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2024年12月12日 16:45

「年収の壁」引き上げで住民サービスに影響が!? 撤廃で減る「手取り」に対策案も

2024年12月12日 16:45

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社会保険への加入によって年収が減ることになる、いわゆる『年収106万円の壁』について、厚生労働省は12月10日、撤廃する案を審議会の部会に示し、了承されました。

■「年収の壁」引き上げ・撤廃で変わること

ある年収を超えると、税金や保険料の支払いが発生する『年収の壁』というものがいくつかあります。

まずは、所得税が発生する『103万円の壁』です。
この壁が引き上げられると、手取りが増えます。

厚生年金、健康保険の支払いが発生する『106万円の壁』です。
この壁が撤廃されると手取りは減りますが、将来もらえる年金は増えます。

国民年金、国民健康保険の支払いが発生する『130万円の壁』は、手取りが減り、将来もらえる年金は変わりません。

■「103万円の壁」引き上げで住民サービスに影響!?

年収の壁の1つ、『103万円の壁』についてです。

自民党・公明党・国民民主党の3党による協議では、所得税の課税対象となる『103万円の壁』の引き上げについて、具体的な金額の議論には至っていません。

年収の壁引き上げによる、税収への影響です

年収『103万円の壁』を国民民主党が主張する178万円に引き上げた場合、政府の試算では7〜8兆円の減収となり、このうち、地方税は約4兆円減収となります。

これは、地方税の歳入額全体の約9%です。

ANNの世論調査です。
『地方の税収が減って住民サービスが低下する可能性があることについて』という質問に、

「手取りを引き上げるために、サービス低下はやむをえない」が53%、

「サービスが低下するなら、手取りは引き上げなくてもよい」が29%、でした。

自治体では、どのような住民サービスへの影響が懸念されるのでしょうか。

神戸市の場合では、
●子ども医療費・難病などの医療費助成
●学校給食費負担の軽減
●保育料の軽減
●道路の修復事業、
など、
広島市では、
●認定こども園や民間・公立保育園の運営
●医療費の助成
●ごみ処理や消防・救急車、
などの住民サービスに影響が出る可能性があります。

減収の影響について、広島市の担当者は、
「あくまで一般財源が使われている代表例。仮に市の試算通り約300億円の減収となった場合、途方もない数字すぎて、具体的に検討しようがない状況。行政サービスを維持できるよう、国には財源確保について責任を持って考えてほしい」と話しています。
また、石川県の担当者は、減収となった場合の懸念について、
震災や豪雨被害の復旧・復興にも、一般財源は使われている。地方財政に対し配慮がなされなければ、極めて大きな影響が懸念される」といいます。

■子どもの年収の壁引き上げで親の負担はどれだけ増える?

『103万円の壁』自体の引き上げ額については議論が進まない中、一部、学生のアルバイト収入にかかわる年収の壁について合意したものがあります。

自民・公明・国民民主の3党による協議では、『特定扶養控除』の年収要件を103万円から引き上げることで合意しました。

特定扶養控除とは、19歳〜22歳の子どもを扶養する親の税負担を軽減する仕組みで、アルバイトなどで子どもの年収が103万円を超えると、控除がなくなり親の税金負担が増えます。

子どもの年収が103万円を超えた場合の親の負担です。

都内に住む家族、父親は会社員で年収500万円、妻と子どもを扶養、母親はパート勤務で年収100万円、子どもは20歳の大学生でアルバイトをしている、というケースです。

●大学生の子どものアルバイト代が年収102万円の場合、父親が支払う所得税と住民税の合計は約21万1000円です。

●アルバイト代が年収104万円の場合、扶養控除が無くなるため、父親が支払う所得税と住民税の合計は約29万7900円となり、約8万7000円、父親の負担が増えます。

■「106万円の壁」撤廃 手取り減対策 企業が保険料9割負担も?

年収『106万円の壁』についてです。

パートなどの短時間労働者の厚生年金の加入要件について、厚労省は、『年収106万円以上』『従業員51人以上』を撤廃し、『週20時間以上の労働』という条件のみに見直す方針です。

さらに、厚労省は、12月10日、年収156万円未満に限り、企業側が保険料の負担を増やせる特例案を示しました。

厚労省が示した特例案です。

●労働者と事業主の合意のもと、事業主の負担を増やすなど負担割合を変えられる
●労働者の負担をゼロにすることは認めない
●期間は限定する、
としています。

また、事業主の保険料負担軽減についても、今後検討するということです。

特例案のイメージです。

縦軸が手取り、横軸が年収です。
年収が増えるに従い、手取りは増えていきますが、106万円に達したところで、社会保険料の負担が発生し、手取り額ががくんと減ります。

その減った分を企業が負担し、手取り減による働き控えを防ぐ狙いがあります。

年収106万円の東京で働く、パート従業員の場合の保険料負担割合について、現在の保険料負担の割合、5対5の折半だと、従業員は、年15万7764円、事業主も同じく、年15万7764円です。

仮に、この保険料負担の割合が1対9になったとします。
従業員は、年3万1548円となり、折半の時に比べて、約12万6000円の減少となります。一方で、事業主は、年28万3980円となり、約12万6000円の増加となります。

■特例案「とても耐えられない」企業は苦悩「多少の負担は覚悟」

この特例案について、企業は苦悩しています。

日本商工会議所は、特例案について、
「賃上げの原資に苦しむ中小企業が多い中で、社会保険料の負担がさらに増えるのはとても耐えられない」と反対する意向を示しています。

実際の企業の声です。
東京・足立区にある、訪問看護ステーション です。

所属する訪問看護師は106人。
そのうち90人以上が『年収の壁』に直面しています。
年末になり、働き控えをする看護師が多数いるということです。

訪問看護ステーションブロッサムの西村直之代表は、特例案について、
9割負担となると、今後間違いなく経営に影響が出てくる。今の折半が一番だが、労働者との協議で決まるので、会社として、多少の負担はしないといけないのは覚悟している」としています。

(「羽鳥慎一モーニングショー」2024年12月11日放送分より)