石破茂総理大臣の進退に直結する自民党総裁選前倒しを巡って、麻生太郎最高顧問が前倒しを要求する意向を表明しました。“石破おろし”の動きが加速するなか、党内の亀裂が深まっています。
“総裁選前倒し論”さらに強まる動き
まずは、総裁選前倒しの賛否の現状をみていきます。
3日、麻生最高顧問は、麻生派の研修会で「私自身は総裁選挙の前倒しを要求する書面に署名し提出すると決めている」と宣言しました。
麻生派には43人の議員が所属。判断は個々の議員にゆだねるとしましたが、ある自民党幹部は「麻生さんが表明するなら流れが決まる」と語っています。
これまで政務3役の中から総裁選前倒しを求める声があがっていましたが、両院議員総会後も、武部新文部科学副大臣、穂坂泰デジタル副大臣、高村正大法務副大臣が総裁選前倒しを表明。ANNの調査によると、3日時点で石破内閣の副大臣・政務官20人近くが総裁選前倒しに賛成の意向を表明したということです。
さらに2日、小林鷹之元経済安保担当大臣をはじめとした中堅議員およそ25人が会合を開き、総裁選の前倒しを求める方針で一致したということです。
“石破おろし”が加速するなか、総裁選前倒しの意思確認の書類に関し、国会議員の提出は今月8日。賛成する人だけが提出するということで、国会議員と都道府県連代表の合わせて342人の過半数、172人の賛成で総裁選の前倒しが決定します。
こうしたなか、執行部が辞意表明で前倒し論がさらに強まる動きもでているようです。
2日、両院議員総会後、森山裕幹事長は「選挙結果の責任を取る」として石破総理に進退伺を預けたことを明かしました。また、党4役の鈴木俊一総務会長、小野寺五典政調会長、木原誠二選対委員長は、石破総理に辞任の意向を伝えました。朝日新聞によりますと、4役の一人によると石破総理は「あなたもか」と、うめいたと報じています。
今回の総裁選前倒しを要求した場合、議員の氏名が公表されることが決まっています。
執行部が前倒しの動きを抑えているとの指摘もありましたが、執行部の辞意表明で歯止めがきかなくなり、前倒しの動きが加速する可能性もあります。
一方で、石破総理は続投に意欲をみせているとの見方もあります。
ある政権幹部は「執行部の辞任ドミノか」と聞かれ、あくまで「進退伺ドミノであって、辞任ドミノではない」と指摘。あくまで人事を“預かる”だけで、しばらく執行部は辞めないとの見方を示しています。
2日、石破総理は「地位に恋々としない」とする一方で、「しかるべき時期に責任を判断する。まず国民がやってほしいことに全力を尽くす」と続投する意向を表明しました。
3日、石破総理と会った関係者は「総理は元気だった。辞める気は全くなさそうだ」と話していたということです。
参院選の敗因総括「政治とカネ」に言及
そんななか、「解党的出直し」で再生を目指す自民党。参院選の敗因や今後の改善策について発表しましたが、自民党は本当に変われるのでしょうか。
自民党は、参院選の総括をとりまとめました。その報告書によると、敗戦の主な要因として以下の3つを挙げています
・選挙中の不用意な発言
・「政治とカネ」を巡り信頼喪失
そして「政治とカネ」については「国民の多くは引き続き十分に納得していない現実があり、自民党に対する不信の底流だと厳しく自覚し猛省しなければならない」などとして、党を一から作り直す「解党的出直し」に取り組むとしました。
ただ裏金問題に関しては、国民の理解を得られていないのが現状です。
去年1月、岸田文雄政権の時に政治刷新本部は再発防止策として派閥の解消や政治資金パーティーの禁止などをとりまとめました。また去年6月、政治資金規正法が改正され、パーティー券の購入者の公開基準額を「20万円超」から「5万円超」に引き下げることなどが盛り込まれました。
去年12月、石破政権でも、使い道の報告義務のない、政党から政治家個人に支払われる政治資金、政策活動費が廃止に。一方で、企業・団体献金の規制強化に関しては協議中と課題も指摘されています。
石破政権下ではさらに改革が進むと思われましたが、政治とカネに関する報道がありました。
去年10月に行われた衆院選で投開票直前に、自民党は非公認とした候補者が代表の政党支部に活動費として2000万円を支給したとの報道が出ました。3月には石破総理が10万円相当分の商品券を配るなどの報道もありました。
そして政治資金収支報告書の不記載問題について、参院選総括委員会の報告書では「わが党に対する国民の信頼を損なう大きな要因になり続けている」とし、「『本来なら政治は国民生活を守るべきなのに、自民党は身内ばかりを守り、政治の役割を果たしていない』等の指摘にもつながった」と振り返っています。
しかし、報告書で示された今後の改善策は、政治とカネの問題に対し、具体的な記述として、「公職選挙法・政治資金規正法など法令遵守(じゅんしゅ)はもとより、緊張感をもって活動」との文言しかなく、政治とカネの問題は改善するのかと懸念する声もあります。
追加の経済対策 関係省庁に指示する方向で検討
こうしたなか、石破総理は週内に“ある動き”をみせるのではと言われています。
石破総理は、物価高やトランプ関税に対応するため追加の経済対策を策定するよう、今週中にも関係省庁に指示する方向で検討に入ったといいます。
ただ、政権の先行きが見通せないなかでの指示は、党内から反発を招く可能性があります。