【ノーカット】侵攻から1年 岸田総理会見「2月24日は忘れてはならない日」[2023/02/24 19:30]

 ロシアによるウクライナ侵攻開始から1年となるのに合わせて、岸田総理大臣が会見を行いました。G7=主要7カ国の議長国としての立場も踏まえ、ロシアに対する制裁やウクライナへの支援をはじめとした取り組みなどについて話しました。

1年前の今日、ロシアによるウクライナ侵略が起こりました。
現代を生きる我々にとって、この2月24日という日は忘れられない、いえ、忘れてはならない日となりました。
ロシアの戦車やミサイルが、市民が住む住宅や橋や発電所を無慈悲に襲い、無垢の市民が殺害される暴挙に世界中が愕然としました。
あれから1年、正義を取り戻す戦いは予断を許さない状況が続いています。
我々はウクライナ国民が自らの国はみずから守るという強固な信念と勇気を行動で示している姿を目の当たりにしています。
こうした行動の支えとなっているのは諸国民の連帯の心です日本国民の皆さんにもこの1年間、ウクライナ国民の連帯を明確に示していただきました。
2000人を超えるウクライナからの避難民を受け入れ、生活支援等を表明いただいた自治体は300以上、職場の提供などの支援を表明いただいた企業は800社以上に上ります。

また政府としても今般、日本に身寄りのないウクライナからの避難民の方々への生活費等の支援を1年延長することを決定したところです。
今回の暴挙に伴うエネルギーや食料品価格の高騰で多大な影響を被っている中での日本国民の連帯の姿勢はウクライナ国民に必ず伝わっているものと思います。
総理大臣としても心より御礼を申します。
先ほど申し上げたとおり戦況は予断を許しません。
国際社会の平和と秩序を取り戻すため引き続き国民の皆さんのご理解とご協力を切にお願いを申し上げます。
力による一方的な現状変更の試みを断じて許すことがないよう、ウクライナに対する支援とロシアに対する制裁を着実に実施をし、国連憲章を含む国際法といった法の支配に基づく世界の平和秩序を回復しなければなりません。

そうした国際社会の固い決意の中核となるのがG7です。
我が国は本年のG7議長国です。
そして5月の広島サミットの主催はもとより、1月から12月までの1年間を通じて、ウクライナ問題に対する結束を議長国として主導してまいります。
同時に日本は今年から国連安保理非常任理事国を務めており、国連安保理での役割もしっかりと担ってまいります。
本日は、この後23時からゼレンスキー大統領をお招きし、G7首脳テレビ会議を私が主催をいたします。
欧米の武器支援の動き動きが広がる一方、ロシアが新たな攻勢拡大に出つつあるなど、戦況は緊迫の度をくわえています。
本日はこうした最新の状況についての意見交換、G7の結束確認、復興に向けた支援のあり方などについて、首脳同士で集中的に議論を行いたいと考えています。
また対ロ制裁について、G7として新たな制裁の考えを示したいと考えています。

さらに、第3国によるロシアへの軍事支援が指摘されていることも踏まえ、G7としてそうした支援を停止するよう呼びかける考えです。
G7において日本はアジアからの唯一の参加国です。
平和のルールに欧州もアジアもありません。
北朝鮮による頻繁なミサイル発射など、日本を取り巻く情勢も緊迫の度を強めています。
またエネルギーや食糧の価格高騰はアジアをはじめ世界各国を直撃しています。
日本は平和秩序を守るための結束をアジア各国に働きかけ、同時にアジア各国の本音も踏まえた議論を米国欧州の首脳と行ってまいります。
そして日本は世界唯一の戦争被爆国です。
過去77年間の核兵器不使用の歴史が、ロシアによる核兵器の、核兵器使用の威嚇によって汚されることはあってはなりません。
今週プーチン大統領が新戦略兵器削減条約の履行停止を述べたことに強い懸念を表明いたします。

核軍縮の取り組みを続けることがますます重要となっており、G7における議論を先導してまいります。
残念ながら、現時点ではロシアによる侵略行為との戦いの終わりは見えていません。
そうした厳しい現実を前に、ウクライナが最も必要としているものはロシアと戦う装備品です。
日本は防衛装備移転3原則に従い、防弾チョッキやヘルメット、ドローン等をウクライナに供与してきましたが、殺傷性のある装備品は提供することには制約があります。
しかしだからこそ、日本は日本の強みを生かしウクライナの人たちに寄り添った支援をきめ細かく実施してきています。
侵略直後からこれまでに約9億ドルの人道・復旧・復興支援と、先般追加表明した約55億ドルの財政支援を含め、計71億ドルのウクライナ関連支援を表明してきました。

今後も日本ならではの形で、切れ目なくウクライナを支えていきます。
具体的には、まずロシアによるエネルギーインフラ等への攻撃が継続する中、ウクライナの電力不足への国際的対応が求められています。
我が国は米国と連携しエネルギー分野支援に関するG7プラスの枠組みでの協力を主導していきます。
例えば、日本が進めてきている約1500台の発電機の供与は、数十万人のウクライナの人々に厳しい寒さの中で暖を提供しています。

また、より広範な人々が裨益(ひえき)するよう、10機程度、程度の大型の変圧施設や約140台の電力関連機材の供与を進めていきます。
戦闘が終わった市では、地雷や不発弾を除去して安全を確保し、復旧・復興を進めることが重要です。
過去にはカンボジア等での地雷除去や復興協力の長年の経験があります。
そこで得た知見を活用しつつ、日本の協力により経験を積んだカンボジアとともに、ウクライナに対し地雷探知器の使用方法に関する研修を開始しました。
ウクライナが一刻も早く地雷状況を本格的に進められるよう、研修を継続するとともに地雷探知機や地雷除去機の供与を進めていきます。
また復旧復興の前提となるがれき処理のため、建機の供与も進めていきます。
ロシアによる、侵略が始まる前、ウクライナは世界有数の穀倉地帯として世界各地に農作物を供給していました。

ロシアの暴挙でその供給が阻害されたことにより国際的な食糧危機が発生しています。
日本はこれまでもウクライナにおける、穀物の貯蔵能力の拡大支援、影響を受けている地域向けの食糧支援を実施してきました。
しかしウクライナが再び世界の食料庫として穀物を世界に供給できるよう支援していくことこそが重要です。
その観点から、ウクライナ産のとうもろこし等の種子を調達し、女性、若者、零細農家を優先して供与することによって、ウクライナの農業生産能力の回復を支援することも準備しています。
ウクライナの農業生産、輸出能力を回復させる取り組みはグローバルサウスとの関係でも重要であり、今後とも日本ならではの支援を拡充していく考えです。
加えて、教育やガバナンス強化、文化財保護等、ウクライナのニーズに応じた日本ならではの知見を生かした多岐にわたる支援を実施していきます。

またロシアによる暴挙の影響を受けている、ウクライナの周辺国を支えていくことも重要です。
多くの避難民の流入やエネルギー価格の高騰などの困難に直面しているポーランドやモルドバなど、周辺国に対する円借款の供与など実施してきています。
今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない、私は強い危機感を持って強力な対ロ制裁とウクライナ支援を実施してきました。

そしてG7、G20東アジアサミット、ASEAN首脳会議、さまざまな会議や首脳会談で強く訴えていきました。
侵略を受けているウクライナを支えることは、ウクライナへの支援であると同時に、力による一方的な現状変更を認めず、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとのわれわれの決意を行動で示していくことです。
世界が歴史的転換点にある今、日本独自の立ち位置を生かして外交力を発揮する。
更に、有志国と連携して次の平和秩序作りに貢献をしていく。
5月のG7広島サミット、9月のインドG20、11月の米国APEC、年末の日本でのASEANとの特別首脳会合など、本年はインド太平洋地域で重要な国際会議が次々と開かれます。
国際社会の平和と安定を取り戻すべく、このアジアから世界に信頼される日本の外交力を大いに発揮するよう最大限努力いたします。
日本への期待は大きい。日本にとって大きな機会でもあります。
そのスタートとして、今晩G7首脳と充実した議論を行いたいと思います。

ウクライナ情勢が依然不透明な中、世界的な物価高騰に引き続き警戒が必要です。
これまでの累次にわたる対策に加え、1月からは電気ガス料金の軽減がスタートしていきますが、現下の情勢を踏まえ、今朝、物価賃金生活総合対策本部を開催し、電気料金の値上げ申請への厳格かつ、厳格かつ丁寧な査定などを料金抑制に向けた取り組みや、飼料価格の激変緩和対策等を指示いたしました。

ロシアによるウクライナ侵略開始から1年を迎えるにあたり、本日はウクライナ対策を中心にお話をさせていただきました。
国民の皆様には多大なお力添えをいただくことになりますが、国民生活を守り支えるための政策は遺漏なくしっかりと講じてまいります。
国民の皆様のご理解とご協力を賜りますよう、お願いを申し上げます。

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