10万円給付『選択肢3つ』政府“迷走”で自治体奔走[2021/12/15 23:30]

子育て世帯への10万円給付をめぐり、これまで政府は、運用方法について説明するのは、補正予算の成立後としてきましたが、それを前倒し、15日に自治体側へ通知文書を出し、3つの選択肢を示しました。

(1)年内から現金10万円を一括給付。
(2)現金5万円を2回に分けて給付。
(3)現金5万円を給付した後、5万円分のクーポンを給付。

この3つから、地方自治体が無条件で選べるとしています。

岸田総理:「できるだけ早い支給を行うためには、どういう工夫をしたらいいのか。様々な検討のうえで、この制度を作り上げてきた」

しかし、急な方針転換に自治体は対応に追われています。

埼玉県志木市はもともと、21日に5万円を支給する予定でしたが、急きょ、10万円の一括支給としました。ただ、間に合わせるためには、15日中に全ての手続きを終える必要があります。

15日は議会最終日。追加で出した補正予算案は可決されましたが、予算を通して終わりではありません。手続きを進めるには、国の通知が必要だといいます。

志木市子ども・健康部、増田一男主幹:「準備は進めているけど、正式に国の考えと市が同じか確認できないので。きょう以降だと会計課も『ダメだ』と。(Q.きょうに通知が来ないと)そうですね。来て頂かないと」

待つこと4時間。届いた通知は“暫定版”でした。

志木市子ども・健康部、増田一男主幹:「“暫定版”ってなってるけど、正式な通知というよりは“Q&A”。正式な通知が来ないのは、不安になるところはあるけど、日にちがないので進めていくしかない」

内容を確認したうえで、ゴーサインを出しました。

志木市子ども・健康部、大熊克之部長:「本来は正式な通知をもって決裁。(正式な通知を)早く頂けることに越したことはない。私どもは最前線にいるので、正式な通知を早く出して頂ければ」

全額現金での一括給付を表明する自治体は他にも相次いでいます。

大阪府・吉村洋文知事:「大阪府内の43市町村のうち、クーポン給付は今のところない」

『年内に全額現金』静岡市・田辺信宏市長:「市民の皆さんの声ももちろんのこと、議会各派からも緊急の要望を頂いたので決断しました。(政府には)もう少し早く決めてほしかった」

名古屋市は、クーポン給付から全額現金に方針を変えました。

『年内・年明けに現金』名古屋市・河村たかし市長:「名古屋市だけクーポンだと言ってもしょうがないじゃないですか。現金の方が皆さん喜ばれるんだから」

“5万円は原則クーポン”としてきた政府。現金が貯蓄に回るのを避け、子育て関連の消費につなげる狙いがありましたが、その政策目的も失われた格好です。

一方、群馬県高崎市はクーポン給付を決めました。

『現金とクーポンを給付』高崎市・富岡賢治市長:「子育て世帯を応援したいということと、地域経済を活性化させたいということ、両方実現したい。クーポン以外考えられない。地元の経済のために使ってくださいというのは当然」

高崎市では去年7月、市独自の取り組みとして、5万円分の『子育て応援商品券』を15歳以下の子どもがいる世帯に支給しました。その時のノウハウをいかせば、事務作業なども無理なく行えるといいます。

地元の店からは歓迎の声も上がっています。

オカダ楽器・岡田智社長:「『クーポンが使える店』と表示しているので、それで多少お客さんが増えれば、うちとしてはありがたい」

ただ、去年の商品券をめぐり、こうした意見も聞かれました。

吉田衣料店・吉田文彦代表:「(商品券を)換金するのに大変だった」

制服や体操着などを扱う吉田衣料店では、今年の入学シーズン、7割が市の商品券での支払いだったといいます。

吉田衣料店・吉田文彦代表:「(仕入れ先への)支払いの面で大変。(客に)現金で支払いして頂いた方が、スムーズにメーカーにも払える」

18歳以下への現金給付も盛り込まれた今年度の補正予算案が、15日夕方、衆議院の本会議で、自民・公明両党などの賛成多数で可決されました。

立憲民主党・小川政調会長:「率直に申し上げて、迷走されたと思う。現金なのか、クーポンなのか。この辺の判断がもう少し早ければ、ずいぶん自治体の対応も違っていたのではないか。(クーポン給付の)967億円の事務費が計上したままになっているから、こうした点にも矛盾をはらんでいるのではないか」

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