「国葬にこだわる必要なかった」岸田総理の誤算?出欠分かれる安倍元総理の国葬 解説[2022/09/15 23:30]

安倍元総理の国葬まであと12日となりました。

国葬には、G7からカナダのトルドー首相をはじめ、アメリカのハリス副大統領の参列がすでに決まっています。

韓国からは韓悳洙(ハン・ドクス)首相が出席すると、15日に発表がありました。

その一方で、総理大臣時代に何度も一緒に仕事してきた、ドイツのメルケル前首相は出席を見送り、アメリカのトランプ前大統領については、はっきりしたことが分かっていません。

岸田総理:「これから国連総会があり、国葬儀もあり、来月には臨時国会も予定されています。今、国の内外に誠に大きな歴史を画するような課題が山積です」

今月19日にはイギリスでエリザベス女王の国葬が行われます。20日からは国連総会で一般討論演説も始まるとあって、現職の各国首脳の来日はあまり多くなさそうです。

ちなみに、ロシアのプーチン大統領にはそもそも案内状を送っていません。

松野博一官房長官:「現・元三権の長、現・元国会議員、海外の要人、立法・行政・司法関係者、地方公共団体代表、各界代表、ご遺族、ご遺族関係者、報道関係者と基準を設け、それぞれの分類ごとに、例えば各界代表は各府省からの推薦を事務局で取りまとめるなど作業し、案内状をお送りしています」

安倍元総理の国葬には6000人が参列されることになっています。ただ、実際に何通の案内状が送られ、何人から出席の回答があったのか、その数字を事務局は明らかにしていません。

案内状が送られてきた人のなかには戸惑いの声もあります。

宮本亞門氏:「どうしてこれが僕に? 何かの間違いでしょう。政治家でもなく桜を見る会すら呼ばれたことがないのに。もちろん私は行きませんが。宮本亞門 #国葬反対」

都道府県知事のなかからも3人、出席を見送る人たちが出てきました。

静岡県・川勝平太知事は「すでに弔意を表しており、改めて参列はしない」として。長野県・阿部守一知事は「御嶽山噴火の犠牲者追悼式に出席するため」として。沖縄県知事はこう話しました。

沖縄県・玉城デニー知事:「国際社会から、安倍元総理に対する政治家としての評価、人として、リーダーとしての評価、半強制的な形で行われるのではという国民からの世論が、非常に厳しいものがあるのではないか」

立憲民主党は15日、泉健太代表ら党の執行役員による国葬への出席を見送ると決めました。政府に質問書を提出していましたが、その回答内容が不十分だったからとしています。

立憲民主党・泉健太代表:「(Q.欠席を決めるまでに葛藤は?)ないです。ないですね。政府がどう出るか、政府はどう国民と向き合うか。それによるということだけですね。(Q.弔意の示し方は?)事件現場でも弔意を示しました。増上寺の家族葬にも参列しました。政府が無理やり設定した機会に示さねばならないものでもなければ、その機会が唯一のものでもないと思います。きょうもある意味、安倍元総理には弔意を示したいし、あすもそれを示したい」

一方で、立憲民主党の支持団体である連合は、出席を表明しました。

連合・芳野友子会長:「弔意を示すことと、安倍政権の政権運営の歴史的評価・検証は分けて考えられるべき」

様々な考えが交錯する結果となった国葬。自民党内では、このような意見が出ているといいます。

自民党・遠藤利明総務会長:「『政府の決定が国民の皆さんに理解できないんではないか』と。今回はまず行う。そのうえでこれから、そうしたことがしょっちゅうあるわけではありませんから『そういう時にどうするか。しっかり党としても議論すべき』というご意見だったと思います」

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◆政治部官邸キャップ・山本志門記者

(Q.野党第一党の立憲民主党は、執行役員の欠席を決めました。官邸はどう受け止めていますか?)

官邸内では、国会での説明や質問状への回答など、立憲民主党などの要望を聞いてきたのに、理解できないという不満の声が聞こえてくるぐらい、焦りの色が感じられます。

ある政府高官は「参列のお願いは続けていきたいが、他にやれることもない」と手詰まり感も示していて、「もっと早い時期に、野党に根回しをしておくべきだった」という反省の声も官邸内からは聞こえてきます。

(Q.今回の国葬は、弔問外交も大事だと言われてきましたが、海外の要人の欠席が増えてきたようにみえます。この辺りはどう受け止めていますか?)

そこは少なからず誤算はあったようです。岸田総理は最近、国葬実施の根拠について「海外の弔意」に説明の重きを置いていますが、現時点で来日する首脳の数は、当初の見積もりと比べれば、それほど多くありません。

ある政府高官は、エリザベス女王の国葬の影響についても「かなり大きい。1週間の間で2度も海外の国葬に来られる国家元首は限られるので、今後、数が減る可能性は充分にある」と懸念を示しています。

ある外務省幹部が「海外からの弔問客にとっては、国葬か合同葬かは関係ない」と述べているように、外交上の意味合いでも「あえて国葬にこだわる必要はなかったのではないか」という意見も出てきています。

(Q.岸田総理としては、ここまでくれば粛々と国葬を営むことに尽きるという心境ですか?)

そうですね。今のところ、他に手立てがないのが現状で、なんとかこのまま乗り切りたいというのが、今の官邸の雰囲気です。

一方で、安倍元総理の事件から2カ月以上も後になる国葬の実施で、政府内からは「時間があるから大変なことになっている」「もっと早くやれば良かったのではないか」などの声が今さらになって出てきています。

この背景について、官邸関係者は「収容人数と前例を踏まえて武道館にしたが、今月27日しか抑えられなかった。場所をもっと柔軟に決めれば良かった」などと説明しています。

ここは、見通しの甘さを認めていますように、色々な誤算が積み重なったことも、今の難しい状況を作っているんだと思います。

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