「子どもの死を防ぎたい」死亡原因を検証し再発防止へ…課題は法整備[2023/09/09 12:27]

 事件や事故、虐待などで子どもの命が奪われる例が後を絶ちません。そのようななか、死亡した原因を検証し、救えるはずの命を救おうというチャイルド・デス・レビューと呼ばれる取り組みを取材しました。

 この日、千葉大学で行われていたのは、子どもが亡くなった原因に迫るチャイルド・デス・レビューです。

 岩瀬博太郎教授:「子どもの死を予防できるかを考えるという趣旨ですので、ぜひ活発な議論をいただけたらと思います」

 千葉大学で法医学を専門とする岩瀬博太郎教授や千葉文子講師らは、司法解剖などで子どもの死を目の当たりにするなか、同じような死を防ぎたいと、8年前からチャイルド・デス・レビューを行ってきました。

 この日は、虐待が疑われるケースを取り上げ、関わった医療機関や自治体、それに警察なども加わって司法解剖結果など、それぞれ得た情報を出し合いました。

 子どもが亡くなった原因を検証することで具体的な予防策が出たものの、それを実現するには“大きな壁”が。

 岩瀬博太郎教授:「きょうは皆さんには守秘義務をかけさせていただきつつ…」

 大学内部の研究であるため、守秘義務があることを説明し、議論された内容や予防策は非公開としました。

 岩瀬博太郎教授:「予防可能性については話をしているんですけど、我々の提言を社会にどう伝えていくかというところまではできていないですね」

 チャイルド・デス・レビューに関して、政府は遺族の同意を必要としているほか、プライバシー保護などの観点から、司法解剖の結果をはじめ捜査情報を扱うことは難しいと判断しています。(厚生労働省作成の「都道府県ChildDeathReview モデル事業の手引き」第2版より)

 これに沿うと、岩瀬教授の研究結果は社会に提言できないのです。

 ただ、欧米などではすでにチャイルド・デス・レビューには公益性があるとして、捜査情報などを扱うことができるとされています。

 公開した予防策で死亡事故を減らせた成果も報告されています。

 岩瀬博太郎教授:「チャイルド・デス・レビューを行う上で必要となる情報収集、検証、予防策を社会に伝えるというすべての段階で、結局今の日本の仕組みは弊害だらけですから、法制化がないと日本全国でやるというのは無理だと思いますね」

 岩瀬教授は、実効性のある予防策を打ち出すためには、死因の特定につながる司法解剖などの情報が必要だとして、具体的な法整備を求めています。

 これに対して、こども政策担当大臣は。

 小倉将信こども政策担当大臣:「CDR(チャイルド・デス・レビュー)の取り組みが加速をするよう、関係団体等の連携を図りながら取り組んでいきたいと思っております。今年度、関係省庁等と連携しながら新たに法学者を加えまして、個人情報保護法や刑事訴訟法に関する整理を実施することといたしております。立法の必要性の有無も含めて検討させていただきたいと思います」

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