いわゆる『就職氷河期世代』の支援をめぐる議論が、与野党で活発化しています。
就職氷河期世代の中には、「違う時期に生まれたかった」と悔やむ人もいます。
■就職氷河期世代「違う時期に生まれたかった」厳しすぎる現実
就職氷河期世代とは、バブル崩壊後の1993年から2004年の雇用環境が厳しい時期に就職活動をした世代です。
4月時点で、
●大卒であれば、大体43歳〜54歳、
●高卒であれば、大体39歳〜50歳の方々が該当します。
就職氷河期世代の中には、厳しい就職活動などによる影響で、今なお不安定な仕事や長い失業状態にあり、支援が必要な人が約80万人いるとみられています。
不遇だとされる就職氷河期世代ですが、どのような厳しい状況にあってきたのでしょうか。
【10代】
1980年代後半から90年代前半ですが、就職氷河期世代は、団塊ジュニア世代と重なっていて、人数が多いです。
結果、受験の競争率が高くなりました。
【20代】
1990年代、バブルが崩壊し、就職率が低くなり、非正規労働者が増えました。
【30代】
2000年代の不景気とデフレで、給料と株価は上がらず、その影響もあって、未婚率が高くなりました。
【40代】
2010年代です。
管理職になる世代ですが、就職氷河期世代の一つ上の世代はバブル世代で、会社の中でも人数が多く、社内の多くのポストを占めてしまいます。
結果、就職氷河期世代がつけるポストは、少なくなりました。
【50代以降】
両親の介護に携わる人も増えますが、少子高齢化の影響で、介護費が増えます。
1974年生まれ、2025年に51歳になる人は、全体の4割が年金が月10万円未満になるという試算です。
就職氷河期世代の50代、現在求職中の方です。
■貯蓄減少 賃上げ率低く… 割食う就職氷河期世代
就職氷河期世代の貯蓄です。
世帯主の年代別にみた1世帯あたりの貯蓄額のグラフですが、青が2018年、赤が2023年です。
20代、30代、40代、60代では、この5年で増えていますが、50代のみ貯蓄額が減少しています。
年代別の賃金の伸び率です。
コロナ前の2019年と2024年を比較すると、20代から50代に向って伸び率は低くなり、50歳〜54歳で最も伸び率が低くなっています。
「就職氷河期世代の賃金は、入社するときも、中高年になってからも、低く抑えられている状況。雇用形態が不安定かつ、収入が低い結果、資産形成で割を食っている」ということです。
■就職氷河期世代 約1700万人 参院選の大票田 各党 支援アピール
就職氷河期世代への支援を、各党がアピールしています。
人口ピラミッドを見ると、就職氷河期世代は約1700万人いて、これが7月参院選の大票田となっています。
「就職氷河期世代が、将来の社会保障財政のカギも握っている」ということです。
政府は、4月25日、『就職氷河期世代』への支援策を検討する会議を開きました。
就労処遇の改善、社会参加の拡充、高齢期を見据えた支援の3本の柱に沿って政策を進め、6月にまとめる『骨太方針』に反映させる考えを示しました。
立憲民主党の吉川議員は、
「与野党が対立する話ではない。連携しながらやっていくべき」とし、
『お金の安心』『住まいの安心』『老後の安心』を目指すということで、具体的には、
●正規雇用への転換を促進
●公営住宅を整備し住宅確保
などを提言しています。
国民民主党は、YouTubeに『就職氷河期チャンネル』を立ち上げ、対策を発信しています。
●将来の年金不安への対応や、
●民間企業や公務員への採用促進、などを提言しています。
■『年金底上げ案』見送り 就職氷河期世代 老後ピンチ!?
就職氷河期世代の年金問題で、街の声です。
「就職氷河期世代で採用がほとんどもらえず、やっと見つかったのがパートだった。今は正社員で働けているが、年金をどれくらいもらえるかが一番心配」
「就職も大変で、会社に入っても給料が低かったうえ、年金も少ないのは報われない」
「貯金はしているが、老後の資金としては全然足りない。定年後も働き続けないといけない」
基礎年金の給付水準は、今後30年で3割減る見込みです。
厚労省は、当初、就職氷河期世代などの低年金化を防ぐことを念頭に、基礎年金を底上げするため、厚生年金の積立金と国庫を活用する案を検討していました。
しかし、厚生年金の受給額が一時的に減少することへの批判を受けて、厚労省は、5月中旬に国会への提出を目指している『年金改革法案』から『基礎年金の底上げ案』を削除しました。
「基礎年金の底上げは、一番肝になる部分で、就職氷河期世代の老後を直撃するテーマ。きちんと案を出した上で、各党が責任を持って理解を求めていくべき」だとしています。
■親の介護や離職問題に直面 金銭的・時間的な負担増
就職氷河期世代は、親の介護世代でもあります。
番組に寄せられた声です。
「主人の給料も上がらず、子ども3人の学費に加えて、親の介護費負担…本当に大変です。ずっと大変な人生です」
「長年働いてきた職場を雇い止めになりました。介護や子育てしている人の雇用を守らなくて、この国は大丈夫なのか」
家族の介護をしている年代別の割合です。
50代に向かって割合は高くなり、
●50歳〜54歳では、女性10%、男性5%、
●55歳〜59歳では、女性11%、男性6%です。
介護・看護を理由に離職した年代別の割合は、40代、50代をあわせると約42%です。
「就職氷河期世代は、まさに親の介護問題に直面しており、金銭的・時間的な負担を強いられている。介護離職が増えれば、経済基盤を失うことになる」
■近づく定年“老後不安”有効な支援は?正社員で再雇用の企業も
老後に不安をかかえる就職氷河期世代への、有効な支援策はあるのでしょうか。
『不本意』非正規労働者、これは正規職員になれなかったために非正規を選んだ人ですが、約180万人います。
「まだバリバリ働けるのに、定年で一度辞めて、非正規で再雇用となった60代の人たちが多く含まれている」ということです。
アイリスオーヤマの取り組みです。
60歳で定年を迎えた人を再雇用する際、状況に応じ、正社員にしています。
「長年働いてくれた人の経験やスキルを生かすことと、定年後の社員の生活を安定させること」としています。
定年制について、アメリカやカナダ等では、原則ありません。
「定年制に縛られず、シニア世代の魅力的な職種の拡大や給与アップを図れれば、『就職氷河期世代』や人手不足の社会の一助につながるのでは」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年4月30日放送分より)