砂漠は水素の宝庫?“産油国UAE”と“技術国日本”がタッグを組む「運搬船」【SDGs】[2023/09/22 14:00]

 テレビ朝日は「未来をここから」プロジェクトの一環で気候変動などSDGs企画をお伝えします。22日のテーマは「気候変動に具体的な対策を」です。中東の産油国とタッグを組む世界初の日本の水素技術についてお伝えします。

 次世代エネルギーとして注目される「水素」を運ぶ大型液化水素運搬船。タンク内をー253℃に保つ世界初の技術により、水素を体積が小さくなる液体にしたまま、効率良く大量に輸送できると期待されています。

 川崎重工が試験運行を重ね実用化を目指しています。

 こうした水素技術を巡り、日本政府が前面に立つ形で協力関係を強化しているのがUAE=アラブ首長国連邦です。

 川崎重工は7月、岸田総理の外遊に同行し、UAEの石油会社最大手「ADNOC」との間で水素の供給で協力していく契約を結びました。

 川崎重工 水素戦略本部 山本滋副本部長:「UAEで作った水素をどうやって世界各国に運んでいくかという1つの選択肢として提供できるかなと思っています。作っただけではやはり水素社会は実現できません。運んで需要地に持っていくというところですね、そこのところで我々が貢献できる。液化水素運搬船、それは彼らもすごく期待しているところはございます」

 世界屈指の産油国として知られるUAEはいま、国を挙げて脱炭素に取り組んでいます。

 砂漠地帯には太陽光パネルが敷き詰められ、そこで生まれた電力から水を分解することで水素を大量に製造できる将来性があると言われています。

 欧米や中国も次々と事業に参入し、水素開発競争の様相を呈しています。

 UAEの潤沢なオイルマネーを背景に進むこうした動きに、日本政府も技術開発やビジネス展開につなげたいとして、日本企業を後押ししているのです。

 川崎重工 水素戦略本部 山本滋副本部長:「UAEは太陽光など、脱炭素の方法で作れる水素がたくさんあります。日本の再生可能エネルギーはまだまだ高いので、その高いエネルギーから水素を作ろうとするともっともっと高くなってしまう。安く作れる、その1つの方法がUAEでもあるんです」

 安く作られた水素を大量に運ぶことで安く活用していく。資源があふれるUAEと資源に乏しい日本、という売り手と買い手として築かれた関係が、次世代のエネルギーにおいても引き継がれようとしています。

 その関係の強化に、政府関係者はこう期待をのぞかせました。「中東はロシアとか中国とも関係が強い。特に経済的には、中国はかなり大きな存在です。ただ、UAEからすると日本も中国も取引先として仲良くしたいという感じですよ。それでも日本の技術はかなり評価されてるのでそこは大きいかもしれないですね」

 今後、水素運搬船の技術は世界をどう変えていくのでしょうか。

 川崎重工 水素戦略本部 山本滋副本部長:「(Q.将来、その船が世界各国でできた水素を運んで各国をつなぐ?)いま、100隻近くLNG(液化天然ガス)を日本に運ぶ船が往来しています。それが、2050年にはLNGから水素に変わって、こういう液化水素運搬船が往来している世の中になっている。それで脱炭素に貢献できるんじゃないかなと思っております」

 この液化水素運搬船は7年後の2030年の実用化を目指しています。

 日本は、水素は「脱炭素の鍵」になるとして、2040年に今の6倍となる1200万トンを活用することを目標にしています。

 UAEから石油だけではなく水素を輸入する日も近いかもしれません。

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