尾身会長“ステイホーム不要”発言の真意は…政府分科会メンバーに聞く[2022/01/25 23:30]

25日に出された政府の『基本的対処方針』は、これまでと大きな変化はありませんでしたが、新たに「不織布マスク推奨」が書き加えられました。

政府分科会の尾身会長は、具体的にはウレタンマスクや布マスクではなく、不織布マスクを鼻までおおって着けることとコメントしていました。

すでに改定済みですが「濃厚接触者の待機期間を14日間から10日間に短縮」。いわゆるエッセンシャルワーカーに関しては、陰性を確認したうえでさらなる短縮が可能としました。ただ、国会では「原則10日間をさらに短縮すべき」との声も出ました。

「まん延防止措置区域では、県をまたぐ移動の自粛を求める」については、変わりませんでした。この移動に関しては、尾身会長が先週、「人流抑制ではなく、人数制限というのが一つのキーワードになると思います。ステイホームなんて必要ないと思います」という発言がありました。その真意について、尾身会長は25日「街が空っぽになるような広範で一律の外出自粛は必要ないと申し上げた。感染リスクの高いところへは、外出は避けて頂きたい」と改めて説明しました。

政府分科会メンバーで、日本医師会常任理事の釜萢敏さんに聞きます。

(Q.岸田総理も国会の答弁で「現実的な期間を検討する」と話していましたが、具体的な言及は非常に慎重でした。原則10日間の待機はどうすべきだと考えていますか)

釜萢敏さん:「社会を回していくために、さらに短縮しなければならない場面が来る可能性が高いので、そのことをしっかり踏まえて準備をしなければいけません。国立感染研の分析によれば、10日間の観察をした場合と、7日間に短縮した場合とでは、7日間の方が少しリスクが高いです。国はリスクを減らしたいということで、10日間を採用しました。しかし、今後はそのリスクを許容しても7日間、あるいはもっと短くしなければならない場面が来る可能性があると考えています」

(Q.7日にした時のリスクと、10日の状態で社会に与えるダメージのバランスをどう取るべきだと考えていますか)

釜萢敏さん:「今はやっているオミクロン株の知見がたまってきたので、そのことを踏まえると、現状では7日間に短くする方が良いのではないかと思っています」

(Q.尾身会長の「ステイホームは必要ない」という言葉の真意は、街が空っぽになるような厳しいステイホームはいらないという意味でいいですか)

釜萢敏さん:「感染は人と人とが接触して成立することは明白ですから、接触の機会を少なくすれば、感染拡大が抑制できることは明らかです。問題は、厳しい接触の抑制が続けられるのかどうかです。ずっと維持しようとすると、むしろ不都合の方が大きくなってしまう。尾身会長としては、そういう選択はできないという思いのなかでの発言であったと感じています」

(Q.政府と認識は共有していると受け止めてよいですか)

釜萢敏さん:「尾身会長自身は『政府の決定よりややエッジを立てた』と話しています。少し踏み込んでメッセージを出したと。尾身会長は、専門家が規制・自粛としか言っていないという思いも持っていたのかもしれません。少し方向を新たに踏み出したということではないかと思っています」

尾身会長は25日「コロナ対策分科会が去年11月から開かれていない。有効な検査のやり方や多くの軽症者がいるなかで、どう医療や社会機能を支えるか、定期的に議論すべきとの強い意見が出た」とも話しました。

(Q.オミクロン株に合わせた対策が求められているなかで、深い議論が行われていないという影響をどう考えていますか)

釜萢敏さん:「私たち構成員のなかでは日常的に色々な打ち合わせをしていますが、公式な対策分科会という席上で、色々な領域の人が参加するなかで、選択肢をたくさん政府に示すことが、政府が政策決定をするうえで大事だと思います。対策分科会の開催はぜひ必要だと思っています」

(Q.対策分科会が議論の場になっていない現状が問題だという認識ですか)

釜萢敏さん:「公式な場で議論をすると、議事録がすぐにできますし、内容も公表されます。専門家が今何を考えて検討しているかを国民の皆さんに示すことができます。そのすべてが政策にいかされるわけではないですが、その中から政府が必要な政策を選ぶことができるという意味で、対策分科会はぜひ定期的に開いて頂きたいと願っています」

基本的対処方針には盛り込まれていませんが、後藤厚労大臣は24日に新たな方針を明らかにしました。重症化リスクが低い人は、受診前に抗原検査キットで診断し、自宅で健康観察も可能。濃厚接触者で症状がある人は、検査せずに医師の判断で診断可能というもので、すでに通知が行われているということです。

(Q.分科会では「見放されたと思う人もいるのではないか」と、意見の食い違いがあったようですが、いかがですか)

釜萢敏さん:「あくまでも医者に受診したい、検査を受けたい人、相談をしたい人には、全力でしっかり応えたいというのが、私たち医師の強い願いです。その一方で、医療資源には限りがあり、受診しようと思って何時間も待って頂くことも不都合です。そのなかで選択が必要になってくるのかなというところです。基本は体制をできるだけしっかり整えるということであって、ある年齢層は重症化しないから受診しないで家にこもっていてというメッセージにならないようにしなければいけないと強く感じています」

(Q.オミクロン株は軽症・無症状の人が多く、インフルエンザと同じ扱いにしたらいいのではないかという声もあります。これについてはどう思いますか)

釜萢敏さん:「現時点で、新型コロナウイルスに感染した人と、季節性インフルエンザやかぜにかかった人が全く同じだというエビデンスは、私は全然知りません。まだ新型コロナウイルスの感染症は、厄介な病気であって、決して季節性インフルエンザと同等に扱えるものではないと強く感じています」

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