裏金問題に関わった自民党議員の公認をめぐり、石破総理が10月6日、方針転換を打ち出した。これまで原則公認で調整していたが、新たな方針で“非公認”となる議員が出るほか、この問題で収支報告書に不記載があった者は、党内処分の有無を問わず、全員、比例名簿への登載を認めない。専門家は「政局の号砲が鳴った」と指摘する。
1)追い詰められていた石破総理 決断を迫ったのは…
これまで自民党は派閥の裏金事件で処分された議員を次の衆院選で原則公認し、比例重複の立候補も認める方向で調整していた。
久江雅彦氏(共同通信特別編集委員)は、今回の方針変更について、以下のように言及した。
末延吉正氏(ジャーナリスト)は、石破氏の党内基盤の弱さを指摘しつつ、以下のように述べた。
2)新方針で「非公認」増・比例重複ナシ “石破総理の賭け”どう出るか
石破総理が示した、公認についての新方針は以下の通りだ。
1)「選挙における非公認」よりも重い処分を受けたものについては、非公認とする。
2)選挙非公認よりも軽い処分であっても、現時点で引き続き処分が継続しているものについては、政倫審で説明責任を果たしているものを除き、非公認とする。
3)処分を受けたその他の議員のうち、説明責任が十分に果たされず、地元での理解が十分に進んでいないと判断されるものについても、非公認とする。
その上で、派閥の政治資金パーティーをめぐる不記載があった、その他の議員についても比例名簿への登載はしない。
非公認よりも重い処分については、離党勧告を受けた塩谷氏と世耕氏はすでに離党している。党員資格停止1年の下村博文氏、西村康稔氏は、今回の衆議院選挙では非公認となる。さらに、党員資格停止6カ月の高木毅氏は、10月4日に党員資格が復活してはいるものの、1)の規定に該当し、非公認となる。2)に該当して非公認となるのは、萩生田光一氏、三ッ林裕巳氏、平沢勝栄氏の3人で、いずれも「党役職停止1年」の処分を受けたものの、政倫審には出席していない。
加えて久江雅彦氏(共同通信特別編集委員)は、「派閥の政治資金パーティーをめぐる不記載があった議員が、今回確実に非公認となる人を除いても40人ほどいる。この人たちは、処分を受けたか受けていないかに関わらず、公認はするものの、比例名簿には載せない。つまり、重複立候補させないことが今回の方針の最大のポイントだ」として、以下のように指摘した。
今回の新方針に関して、中北浩爾氏(中央大学教授)は、「2つポイントがある」と指摘した。
さらに、誰が非公認にならなかったかというところを見ると、岸田前総理や菅氏とそれぞれ関係の深い人や、石破氏を応援した人たちは、今回の対象から除かれている。非公認となる荻生田氏は、高市氏を応援するような発言を繰り返していた。
・「党の役職停止 半年間」の処分を受けた中根一幸氏、菅家一郎氏、小田原潔氏
・「戒告」の処分を受けた細田健一氏
・処分は受けていないものの不記載があった越智隆雄氏、元議員の今村洋史氏
越智氏はすでに立候補しない意向を示している。
3)「政局の号砲が鳴った」自民党内の隔たり…野党の戦略は?
久江雅彦氏(共同通信特別編集委員)も、自民党内の隔たりに注視しつつ、以下のように指摘した。
実は、きょうをもって、選挙でなく、政局の号砲が鳴った。自民党内における経済政策・外交政策の違いは非常に大きい。衆院選後の議席次第で、色々な動きが出てくる萌芽が含まれているように思う。野党第一党との間よりも、自民党総裁選における論争の方が大きな溝があった。衆議院の勢力を見ると、過半数は233。焦点は10月27日の投開票結果その一点だ。27日、自公で過半数を取れるのか、自民党が単独過半数を割るのか。「政局含み」どころか、「政局とワンセット」の衆議院選挙になる。
一方、立憲民主党・野田代表は、石破総理の新方針の発表に先立ち、「裏金を受け取った議員」の選挙区では、野党候補の一本化を進めたいとして、3日、各党党首との会談を行っていた。党首会談を受けての反応は…。
「野党候補が1人しかいない選挙区などは協力を考える余地はあるが、維新が立てた選挙区は取り下げない」
「総選挙の争点は裏金問題だけではない。自民党政治の全体を変えていくために、小選挙区で最大限立候補する」
「裏金問題は終わっていないが、立憲側がやってきた候補者擁立のあり方に一定の障害が残っている」
中北浩爾氏(中央大学教授)は、以下のように述べた。
自民266人 公明11人 立憲208人 維新162人 共産216人 国民41人
れいわ19人 社民10人 参政85人 (各党ホームページ等より)
<出演者>
久江雅彦(共同通信社編集委員兼論説委員、杏林大学客員教授。永田町の情報源を駆使した取材・分析に定評。新著に『証言 小選挙区制は日本をどう変えたか』)
中北浩爾(政治学者。中央大学法学部教授。専門は政治学。自民党の歴史などに精通。著者に『自民党-「一強」の実像』『自公政権とは何なのか』など多数)
末延吉正(元テレビ朝日政治部長。ジャーナリスト。永田町や霞が関に独自の情報網を持つ。湾岸戦争などで各国を取材し、国際問題に精通)
「BS朝日 日曜スクープ」2024年10月6日放送分より」