最新のANNの参議院選挙に関する調査で、有権者が重視する政策は、景気・物価高対策が最も高いことがわかりました。
参院選の争点のひとつ、物価高対策は『給付』か『減税』か、与野党で意見が割れています。
今後、日本の国債の価格が下がる可能性についても見ていきます。
■参院選 序盤情勢 自民・公明 過半数は微妙 野党に勢い
朝日新聞社が行った、参議院選挙の情勢調査とANNの取材で、与党は目標としている過半数の獲得が微妙な情勢になっています。
参院選序盤の情勢です。
全国の有権者を対象に7月3日と4日に、インターネットで行った情勢調査によりますと、自民党は改選前の52議席を下回る見通しです。
また公明党も改選前の14議席を下回る見通しで、与党での過半数獲得が微妙な情勢であることがわかりました。
野党です。
立憲民主党は、選挙区で議席を積み増し、改選前の22議席を上回りそうです。
躍進の可能性があるのが、国民民主党と参政党です。
国民民主党は改選前の4議席から大きく上回り、16議席に迫る勢いです。
参政党も改選前の1議席から大幅増の可能性があります。
投票態度を明らかにしていない人がいるため、情勢は今後変わる可能性があります。
■有権者「物価高対策」最重視 給付or減税 支持多いのは…
有権者が重視する政策です。
一番多かったのは「景気・物価高対策」で68%。
次に「年金・社会保障制度」で50%。
「教育・子育て支援」33%、
「外交・安全保障」31%、
「政治とカネ」18%と続きます。
各党が物価高対策として主に上げているのが、『給付』と『減税』。
減税が57%、
給付が19%、
と減税を支持する人が多くなっています。
各党の物価高対策を見ていきます。
現金給付を掲げている党は、自民党と公明党です。
国民一人あたり一律2万円給付、
こどもと住民税非課税世帯には4万円給付としています。
食料品の消費税0%を掲げている党です。
立憲民主党は最長で2年、
実現するまでは一律2万円の給付を掲げています。
日本維新の会は原則2年を主張。
社民党は「即時」、日本保守党は「酒類含め恒久的」に実施するとしています。
消費税を一律5%、廃止を掲げている党です。
国民民主党は「時限的に実施」。
共産党は「緊急的に実施」とし、将来的には廃止を目指すとしています。
消費税の廃止を掲げている党もあります。
れいわ新撰組は「即時」に廃止し、
国民一人当たり一律10万円の給付。
参政党は「段階的」に廃止としています。
■バラマキ批判の応酬 給付と減税 どっちが効果的?
党首討論でも、『バラマキ』批判の応酬になりました。
「現役世代を支えるという意味では、所得税の減税をやるべき。総理がやろうとしているのは、言葉は悪いが『バラマキ』」と発言。
「バラマキというのは全くポイントも置かず重点化しないもの。消費税の減税はある意味『バラマキ』に近いもの。(我々は)低所得者やこどもに重点化している」と反論しました。
「税収の上振れは、本来借金に充てるもの。防衛費の増額にも充てる話があったが、その配分をしっかりしてほしい。(給付の)財源がはっきりしないことこそ『バラマキ』では?」と問われると、
「税収の上振れ部分と税外収入を見込むと、給付金の額と大体同じになると思っている」と財源はあると主張しました。
給付と減税に必要となる財源と経済効果はどのくらいなのでしょうか。
給付に必要な財源総額は、約3兆3249億円。
経済効果は推計、8594億円です。
食料品の消費税を0%にした場合の財源総額は、約5兆円。
経済効果は推計、2兆6130億円。
一律5%の場合に必要な財源総額は、約12兆6000億円。
経済効果は推計6兆5580億円となっています。
「現金給付は大多数の国民が貯蓄に回すため、経済効果は薄い。消費税の減税についても、毎年発生する数兆円単位の財源をどう確保するのか。確保できなければ借金が積み重なり、結局日本の財政のさらなる悪化を招いてしまう」
■給付&減税のリスク 円安加速の恐れ 物価高に拍車も!?
原さんが考える給付と減税のリスクです。
財政の支出について、給付も減税も日本の財政にとってはマイナスです。
財源の悪化が懸念されると、円が売られて、円安のリスクが発生します。
「円安が進むと、燃料など輸入品の値段が上がり、物価高が進む」
■給付&減税の影響 国債下落の恐れ “最悪のシナリオ”とは
給付と減税の影響についてみていきます。
国債の人気が急降下していると言います。
「春の超長期の国債市場は、日本の国債の値段がリーマンショック並みに下がる大きな値動きだった」
国債とは、国が発行する債券のことです。
購入した人は、お金を一定期間、国に貸すことになります。
購入した人は資金を国に払い、
国は国債を購入した人に一定期間ごとに利子を払い、満期になったときには元本を渡します。
国債は市場で売買されます。
買い手が多い時には国債は値上がりし、
買い手が少ないと国債は値下がりします。
「ここ数カ月、日本の国債が大きく売られて、『買い』の手が止まった。『売り』だけが断続的に続き、どんどん国債の値が下がった」
「給付や減税など、財政にとってマイナスな情報が重なったため、国債の『売り』が続き、買い手が減った」としています。
「『財政の支出が増えて国債発行が増える』と市場が感じると、さらに売りが増えて国債の値が下がる。最後の最後には国の格付けが下がるのではと心配している」と話しています。
原さんが考える最悪のシナリオは、国債の格付けが引き下げられることです。
日本の国債の格付けの推移です。
格付け会社大手の『フィッチ』によるものです。
1999年には、一番上のAAA(トリプルエー)でしたが、
2001年には、上から4番目のAA−(ダブルエーマイナス)まで下がりました。
2015年には、上から6番目のA(シングルエー)に下がり、
その後格付けは変わっていません。
BBB−(トリプリビーマイナス)より下の格付けは、『投資不適格』と言われ、リスクが高いと評価されます。
国債の格付けが下がるとはどういうことなのでしょうか。
日本の借金返済能力に対する信用が低下していると判断されます。
そうなると国債が売れないので、新たに売られる国債は金利を上乗せして売ることになります。
国の利払い費が増加して、財政が悪化します。
企業や金融機関にも影響があります。
「日本の信用が下がると、日本の企業や金融機関も国際的な信用を失って、ドルなどの資金調達にコストがかかる」
■イギリス 過去に減税で混乱 日本で起きるとどうなる?
イギリスでは財源を示さず減税案を出したことで、2022年に『トラスショック』が起きました。
当時のトラス首相が、過去50年で最大規模の減税政策を発表しました。
所得税率の引き下げや、法人税引き上げの撤回、アルコール税の増税凍結などです。
何が起きたのでしょうか。
財源の裏付けがなく財政不安が広がり、イギリス国債の金利が急激に上がりました。
国債、通貨、株がすべて安くなる、トリプル安が発生しました。
結果として、市場の混乱を受けて、減税策は撤回されました。
トラス首相は就任から最短の45日目で辞任を表明することになりました。
「日本は当時のイギリスよりも財政が不健全な状況。きっかけ次第でトラスショックより大きい混乱が発生する可能性」があるとしています。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年7月7日放送分より)