“対中国”警戒監視の最前線基地に密着 P1哨戒機内にカメラ!対潜水艦訓練も[2023/01/16 16:56]

 鹿児島県にある海上自衛隊の鹿屋基地。ここには中国の海洋進出などを警戒監視する部隊や哨戒ヘリの脱出訓練装置などが置かれています。隊員たちの過酷な訓練に密着しました。

 第2次世界大戦の際には、神風特攻隊の基地として最大規模を誇った、鹿屋基地。ここでは、海の上でトラブルになり、ヘリコプターが緊急着水した場合の、水中での脱出訓練が行われます。プールの大きさは15メートル四方で、深さは6.5メートル。この装置には全国各地から、陸海空の自衛隊員のほか、海上保安庁、警察、消防、自治体のヘリパイロットら2万人以上が訓練を行っているということです。

 脱出訓練の種類は全部で8種類あり、傾いたり、回転したり、様々なケースを想定して行われます。また、管制室には監視カメラで、機内、そして水中の様子をモニターでき、緊急時にも対処できるようになっています。映像はVTRでも収録。訓練には、まず健康チェックシートに現在の状態を書き込み、血圧を測ります。最高血圧が150以下にならないと参加できません。

 安西陽太記者:「高すぎでしょう」

 何度か測り、ようやく血圧は150に。記者が訓練を体験するのは2つのモード。一つは沈んでから回転して脱出するパターンと、もう一つは45度の角度でそのまま水面に落ちるパターン。飛行服に着替え、プールに入ります。水温は28℃。訓練参加には、顔を30秒水の中につけて息を止めるのが一つ目の条件です。そして、二つ目の条件は飛行服を着たまま、15メートルを往復します。

 安西陽太記者:「日頃の運動不足がたたっていますね…」

 さらに、救命胴衣のベストを飛行服の上に重ねて着ます。準備が整いました、潜水救助員もプールに入ります。気合を入れるため、発破を掛けます。水にぬれた服は重く、階段を上る足取りも一歩一歩に時間がかかります。

 安西陽太記者:「結構高いです」

 高さは4メートルほど。機体の中に入ると…。

 安西陽太記者:「狭いですね、結構。頭何回も打った」

 ベルトを締めます。緊張はピークに。そしていよいよ…。必死に脱出します。ゆっくりと救命ボートまでたどり着き、一つ目の訓練終了。

 安西陽太記者:「何が何だか分からない、もう真っ白です。一回上がるんですよ、急にスッと落ちて、下から水がブワーっと来る時には真っ白ですね。頭がすごく痛いです。深いですから水圧がすごい来るんですよ。びっくりしたな、もう。パニクりますね。パニックになっちゃってもう分からないです」

 続けて2つ目のモード、45度で落下するパターンでは。

 安西陽太記者:「すごい傾いている。スキーの上級コースみたいな形で、下をのぞくような形になるんですけれども、水がバーッと目の前に来るんですね。皆さん、本当に死と隣り合わせというような、任務の現状がこれでちょっと垣間見えたかなと。過酷な訓練を経験しているというのが実感できました」

 この鹿屋基地は、海洋進出を強める中国を念頭に、警戒監視活動の部隊が置かれています。今回、その活動を担うP1哨戒機の訓練にも、カメラが密着取材しました。P1は、海上自衛隊が誇る最新鋭の純国産の哨戒機です。

 機内には11人が乗員。パイロット2人と機上整備員、それに戦術や捜索を指揮する戦術航空士とその補佐。レーダーやセンサーを駆使するミッションクルーが4人に、魚雷などの装備品やシステム管理をする隊員2人です。

 主な任務は、日本周辺の不審な船や外国の艦船、さらに海の中にいる潜水艦を見つける役割を担っています。機体に備えられている高性能カメラやレーダーを使い、船舶をチェック。さらに目視でも改めて確認します。船舶を監視する際は、かなり高度を下げます。機体が何度も左右に旋回するため、大きく揺れることがあるといいます。

 鹿屋基地P1哨戒機部隊・津田怜男2佐:「やはり機動性は哨戒機に必要な能力ですから」

 長くて半日以上、搭乗していることもあるという隊員たち。訓練の合間に食事を取ります。お弁当は2種類あり、同じ任務を担当する隊員は必ず別々の種類の弁当を食べ、食中毒などに備えます。機内にはトイレも1つあり、自衛隊ならではの工夫も。

 鹿屋基地P1哨戒機部隊・津田怜男2佐:「ひねって頂いたら手洗い水がそのまま、(小便器に)流れるような(仕組みに)エコロジーです」

 続いて、緊張感が高まる訓練が始まります。

 「オールクルー機長、予定通り45分から対潜訓練を実施していく」

 鹿屋基地のP1哨戒機部隊の、潜水艦捜索訓練にテレビカメラが入ったのは初めてです。潜水艦を探すため、潜望鏡が出た後の波に見立てたマーカーを海に投下。いったん、離れた場所に移動した後、再び接近してレーダーや目視などで潜水艦を探します。

 鹿屋基地P1哨戒機部隊・津田怜男2佐:「今11時方向に見つけたと、報告がありました」

 海面に浮かぶ、緑色のマーカーを見つけました。そして…。

 「潜水艦ロストした。ネクストソノブイによる追尾を実施していく」

 次の段階は、潜水艦が海の中に潜った想定に。レーダーから消えたため、音を探知するためのソノブイを投下し、潜水艦を追い掛けます。レーダーやセンサーを使って潜水艦を発見。位置を細かく特定していきます。

 「オールクルー攻撃許可受領した。(敵潜水艦に)攻撃に向かう」

 最後の段階は、潜水艦へ魚雷攻撃を行います。P1哨戒機は対艦ミサイルや魚雷を搭載しています。

 「ターゲットノース10ノット、まもなく攻撃実施する。ただいまの攻撃はヒットと判定する。それでは対潜訓練を終了とする」

 飛行隊長の津田怜男2佐は、中国などと日々対峙(たいじ)する、国防の最前線での訓練について…。

 鹿屋基地P1哨戒機部隊・津田怜男2佐:「当然、相手もですね、ミサイルを発射している可能性はある。そこらへんはやっぱり緊張感はありますね。ミスが許されないので」

 実際の飛行以外にも隊員は、様々なシチュエーションを想定するため、陸上でも訓練を積み重ねています。P1専用のシミュレーターも配備されている鹿屋基地。

 安西陽太記者:「このシミュレーターには(実際の)P1哨戒機には付いていない、複数のカメラが付いているということです。訓練生の視線や手順を確認できるということです」

 記者もシミュレーターでの操縦を体験させてもらいました。高度が低すぎると…。

 安西陽太記者:「ワーニング・カウジョンと出ていますね。非常にけたたましい音が鳴っています。速度が出すぎているんですかね?アラートが出ているので速度を下げています。ごめんなさい、今、下げていますから。落ち着きました。あ、逆か?まただ、また出ちゃいました。すみません。あー良かったです」

 高度が低すぎると…。

 安西陽太記者:「ぶつかってしまいました、開聞岳に。本当にプルアップとか、実際の音が出るわけですね。非常にびっくりしますね、急に大きな音が出ると。そうやって注意を促しているってことですね」

 また天候も、雨や雷など、自由自在に変更が可能です。

 安西陽太記者:「雨雲が出てきましたね。かなり激しい雨が鹿屋基地上空に降り注いでいます」

 実際の搭乗ではできない事故などの想定も、シミュレーターで行うことができます。

 指導官の隊員:「火災、エンジンが燃えた時とか、操縦が不能になった状態とか、このシミュレーターを使って、実際に実機でもそういった場合に出くわした時でも、対処を円滑にできるように」

 日々、変化する日本周辺の安全保障環境。2023年1月に入ってからも、中国の偵察無人機が東シナ海と太平洋を往復。2日連続での飛行に、自衛隊はスクランブル発進を行いました。こうした中国軍の活動の活発化に自衛隊は警戒監視を継続しています。より過酷な状況になっていることについて、隊員たちは。

 鹿屋基地所属の女性隊員:「(Q.仕事はきつい?)きついんですけど、やっぱり仕事ができてまた先輩に褒められて、国に貢献できるというのを考えたらすごくやりがいを感じる仕事だなと」

 鹿屋基地所属の男性隊員:「(Q.中国の活動は多い?)任務をやっているなかでも身に感じて海洋進出が多くなっているというのは日々感じ取っていますね」

 鹿屋基地所属の女性隊員:「私は元々、出身が鹿屋なので、配属された時はすごくうれしく思いましたし、任務も難しいことだらけなんですけど、すごく楽しくさせてもらっています」

 鹿屋基地所属の男性隊員:「やっぱりテレビとかで見ていた尖閣諸島に近い場所、基地ということで業務量も多いのは予想していたんですけれども、日々生活していくなかでやりがいを感じるので」

 鹿屋基地の哨戒部隊を率いる岩政秀委1佐は、中国のこれまでの行動と今後の動向について。

 鹿屋基地P1哨戒機部隊・岩政秀委1佐:「2010年代に入り、中国の経済発展に伴う船の増加ですね。当然、船が増加してくると東シナ海だけに収まらず、太平洋上にどんどん出てくる。それが2020年代に入って、もう今は普通にいるっていうのが常態化している。そういうところを見ると、彼らの活動が活発化している。これは中国だけではなくてロシアも同じような状況だというふうに認識しています」

 先月も中国とロシアの軍艦や、戦闘機が合同で軍事演習を行うなど中ロの連携はますます強まっています。

 鹿屋基地P1哨戒機部隊・岩政秀委1佐:「やはり脅威というのはいきなり起きるわけではありませんので、少しずつ少しずつ何かしらの兆候が見えてきます。それはやはり毎日の哨戒活動によって、きょうはどういう行動を彼らが取っているのかというのを、一つ一つ見ていかないと変化に気付けないというふうに思います」

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