみらい市は、都内まで電車で40分ほどとアクセスもよく、地価が安いため、経費も3割、削減できたといいます。
アマタケ・甘竹秀企社長:「東京にいても毎日の通勤の時間が大変だし、都内に通勤して、営業活動は郊外、時間が無駄。そういう効率を見直したかった。情報は手に入るし、地方に来たからうんぬんはない。逆に、いろんな発送で自由な空間で仕事ができる。都心部にいなきゃいけない理由はなくなる。若い人は、ここで生活しようという人はいっぱいいると思う。そういう意味でも、デジタル化は地方ほど進めていってほしい」

帝国データバンクの調べによりますと、1都3県から本社を移転した企業は、9月時点で276社。このままいくと、過去最多ペースになるとの見通しです。

特徴は、IT産業・サービス業の移転が多いということです。その理由は「場所を選ばない。オンラインで仕事ができるため」だそうです。コロナ禍で働き方の変化が出ていて、移転に躊躇しない企業が多くなりました。

これは、移転する場所にも表れています。 最も移転先に選ばれているのは大阪府ですが、4位の北海道に移転する企業が急激に増えたそうです。リモートワークが定着し、遠隔地も移転先候補になったといいます。

地方への関心は企業だけでなく、移住に関しても変化が出ています。内閣府の調査では、東京圏に住む20代の約4割が、地方移住に関心があるということです。その理由として、「人口密度が低く自然豊かな環境に魅力を感じた」「テレワークで地方でも働けると感じた」「ライフスタイルを都市部での仕事重視から地方での生活重視に変えたいため」などだといいます。

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