【外交文書公開】天皇陛下の初訪中めぐり政府「日韓関係にしこりを残す」議論明らかに[2022/12/21 10:00]

 1991年の外交文書が公開され、天皇陛下の初めての中国訪問を巡り、政府が「日韓関係にしこりを残す」と指摘するなど、慎重に検討していた状況が明らかになりました。

 1991年8月、当時の海部総理大臣は欧米諸国などから強い批判を浴びた中国の天安門事件以降、G7=主要7カ国の首脳として初めて北京を訪問しました。

 中国への制裁が続くなか、結果的にこれが国際社会への復帰につながったと指摘されています。

 こうしたなか、21日に公開された外交文書では海部総理の訪中に向けた政府による事前調整の状況が明らかになりました。

 天安門事件から2年後となる当時の状況について、「中国に対する欧米の目がいまだ厳しい」とし、海部総理による友好親善目的での地方視察を見合わせました。

 さらに、中国側が改めて天皇陛下の中国訪問を招請した際の対応については、政府内でも議論が分かれていました。

 「戦争の過去の清算のためいつかは行わないとならない」と位置付けたうえで、「中国の現指導部であれば反天皇の国民感情をコントロールして間違いなく成功に持っていくことができる」などと前向きに捉えた分析も出ていました。

 一方で、「中国側に政治的に利用される危険がある」としたほか、「天皇陛下が、韓国よりも先に中国を訪問するのは、日韓関係に大きなしこりを残す可能性がある」などと慎重に検討されてもいました。

 また、海部氏の訪中後に記述された文書では、李鵬首相が、晩餐(ばんさん)会の場で「来年の天皇陛下訪中の実現に掛ける中国側の気持ちは非常に強い」と伝えていたものの、正式な会談の場での言及は見送られていました。

 この背景について「再び話題にすれば、日本側が困るかもしれないという心遣いがあった」と分析するなど、実現に向けた中国側の強い意欲がうかがえます。

 その後も調整が続けられ、天皇皇后両陛下による初めての中国訪問は、日中国交正常化から20周年にあたる1992年10月に実現しました。

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